孤独少年、孤独を止める
「わたしだけ生きてるの、辛い」
呟くと同時に膝の力が抜けて、柚希はその場にへたり込んだ。
中央分離帯に植えられた芝が、膝をちくちくと刺激する。
幽霊の邪気が目の前に迫っていた。
手を伸ばすことも逃げる力もなく、柚希は呆然と黒い固まりを見つめる。
翔が一歩踏み出した。
駆け出そうとして、何かを思いとどまったように踏み出した足にもう片方の足を揃える。
一歩分、近づいた距離。
翔が深い息を吐き出す。
「あんたの苦しみを、俺は分かってやることは出来ない。取り除いてなんて、どうやったってしてやれないだろう。それでも俺は、あんたがいいよ」
少し困ったような、苦いものを呑み込むような苦笑。それでも彼の瞳も声もとても穏やかだった。
「俺はあんたがいい。柚希が好きだ」
柚希は目を瞠った。
見開いた瞳から熱い雫が零れて止まらない。
雨と混じらない熱は、冷えて白くなった彼女の頬を優しく撫でた。
「イノシシみたいに真っ直ぐで、こっちの迷惑なんてお構いなしで、良く笑って怒って拗ねて、俺なんか置き去りにして目まぐるしく変わる表情に救われてたんだ。勝手に壁をぶち壊していったくせに、あとは知らないなんて冗談じゃねえよ」
呆れたように翔が言う。
まだ距離があるのに、彼が唾を飲み込んだのが聞こえた気がした。
焦るのを耐えるように、翔は柚希に語りかける。
「あんたが罪悪感で自分を肯定できないなら、俺が何度でも言ってやる。俺は、柚希がいい。あんたに傍にいて欲しい。あんたに『傍にいたい』と思って欲しい」
「高坂、くん」
「柚希が好きだ」




