そして少女が見つけたものは
***
酷い雨だ。
私も彼女もあまり雨が好きではなくなったのだろう。酷く胸が騒ぐ。
決して諦めきれないものがある。死んだって絶対に諦められない。
だって彼女にとって私が唯一だったように、彼女は私にとっての唯一なのだ。
***
帰るぞという翔に、柚希は頑として首を振った。
どうしてもいま、家に帰りたくない。桃華のいない部屋の中にいたら発狂してしまいそうだ。
駄々を捏ねる柚希に翔は強引なことをせず、ならばと昴の事務所に行くことを提案してきた。
働かない頭で少し考えて、緩慢に頷く。
この場所から事務所まで歩いて十分ほどだ。
長時間雨に濡れた体がさすがに寒さを訴え始めて、柚希の凍り付いた思考を逆に溶かしていく。
前を歩く翔にばれないよう両腕を擦る。
翔も柚希に負けず劣らずのずぶ濡れ具合だ。傘も差していない。
(そういえば、どうして高坂くんがいるんだろう)
翔とは学校で別れたはずだ。
知穂の乗るバスから降りて傘に当たる雨音を聞いていたら、いてもたってもいられなくなって、傘を放り出して走り出した。
知穂が言っていた交差点の近くまできたら、急ブレーキの音と接触音が聞こえてきて、事故が起きていた。
まさかのタイミングで起こった事故にある可能性を感じて、柚希は物陰に隠れて体を抜け出したのだ。
そして見つけた。交差点の上に漂う幽霊の姿を。
あまりにも多くの邪気を纏って明確な姿形は分からなかったが、幽霊は柚希の声に応え柚希の名を呼んだ。
(桃華、桃華だ。あそこにいたんだ)
顔面に当たる雨のせいで、お互い喋る気も起きず黙々と歩く。
昴の事務所に着いて、柚希はようやく顔を上げた。
そして一番に目に入ってきたものに目を瞠る。
「っ、なんでっ」
声が悲鳴混じりになる。
事務所のソファーの上には、桃華の白うさぎがくたりと首を傾けて座っていた。




