双子、直情型につき
「恋人に裏切られたから自殺したのか?」
若干意識が余所へ散歩に出ている柚希に変わって、翔が訊ねた。
菅原はきょとんと目を丸くし、次いで拗ねたように唇を尖らせた。
「するわけないじゃない、そんなこと。あんな男のことで死んでやるもんですか」
「え?」
でも実際、彼女は死んでいる。
柚希は気持ちを目の前の会話に引き戻した。
「あの、失礼ですけどなんで亡くなったんですか?」
菅原は唇を尖らせたまま、眉をきりりとつり上げた。
「あんな男こっちから捨ててやるつもりだったけど、そのまま泣き寝入りするのも癪だったから、ユズの女たちや職場に全部暴露してやろうと思ったの。だけど駅に向かう途中で計画練りながら歩いていたら、この辺りで酔っ払い運転していた車に轢かれたのよ」
そう言って菅原は悔しげに顔を歪める。
だがそれは幽霊独特の危ない怨嗟を含んだものではなく、恋人の裏切りに腸が煮えくりかえっている普通の女性の表情だ。
もちろん、それはそれで恐ろしかったが。
「死んでそれが出来なくなったから、せめて少しでも祟ってやろうと思ったんだけど」
「けど?」
「あの男! 超鈍いのよっ。枕元に立っても、肩にのし掛かっても全然気づかない!」
悔しいと菅原が叫ぶ。
「その男性が鈍いというのもありますが、呪うには彼女の気質も資質も足りないようですね」
小声で言う昴に柚希も頷いた。
人を呪うにはもの凄いエネルギーを使う。
例えば翔や桃華くらい気力や生気の強い者か、もっと強烈な妄執や怨みがなくてはいけない。それこそ、死んでも呪ってやるという思いで命を絶つくらいの。
その点で、菅原はもともとの気質がさっぱりしているようだ。
雨というイレギュラーがなければ、そのうち諦めて自分から成仏していたかもしれない。
柚希は怒りに打ち震える菅原をどうにか説得しようと口を開いた。
「そんな男のために幽霊でいるなんて勿体ないですよ。きっと次の人生で素敵な出会いが……」
「……許せない」
足下から低い声が上がって、柚希はぎょっとした。
柚希のすぐ傍で、桃華が白い握り拳を握っている。
「も、桃華?」
「そんな最低男、許しちゃおけないわ! 絶対思い知らせてやりましょう!」
双子の姉妹なだけあって、桃華の性格は柚希と同じ直情型だった。




