孤独少年、寂しさを知る
三日立て続けに降った雨は、今夜で一度終わるらしいと予報が出ている。
最後のあがきというように強さを増す雨を、翔は窓際にあるベッドに腰掛けてぼんやりと眺めていた。
夕陽を雨雲で遮断しながら、真っ暗にはなり得ない曖昧な薄闇。
いつもよりは少々フライングした街灯が、アスファルトに跳ねる雨粒を照らしている。
雨の日は基本的に死神の仕事は休みらしく、この三日間、翔は授業が終われば図書室に寄る生活に戻っている。
雨は比較的好きだ。
雨の音が人のざわめきに似て、言葉を発さない翔を許容する。
この音に包まれては誰もが孤独なのだと知り、同時に人との距離感を曖昧にする。
独りでいることを許される。独りは寂しいのだと知らしめる静寂を打ち破ってくれる。
――そう思っていた。柚希と会うまでは。
いつだったか、紫陽花の下で普通の友だちを作るのだと諭されたことがある。
その頃の唯一の友人の言葉だからと頑張ってみたが、すでに他人との間に分厚い壁が出来上がっていた翔には、それを打ち破る力はなく、結局友だちはひとりも居なくなった。
それから何年もたったいまになって、その壁を外から遠慮なく叩いてくる相手がいる。
雨の音では孤独を誤魔化せないと、だから出てこいと。
翔にそう教える。
「えっと、こんばんは?」
不意に窓の外から声をかけられて、翔は息をのんだ。
透明な壁を隔てて、雨の降りしきる中に柚希の姿を見つける。
制服を着て、所在なさげに一階の屋根に立つ彼女に翔は思わず窓を開けた。
雨の匂いが鼻腔を擽る。
湿気を帯びた冷たい夜気が翔の額を打つ。
翔は反射で窓を閉めた。
「え、どうして? どうして閉めるの。あれ?」
混乱している風の柚希の声を聞きながら、翔は片手で頭を抱えた。
壁が叩かれる。罅が入る。雨がそれを修復しようとしている気がしていた。
前と同じ生活をしていると、たったの三日間でもそれが変わらぬ日常なのではないかと思わせる。
柚希とともに走り回って幽霊と対峙していたのが夢だったのではないかと思った。
それが恐かった。
柚希の存在は翔に孤独を思い出させる。凍らせたはずの寂しさを芽吹かせるのだ。




