ep.043 am01:45 北海道札幌市郊外 某ラーメン店
am01:45 北海道札幌市郊外 某ラーメン店
「しっかしまー、ホントにこのこころって女の子は、凄いね~」
180cmは軽くあろうか、筋肉質の中年の女がラーメンを頬張りながら、スポーツ新聞を見て呟く。
「アンタも凄いやん、心美さん。聞いたよ。昔、十勝女相撲の5連覇やったんやろ?はい、コレ、お代わり。チャーシュー、サービスしといたから」
店の女将は、コトリと味噌ラーメンのお代わりを心美の前に置いた。
心美はへへへと笑うと、ラーメンのスープを一口すすり、
「嫌やだな、ミチエさん。昔の事よ、昔の。前の死別した旦那との間のウチの産んだ子が生きていれば、丁度、この子と同じ歳でね。なんだか他人には思えないのよ」
「生きていた?」
ミチエは首を傾げる。
心美は遠くを見る目をして、
「難産だったんだ。結局、死産で・・・。麻酔受けて帝王切開で産んだんだけど、臍の緒が首に巻き付いちゃっててね・・・。名前も前の旦那が決めていてね。男の子だったら、龍太。女の子だったら、こころ。ってね」
「あら、そうかい。ゴメンね、話したくない事聞いちゃって」
ミチエは謝った。
心美は首を横に振り、
「ちっちゃい女の子でね。死んだまま生まれてきたから、おっぱいもあげれなかった。それが唯一心残りでね。その後半年も経たずに、旦那も炭鉱で落石事故に・・・」
「そーかい・・・」
ミチエは、しみじみと呟いた。
刹那、ラーメン屋の扉が開く。
グレーのスウェットの上下を着た10歳前後の男の子が、目を擦って立っていた。
「あー、お母ちゃん。また、ラーメン食べてる」
「あ、心太。目が覚めたのかい?配送途中だけど、お母ちゃん、お腹空いてね。こっち来て、お前もラーメンお食べ」
ミチエは驚き、心美に尋ねる。
「この子は?」
心美は、心太を隣の席に座らせた。
目を細め、心太の頭を撫でると、
「明日は学校休みやから、配送一緒に行きたいって。心太、このおばちゃんは、ウチの友達やから挨拶して」
心太は素直に頷き、
「うん。僕、竜ヶ崎心太。小樽第七小学校の三年生です」
「あらあら、お利口さんやね、僕わ。ちょっと待ちや」
ミチエは奥に一度引っ込むと、手に何か持って戻ってきた。
「はい、チョコレート。心太君、よろしく。アタシは、ミチエ」
心太は受け取ると、ニカーっと笑い、
「ありがとう、ミチエおねーちゃん」
ミチエと心美は驚き、
「あら」
「まあ、心太。アンタ、一体いつそんな言葉を?」
心太は、へへっと鼻をすすり、
「お父ちゃんが言うてた。女の人には、おばちゃんじゃなく、おねーちゃんって言っとけって」
心美とミチエは顔を見合わせ、一通り呆れるとぷっと吹き出した。




