イノシシ娘、再び少年を連れ出す
終礼とともに立ち上がった柚希は、翔の席に駆けよると両手で机を叩いた。
さすがに三度目なので手加減を……するのは忘れてしまった。
「……痛い」
「なにやってんだ、お前」
目の前に立って早々勝手に涙目になる柚希に、翔が顔を顰めた。
情けなさに項垂れていた柚希は、鞄を持って立ち上がろうとした翔の腕を慌てて掴む。
「高坂くん、ちょっと」
「嫌だ」
「まだなにも言ってないからっ」
ぎゃあと騒いだ柚希に、彼は嫌そうな目を向けてくる。
「付き合わない、手伝わない、関わらない」
「否定三連発! そう言わずちょっとだけ。あと一回だけ話を聞いて」
両手を合わせて拝む。じいっと目を見つめて拝む。
十秒くらい見つめていると、翔がふうっと息を吐いた。
目元の険が少しだけ取れる。
(二勝目!)
昨日に引き続き勝ちをもぎ取った柚希は、嬉々として翔の腕を取って学校を出た。
そのまま昴死神事務所に引っ張っていくと、頬杖をついて雑誌を読む昴の前に翔を突き出す。
「昴さん! 高坂くんをどうにかしてください」
「は?」
「はあ」
開口一番そう叫ぶと、二人ともから気のない声が返された。
昴は翔をちらりと一瞥してから、柚希に机の上にあった一枚の紙を差し出してくる。
「これ、今日の柚希くんの攻略リストですから」
「うわ、多っ」
「どうやら昨夜車でお墓に突っ込んだ馬鹿者がいたようでしてね、静かに眠ってらした仏さんまで叩き起こしてしまったようですよ」
「最悪!」
力一杯叫んだ柚希は、そうじゃないと首を振った。
「高坂くんのことも、昴さんならどうにか出来るでしょう」
「君はもう少し具体的にかつ端的に説明できるようにしましょう。はい、どうぞ」
「えっと、高坂くんの幽霊とかが見えちゃう目を、わたしの抜け出し体質をどうにかしたみたいに、昴さんなら見えなくすることも出来るんじゃないでしょうか」
「長い」
「これでも駄目!?」
それどころか、興味がないとばかりに雑誌に目を戻されてしまった。




