幽霊犬、成仏する
短いので、連続投稿!
バッティングセンター横。
そこには相変わらず恨めしげな瞳をした犬が座り込んでいる。
「さっきは途中でごめんね。もっと話をしよう」
犬の前にしゃがみこんで、ぱさついて見える毛並みを撫でた。
触れる感触はない。だが魂同士の接触は本質を触れあわせることだ。
撫でることでこんなことを思っているというニュアンスぐらいは、犬相手にも感じ取れた。
「そっか、君たちくらいの視線だと車は怖いよねえ。え? ゴミ収集車に入れられちゃったの!? 死んでるからってそりゃないわ! それじゃあ死んでも死にきれないよね。分かる。分かるよ」
根気よく思いを感じ取り、わしゃわしゃと毛をなで回す。
そんな柚希と犬を、翔は近くの電柱に寄りかかって伏し目がちに見ていた。
ときどきスマートフォンを見る仕草は、ただの待ち合わせにも見える。
近くにバス停があるのも好都合だろう。
柚希たちの高校の生徒が使う路線ではないので、知り合いに出会う確率も低い。
(グッジョブ、高坂くん! その姿、誰も幽霊を観察しているようには見えません)
本当に見ていないのではないかとちょっと思ったが、とりあえずそれは脇に置いておくことにした。
犬が無事に昇天したのは、カラスが漫画のようなイラッとする鳴き声で鳴き始めた時間帯だ。
空が薄らと朱を刷き、家へ帰る小学生の別れの声が聞こえてくる。
「あ、案外しぶとかった。あのわんちゃん」
翔の寄りかかる電柱に両手をついて思わず呟くと、彼がこちらを見下ろしてふと息を吐いた。
苦笑。
微かな吐息のような、けれど確かに小さく笑ったように見えて、柚希は目を見開いた。




