イノシシ娘、ストーキングされる
翌日からは知穂の登校を校門前で待ち伏せ、不思議がる彼女に引っ付いて登校する日々だ。
そのおかげか、頭痛や吐き気に襲われることはなくなった。
だが、三日ほど過ぎた辺りで学校生活に違和感を覚えるようになった。
どこで何をしていても視線を感じるのだ。
しかもかなりの圧迫感とねちっこさと怨みの籠もった視線で、息苦しさを覚えるほどである。
「あの死神には相談してねえの」
「昴さん? 幽霊にストーキングされてるって? まだしてないけど」
「馬鹿か。しろよ」
翔から昼休みにベランダへ呼び出しを喰らった柚希は、飲み終わった苺ミルクのパックをベコベコいわせて唸り声を上げた。
「だって、言われること分かってるもん。「相変わらず阿呆の迂闊者ですね、自分でまいた種は自分で回収してください」ってさ」
それはもう、いい笑顔でそう言うのだ。
白磁の美貌を思い浮かべて脱力しそうになった柚希は、思い切って気分を切り替えた。
「よし、決めた!」
勢いよく言って顔を上げる。
訝しげに見てくる翔に、堂々と宣言した。
「直談判。ストーカー止めるか、成仏してくださいってお願いしに来る。夜に」
「なんで夜」
「瘴気が出る夕方よりマシだから。放課後はバイトだし」
そうと決めれば、いまから英気を養わなければ。知穂を促して購買にパンでも買いに行こう。
教室に戻ろうとした柚希は、翔に名前を呼ばれて肩越しに振り返った。
「一応、死神に言って行けよ」
「えー」
「えー、じゃない。うさぎの助けが必要になるかもしれないだろ」
「汚したくないんだけどなぁ」
躊躇いながらも翔に鋭く睨まれ、柚希は渋々頷いた。




