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世界No.1の外科医、異世界転生!?  作者: 阿門 甲斐吽


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24/32

【第24話】揃えたはずの条件

l

 天明(てんめい)六年(ろくねん)、冬(ふゆ)。


 翌朝(よくあさ)。


 華岡家(はなおかけ)の研究室(けんきゅうしつ)。


 青洲(せいしゅう)は。


 昨日(きのう)作(つく)った帳面(ちょうめん)を開(ひら)いた。


 そこには。


 新吉(しんきち)の字(じ)で。


 これから試(ため)すことが書(か)かれていた。


 百二十九回目《ひゃくにじゅうきゅうかいめ》。


 同(おな)じところで採(と)った薬草(やくそう)を使(つか)う。


 同(おな)じように干(ほ)したものを使(つか)う。


 同(おな)じだけ量(はか)る。


 同(おな)じように煎(せん)じる。


 そして。


 薬(くすり)を与(あた)えたあと。


 どのように変(か)わるかを見(み)る。


「始(はじ)めるぞ」


「はい」


 新吉(しんきち)が。


 いつになく真剣(しんけん)な顔(かお)で答(こた)えた。


 机(つくえ)の上(うえ)には。


 昨日(きのう)選別(せんべつ)した薬草(やくそう)。


 秤(はかり)。


 器(うつわ)。


 水(みず)。


 そして。


 薬液(やくえき)を煎(せん)じるための道具(どうぐ)。


 青洲(せいしゅう)は。


 一(ひと)つずつ確認(かくにん)する。


「曼陀羅華(まんだらげ)」


「採(と)った場所(ばしょ)も、時期(じき)も分(わ)かっています。干(ほ)し方(かた)も書(か)いてあります」


「草烏頭(とりかぶと)」


「こっちも大丈夫(だいじょうぶ)です」


 白芷(びゃくし)。


 当帰(とうき)。


 川芎(せんきゅう)。


 そして。


 配合(はいごう)を検討(けんとう)している薬草(やくそう)。


 どこで採(と)ったのか。


 いつ採(と)ったのか。


 どのように保存(ほぞん)したのか。


 分(わ)からないものは使(つか)わない。


「量(はか)るぞ」


「はい」


 新吉(しんきち)が。


 慎重(しんちょう)に秤(はかり)を扱(あつか)う。


 一度(いちど)量(はか)る。


 皿(さら)から下(お)ろす。


 そして。


 もう一度(いちど)。


「昨日(きのう)より慎重(しんちょう)だな」


「先生(せんせい)が細(こま)かいからです」


「いいことだ」


「褒(ほ)められている気(き)がしません」


 青洲(せいしゅう)は。


 少(すこ)しだけ笑(わら)った。


 薬草(やくそう)を煎(せん)じる。


 水(みず)の量(りょう)。


 使(つか)う器(うつわ)。


 火加減(ひかげん)。


 煎(せん)じる時間(じかん)。


 できる限(かぎ)り。


 同(おな)じにする。


「先生(せんせい)」


「何(なん)だ?」


「ここまで揃(そろ)えたら、同(おな)じ薬(くすり)になるんですか?」


「ならない」


「ならないんですか?」


「ああ」


 青洲(せいしゅう)は。


 煎(せん)じられていく薬液(やくえき)を見(み)る。


「だが、違(ちが)う理由(りゆう)は減(へ)らせる」


「違(ちが)う理由(りゆう)?」


「薬草(やくそう)も違(ちが)う。量(りょう)も違(ちが)う。煎(せん)じ方(かた)も違(ちが)う。使(つか)う身体(からだ)も違(ちが)う。それで結果(けっか)まで違(ちが)ったら、何(なに)が原因(げんいん)か分(わ)からないだろ」


「ああ……」


「だから、一(ひと)つずつ揃(そろ)える」


 新吉(しんきち)が頷(うなず)く。


 未来(みらい)なら。


 標準化(ひょうじゅんか)。


 変数(へんすう)。


 再現性(さいげんせい)。


 そんな言葉(ことば)で説明(せつめい)できる。


 だが。


 そんな言葉(ことば)を教(おし)える必要(ひつよう)はない。


 考(かんが)え方(かた)が伝(つた)わればいい。


 やがて。


 薬液(やくえき)ができた。


 青洲(せいしゅう)は。


 それを一(ひと)つの器(うつわ)へまとめた。


 そこから。


 必要(ひつよう)な分(ぶん)だけ取(と)り分(わ)ける。


 これなら。


 少(すく)なくとも。


 今回(こんかい)使(つか)う薬液(やくえき)そのものは同(おな)じだ。


 次(つぎ)は。


 実験(じっけん)に使(つか)う小動物(しょうどうぶつ)を見(み)る。


 青洲(せいしゅう)が。


 先(さき)に観察(かんさつ)した。


 動(うご)き。


 餌(えさ)の食(た)べ方(かた)。


 呼吸(こきゅう)。


 身体(からだ)の大(おお)きさ。


 目(め)に見(み)える異常(いじょう)。


「新吉(しんきち)」


「はい」


「お前(まえ)も診(み)ろ」


 新吉(しんきち)が。


 小動物(しょうどうぶつ)を覗(のぞ)き込(こ)む。


「よく動(うご)いてます」


「それだけか?」


「餌(えさ)も食(た)べてます。息(いき)も苦(くる)しそうじゃありません」


「他(ほか)には?」


 新吉(しんきち)は。


 もう一度(いちど)見(み)る。


「毛並(けな)みも悪(わる)くないと思(おも)います。足(あし)もしっかりしています」


「よし。書(か)け」


 新吉(しんきち)が。


 帳面(ちょうめん)へ筆(ふで)を走(はし)らせる。


 百二十九回目《ひゃくにじゅうきゅうかいめ》。


 薬(くすり)を飲(の)ませる前(まえ)。


 よく動(うご)いている。


 餌(えさ)も食(た)べている。


 息(いき)に苦(くる)しそうな様子(ようす)はない。


 毛並(けな)みに目立(めだ)った乱(みだ)れなし。


 足取(あしど)りもしっかりしている。


 身体(からだ)の大(おお)きさは、これまで使(つか)ったものの中(なか)では中(なか)ほど。


 青洲(せいしゅう)は。


 その文字(もじ)を見(み)る。


 それでいい。


 新吉(しんきち)が。


 自分(じぶん)の目(め)で見(み)て。


 自分(じぶん)が分(わ)かる言葉(ことば)で書(か)いている。


 青洲(せいしゅう)は。


 まだ生命解析(せいめいかいせき)を使(つか)わない。


「始(はじ)める」


 決(き)めていた基準(きじゅん)に従(したが)い。


 薬液(やくえき)を与(あた)える。


 青洲(せいしゅう)は。


 小動物(しょうどうぶつ)から目(め)を離(はな)さない。


 新吉(しんきち)も。


 じっと見(み)ている。


 時間(じかん)が経(た)つ。


 やがて。


 動(うご)きが鈍(にぶ)くなった。


「先生(せんせい)」


「ああ」


「さっきより動(うご)かなくなってます」


「息(いき)は?」


「少(すこ)しゆっくりです。でも、苦(くる)しそうには見(み)えません」


「触(ふ)れた時(とき)は?」


 新吉(しんきち)が。


 これまでと同(おな)じ方法(ほうほう)で確(たし)かめる。


「反応(はんのう)します。でも、さっきより鈍(にぶ)いです」


「書(か)け」


 新吉(しんきち)が記(しる)す。


 薬(くすり)を飲(の)ませたあと。


 しばらくして動(うご)きが少(すく)なくなる。


 息(いき)は少(すこ)しゆっくりになった。


 触(ふ)れると動(うご)くが、飲(の)ませる前(まえ)より反応(はんのう)が鈍(にぶ)い。


 今(いま)のところ、ひどく苦(くる)しそうな様子(ようす)はない。


 青洲自身(せいしゅうじしん)も。


 同(おな)じことを確認(かくにん)する。


 そこで初(はじ)めて。


 意識(いしき)を集中(しゅうちゅう)した。


 視界(しかい)の端(はし)へ。


 淡(あわ)い青色(あおいろ)の文字(もじ)が浮(う)かぶ。


【生命解析(せいめいかいせき)】


【薬物反応(やくぶつはんのう):確認(かくにん)】


【鎮静傾向(ちんせいけいこう):あり】


【呼吸抑制(こきゅうよくせい):軽度(けいど)】


【循環変化(じゅんかんへんか):軽微(けいび)】


 違(ちが)いは。


 明確(めいかく)だった。


 新吉(しんきち)の帳面(ちょうめん)には。


 目(め)の前(まえ)で起(お)きたことが。


 人間(にんげん)の言葉(ことば)で書(か)かれている。


 システムは。


 同(おな)じ変化(へんか)を。


 解析結果(かいせきけっか)として示(しめ)している。


 青洲(せいしゅう)は。


 表示(ひょうじ)を消(け)した。


「続(つづ)ける」


 さらに時間(じかん)が経(た)つ。


 やがて。


 小動物(しょうどうぶつ)が動(うご)き始(はじ)めた。


 触(ふ)れた時(とき)の反応(はんのう)も戻(もど)る。


 呼吸(こきゅう)も。


 最初(さいしょ)に近(ちか)づいていく。


「先生(せんせい)、戻(もど)ってきてます」


「ああ。まだ待(ま)て」


 十分(じゅうぶん)に時間(じかん)を置(お)く。


 餌(えさ)にも。


 再(ふたた)び反応(はんのう)した。


「書(か)いていいですか?」


「自分(じぶん)で見(み)たことを書(か)け」


 新吉(しんきち)が頷(うなず)く。


 しばらく眠(ねむ)ったように動(うご)かなくなった。


 その間(あいだ)も息(いき)は続(つづ)いていた。


 時間(じかん)が経(た)つと、少(すこ)しずつ身体(からだ)を動(うご)かした。


 触(ふ)れた時(とき)の反応(はんのう)も戻(もど)った。


 餌(えさ)にも再(ふたた)び反応(はんのう)した。


「うまくいったんですか?」


「一回(いっかい)はな」


「一回(いっかい)?」


「同(おな)じことを、もう一度(いちど)やる」


 新吉(しんきち)が。


 昨日(きのう)。


 青洲(せいしゅう)が書(か)いた言葉(ことば)を見(み)る。


 一度(いちど)成功(せいこう)することと。


 同(おな)じ成功(せいこう)を繰(く)り返(かえ)せることは違(ちが)う。


「もう一匹(いっぴき)ですか?」


「ああ」


 百三十回目《ひゃくさんじゅっかいめ》。


 同(おな)じ調製液(ちょうせいえき)。


 同(おな)じ基準(きじゅん)で与(あた)える。


 そして。


 できるだけ。


 一匹目(いっぴきめ)と近(ちか)い身体(からだ)のものを選(えら)ぶ。


 新吉(しんきち)が。


 先(さき)ほどと同(おな)じ順番(じゅんばん)で診(み)た。


「よく動(うご)いてます。餌(えさ)も食(た)べてる。息(いき)も苦(くる)しそうじゃない。毛並(けな)みも悪(わる)くありません」


「大(おお)きさは?」


「さっきのと、ほとんど同(おな)じに見(み)えます」


「書(か)け」


 新吉(しんきち)は。


 自分(じぶん)の言葉(ことば)で。


 そのまま帳面(ちょうめん)へ残(のこ)した。


「始(はじ)める」


 薬液(やくえき)を与(あた)える。


 しばらくすると。


 一匹目(いっぴきめ)と同(おな)じように。


 動(うご)きが減(へ)った。


「先生(せんせい)。眠(ねむ)くなってきたみたいです」


「ああ」


 ここまでは。


 似(に)ている。


 だが。


 青洲(せいしゅう)の眉(まゆ)が動(うご)いた。


「新吉(しんきち)」


「はい」


「息(いき)を見(み)ろ」


 新吉(しんきち)が。


 身体(からだ)の動(うご)きを見(み)つめる。


「……遅(おそ)い」


「さっきと比(くら)べろ」


 新吉(しんきち)が。


 帳面(ちょうめん)を見(み)る。


 もう一度(いちど)。


 小動物(しょうどうぶつ)を見(み)る。


「違(ちが)います。さっきのより、息(いき)の間(あいだ)が長(なが)いです」


「触(ふ)れた時(とき)は?」


 確(たし)かめる。


 新吉(しんきち)の表情(ひょうじょう)が変(か)わった。


「反応(はんのう)も弱(よわ)いです」


「ここまでだ」


 青洲(せいしゅう)の声(こえ)が低(ひく)くなる。


 実験(じっけん)を進(すす)めることより。


 生体(せいたい)を守(まも)る。


 身体(からだ)を冷(ひ)やさないようにする。


 呼吸(こきゅう)を見(み)る。


 刺激(しげき)への反応(はんのう)を確認(かくにん)する。


 青洲自身(せいしゅうじしん)が。


 状態(じょうたい)を判断(はんだん)する。


 その後(あと)で。


 生命解析(せいめいかいせき)を開(ひら)いた。


【生命解析(せいめいかいせき)】


【鎮静(ちんせい):深(しん)】


【呼吸抑制(こきゅうよくせい):進行(しんこう)】


【循環負荷(じゅんかんふか):上昇(じょうしょう)】


【危険度(きけんど):上昇(じょうしょう)】


 青洲(せいしゅう)は。


 すぐに表示(ひょうじ)を消(け)した。


「新吉(しんきち)。今(いま)見(み)えていることを書(か)け」


「はい」


 新吉(しんきち)の筆(ふで)が走(はし)る。


 百三十回目《ひゃくさんじゅっかいめ》。


 薬(くすり)を飲(の)ませたあと、動(うご)かなくなる。


 百二十九回目《ひゃくにじゅうきゅうかいめ》よりも深(ふか)く眠(ねむ)っているように見(み)える。


 息(いき)の間(あいだ)が長(なが)くなった。


 触(ふ)れても反応(はんのう)がかなり弱(よわ)い。


 これ以上(いじょう)は危(あぶ)ないと先生(せんせい)が判断(はんだん)し、ここで止(と)める。


 その文章(ぶんしょう)を。


 青洲(せいしゅう)は横(よこ)から見(み)た。


「それでいい」


 新吉(しんきち)は。


 未来の医学用語など知(し)らない。


 だから。


 新吉(しんきち)の帳面(ちょうめん)に。


 鎮静(ちんせい)。


 呼吸抑制(こきゅうよくせい)。


 循環負荷(じゅんかんふか)。


 危険度(きけんど)。


 そんな文字(もじ)が。


 並(なら)ぶはずがない。


 見(み)たもの。


 触(ふ)れたもの。


 感(かん)じた違(ちが)い。


 そして。


 青洲(せいしゅう)が何(なに)を判断(はんだん)したのか。


 それを。


 新吉自身(しんきちじしん)の言葉(ことば)で残(のこ)す。


 時間(じかん)が経(た)つ。


 やがて。


 小(ちい)さな身体(からだ)が動(うご)いた。


「先生(せんせい)!」


「まだ見(み)る」


 呼吸(こきゅう)が。


 少(すこ)しずつ戻(もど)る。


 触(ふ)れた時(とき)の反応(はんのう)も。


 戻(もど)ってきた。


 さらに待(ま)つ。


 青洲(せいしゅう)は。


 ようやく頷(うなず)いた。


「もう大丈夫(だいじょうぶ)そうですか?」


「今(いま)のところはな」


 新吉(しんきち)が。


 最後(さいご)に書(か)き加(くわ)える。


 しばらくして息(いき)の間(あいだ)が短(みじか)くなった。


 身体(からだ)を動(うご)かすようになった。


 触(ふ)れた時(とき)の反応(はんのう)も戻(もど)った。


 先生(せんせい)と確認(かくにん)し、そのまま様子(ようす)を見(み)る。


 新吉(しんきち)は。


 二(ふた)つの記録(きろく)を並(なら)べた。


「同(おな)じ薬(くすり)ですよね?」


「ああ」


「同(おな)じ鍋(なべ)で作(つく)った」


「ああ」


「同(おな)じくらい飲(の)ませた」


「そうだ」


「身体(からだ)の大(おお)きさも、ほとんど同(おな)じだった」


「俺(おれ)たちに分(わ)かる範囲(はんい)ではな」


 新吉(しんきち)が。


 帳面(ちょうめん)を見(み)る。


「なのに……こっちは危(あぶ)なかった」


「ああ」


「どうしてです?」


「お前(まえ)はどう思(おも)う?」


 新吉(しんきち)は。


 しばらく考(かんが)えた。


「見(み)た目(め)は同(おな)じでも、身体(からだ)の中(なか)は違(ちが)う?」


「そうだ」


 青洲(せいしゅう)は。


 二匹(にひき)を見(み)る。


 個体差(こたいさ)があることなど。


 蒼真(そうま)は知(し)っている。


 体重(たいじゅう)。


 循環(じゅんかん)。


 呼吸機能(こきゅうきのう)。


 肝臓(かんぞう)。


 腎臓(じんぞう)。


 代謝(たいしゃ)。


 薬物感受性(やくぶつかんじゅせい)。


 同(おな)じ薬(くすり)を。


 同(おな)じ量(りょう)使(つか)っても。


 反応(はんのう)は変(か)わる。


 問題(もんだい)は。


 それを発見(はっけん)することではない。


「身体(からだ)に違(ちが)いがあるのは分(わ)かっている」


 青洲(せいしゅう)は言(い)った。


「問題(もんだい)は、薬(くすり)を使(つか)う前(まえ)に、その違(ちが)いをどう見抜(みぬ)くかだ」


「使(つか)う前(まえ)に?」


「ああ」


「そんなことが分(わ)かるんですか?」


「全部(ぜんぶ)は無理(むり)だ」


 少(すく)なくとも。


 今(いま)の時代(じだい)では。


 見(み)えないものが。


 あまりにも多(おお)い。


「だが、何(なに)も分(わ)からないとは限(かぎ)らない」


 脈(みゃく)。


 呼吸(こきゅう)。


 食欲(しょくよく)。


 動(うご)き。


 体格(たいかく)。


 身体(からだ)の弱(よわ)り。


 目(め)で見(み)えるもの。


 指(ゆび)で触(ふ)れられるもの。


 患者自身(かんじゃじしん)から聞(き)けるもの。


 そこから。


 危険(きけん)の兆(きざ)しを。


 どこまで拾(ひろ)えるのか。


 その時(とき)。


 青洲(せいしゅう)の視界(しかい)に。


 青(あお)い文字(もじ)が浮(う)かんだ。


【完全記録(かんぜんきろく)】


【実験番号(じっけんばんごう)129・130を比較(ひかく)】


【薬液条件(やくえきじょうけん):一致(いっち)】


【投与基準(とうよきじゅん):一致(いっち)】


【薬物反応(やくぶつはんのう):相違(そうい)】


【原因特定(げんいんとくてい):情報不足(じょうほうぶそく)】


 青洲(せいしゅう)は。


 小(ちい)さく頷(うなず)いた。


「それでいい」


 答(こた)えを。


 システムに求(もと)めるつもりはない。


 続(つづ)いて。


 表示(ひょうじ)が変(か)わる。


【個体差解析(こたいさかいせき):研究進行(けんきゅうしんこう)を確認(かくにん)】


【安全域個別推定《あんぜんいきこべつすいてい》:進行(しんこう)】


 それだけだった。


 青洲(せいしゅう)は。


 表示(ひょうじ)を消(け)す。


 そして。


 新(あたら)しい頁(ページ)を開(ひら)いた。


 百三十一回目《ひゃくさんじゅういっかいめ》。


 まだ。


 何(なに)も試(ため)していない。


 青洲(せいしゅう)は。


 そこへ。


 一文(いちぶん)だけ書(か)いた。


 薬(くすり)を飲(の)ませる前(まえ)に、危(あぶ)ない身体(からだ)を見分(みわ)ける方法(ほうほう)を探(さが)す。


 新吉(しんきち)が。


 横(よこ)から読(よ)む。


「次(つぎ)は、薬(くすり)じゃないんですね」


「薬(くすり)だ」


「え?」


「薬(くすり)を安全(あんぜん)に使(つか)うために、身体(からだ)を診(み)る」


 青洲(せいしゅう)は。


 二(ふた)つの記録(きろく)を閉(と)じた。


 同(おな)じ薬(くすり)でも。


 同(おな)じ結果(けっか)にはならない。


 ならば。


 次(つぎ)に知(し)らなければならないのは。


 薬(くすり)の中身(なかみ)ではない。


 その薬(くすり)を受(う)ける。


 一人一人(ひとりひとり)の身体(からだ)だった。



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