イノシシ娘の親友、守護霊を連れ歩く
「取り憑かれる!」
「少し落ち着け。もうすぐ……」
あわあわする柚希に吊られることもなく翔が目をやる先で、またも新しい登校者が教室に入ってくる。
「あっ!」
見覚えのありすぎるクラスメイトの背後にあるものに、柚希は驚きの声を上げた。
「知穂っ? なに背後に引っ付けてるの、あの子! 神々しすぎるっ」
柚希の親友である笹間知穂が教室に入ってきた瞬間、教室内が光に包まれた。
目が眩むのをなんとか耐えて目を懲らすと、知穂の後ろに後光を背負った美々しい女性の姿がある。
天女のような容姿に煌びやかな衣装。塵屑のごとき邪気など視線をやるまでもなく浄化してしまう神聖さ。
男子生徒に取り憑こうとしていた霊の黒い影が、引きはがされるように散って少し離れたところで形を取り戻した。
蹲って恨めしげな目を知穂の背後に向けている。
「も、もしや守護霊というやつでしょうか?」
「だろうな」
柚希の驚愕に翔も頷く。
あっさりした返答から察するに、もしかしたらこれは毎朝の光景なのかもしれない。
あれが守護霊だというのなら、なんと強力なものを持っている親友だろう。
肉体に入っているときは見えないとはいえ、よく毎日一緒に居てなにも感じなかったものだと自分の鈍さに嘆息してしまいそうだ。
その守護霊が、ふと顔を上げたことで、柚希とばちりと目が合ってしまった。
ふわりと微笑した守護霊が手を振ってくるものだから、柚希も思わず振り返す。
「あんた、意外と図太いな」
呆れたように言う翔に、柚希ははっと顔を強張らせた。
幽霊とは目を合わせないのが鉄則だ。反応を返すなんて論外。これは不味いだろうか。
(でも知穂の守護霊だし)
面差しもどことなく知穂に似ている。先祖かもしれない。ならきっと大丈夫だ。
根拠もないことを自分に言い聞かせつつ、柚希はそろそろと翔の背後に隠れた。




