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うさぎ、幽霊をボコる


 

 喰われそうだった恐怖に腰を抜かしながらも柚希が「話し合いを」と告げると、白うさぎはじっと彼女を見下ろしてきた。

 ぬいぐるみであるからか、この姿で話しかけられたことはない。

 先ほど吹き飛ばされた男子生徒が後方で起き上がる。

 その気配に振り返った白うさぎは、再度男子幽霊に跳びかかってぼこぼこにし始めた。

 呆然とその様子を見ていた柚希は、隣に翔が立った気配に顔を上げた。

 翔は腰を抜かしている柚希に手を貸そうとして触れられないことに気づいたのか、差し出しかけた手を自分の首の後ろに回して溜め息をついた。


「おい、大丈夫か」

「な、なんとか? それよりも、ありがとね。助けようとしてくれて」

「……別に。結局俺はなにもしてないし」

「そんなことないよ。傍にいてくれるだけでも有り難いもん」


 幽霊と対面するとき、客観的に自分を見ていてくれる人がいるというのは嬉しいことだ。

 幽霊と話していると、本当に自分が生きているのか分からなくなることがある。

 だから確実に生きている翔が話しかけてくれると、自分という存在が確かにあることを感じられるのだ。

 どうにか柚希が自力で立ち上がったときには、白うさぎは男子生徒をふん縛って床に這いつくばらせていた。

 柚希は白うさぎを背中に乗せて転がっている幽霊の正面に正座する。


「とにかく、ストーカー止めるか成仏してください。え、楽しそうに学校生活しているのが許せない? そんなこと言われても。ああ、学校内のいじめを苦にして自殺された方なんですか」

「んなの、苛めた奴に取り憑きに行けよ」

「駄目、高坂くん。そんなこと言っちゃ駄目。……って、あなたも取り憑きに行っちゃ駄目だから!」


 面倒くさそうに言う翔に、柚希はぶんぶんと首を振った。

 動き出そうとしていた幽霊には白うさぎが強烈な踵落としを決める。


「自分の味わったのと同じ苦しみを味合わせたい? 駄目駄目、そんなことしても相手が鈍かったら、取り憑かれていることにも気づいてもらえないかもしれないんだよ。そんなの草臥れ儲けでしょ。やるだけ損だよ損。それよりも楽しい次の人生に行こうよ。成仏しないと次に行けないんだよ。そもそもあなた、そろそろ悪霊認定されて討伐対象にされちゃうんだからね。そんなことになったら……――」


 懇々と柚希に説得され、翔に呆れられ、うさぎに半ば脅されるようにして幽霊男子が成仏したのは、それから三十分は経ってからだった。

 




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