忘却の魔女ロッテ②
ある村に、一人の若者がいました。
山の奥深くにあるその村では、昔からのたくさんの決まりごとがあり、それをずっと守って暮らしていました。村の人々は誰もが知り合いで、朝にどこかの家で起きた夫婦げんかを、昼には村の誰もが知っている。そんな、どこにでもある田舎の村です。
けれど彼は、そんな村が古くさくて、息苦しくて、ずっときらいでした。
そんなある日、若者はついに誰にも告げず村を出ました。
山道を抜け、遠く離れた別の町へ辿り着くと、そこはたくさんの人でにぎわい、たくさんのものがあり、なにもかもがすばらしく思えました。
それに比べて、あの村ときたら!
若者はそこで暮らすことに決め、そのまま何年かの月日が流れました。
ところがある日、彼のもとに村にいる家族から手紙が届きました。
楽しく暮らしていた彼は、村を思い出させる手紙をいまいましく思い、つい口にしてしまったのです。
「——あんな村、なくなってしまえばいいのに」
そう願って目を開けると、世界から一切の色が消え失せ、灰色になっていました。
✦ ✦ ✦
気づけば、鼻先が触れそうなほどの近さに、血管も見えないほど白い顔がありました。
瞬き一つせず、若者の瞳の奥をじっと覗き込んでいいるのです。髪の毛先は色が透けて、モノクロームの景色に溶け込んでいました。こんなに近くにいるのに、息をしているようすがありません。
若者は、村のたくさんの決まりごとのなかで魔女の話を聞いたことがあったので、これが魔女なのだと、すぐにわかりました。
「かわいそうに。願いを叶えてあげる」
魔女はそう囁くと、スケッチブックを広げました。
すると若者の体からふわりと色が浮き出し、どこか懐かしさを感じさせるたくさんの色が、そこに吸い込まれて行くではありませんか。
魔女は若者から浮いた色をすべてスケッチブックに収めると、パタンとそれを閉じ、微笑んだようでした。
「これであなたを苦しめるものはもうないわ」
魔女のその声とともに、世界に色が戻りましたが、その時にはもう、魔女の姿はありませんでした。
✦ ✦ ✦
若者は慌てて、村へ戻りました。
村があった場所にたどり着くと、そこにはもう、暮らした家も、人も、畑もありませんでした。
かつて村だった場所の隅に、石垣の一部がぽつりと残っていましたが、描き残しのように、輪郭がかすれていました。
若者は、自分の家があったあたりに座り込み、しばらく動けませんでした。
なにもなくなった地面には、彼の影だけが落ちていました。
この話の前に、序章を投稿しています。もし




