一年五組、幽霊事情
いつもの教室、いつもの朝の風景。
クラス内にいるひとりひとりを見て、違和感の正体に目を瞠る。
クラスメイトたちが戻ってきた柚希を、否、翔を振り返っている。
その視線をものともせず、彼はベランダに向かった。柚希も一緒にベランダに出る。
手摺りに寄りかかって教室を見る翔と同じように、柚希も教室に目を戻した。
室内の人数は八人。さきほど教室を出るときから二人クラスメイトが増えているが、しかし――。
「知らない人がいる」
さっき、柚希が翔に連れられて教室を出たときには、彼女たち以外には四人登校してきている生徒がいた。
先ほどまでいなくて、いまはいる四人のうち、柚希が顔を知っているのは二人だけだ。
あとの二人は見たことがない。
教壇の脇に立つ人は明らかに年代が違う。
袴姿の大正の女学生風だし、右から二列目、四番目の席に座っている男子生徒は柚希たちと同じ制服だが知らない人だった。
「あれって」
「幽霊だな」
ほとんど口を動かさない状態で翔が答える。
「これが俺の見ている世界だ」
低い声の告げる現実に、柚希は絶句した。
いつもの景色に誰も見えない人物たち。それを自分だけが見えるのだとしたら。
「昼間見える幽霊のほとんどは、俺には生きている人間と区別がつかない。話しかけた相手が実は生きていなかった。なんてことがよくあった」
過去形で語るのは、だから生者にも死者にも話しかけなくなったということだろう。
思い返してみれば、翔は声をかけただけでは反応してくれなかったが、机を叩いたり紙に字を書いたりして訴えれば応えてくれた。
そんな風に物理的に接してくるのは、生者だと確信できるからだろう。
けれどそうやってでしか人と関わらないのは、あまりにも寂しいのではないだろうか。
「でもさ、周りの反応とか見れば区別つくんじゃない? 例えば誰とも話さなかったり、誰とも目を合わせないのは幽霊だーとか」
「それは、俺が幽霊だって言ってんのか」
「……あ」
言われてみればそうである。
要らんことを言ってしまったと柚希はビクビクしてしまったが、翔は怒るでもなくどちらかというと寂しそうに目を細めた。
「……えっと、……」
何か言わなければと口を開いた柚希は、結局なにを言っていいか分からず狼狽えた。
助けを求めるように教室へ戻した視線の先で、新たな登校者が入ってくる。
気だるげに朝の挨拶をする男子生徒に、「あっ」と思わず声が漏れた。
男子生徒が自分の席に座るのを思わずまじまじと見てしまう。
二列目四番目。あの幽霊がいる席だ。
体を重ねられた幽霊が一瞬抗議するようにぶれる。次の瞬間、黒い影が男子生徒の体を覆った。
「高坂くん、高坂くんっ。あれ、不味いんじゃないの!?」
「普通に考えたら不味いだろうな」
「普通に答えないでっ」
席に座る男子生徒の顔色がみるみるうちに悪くなっていく。
いつもなんだか疲れている人だなぁと思っていたが、まさかこんな真相があったとは。
「取り憑かれる!」




