ep.034 am00:43 北海道札幌市北区 札幌クイーンホテル
am00:43 北海道札幌市北区 札幌クイーンホテル
「ち、違います・・・。アタシ、麻薬なんて、使ってません。それに、福知恵美って誰ですか?」
ユウは目が泳いでおり、動揺を隠せない。
皐月は無言で近付き、左手でユウの顎をクイッっと持ち上げる。
容赦無く右手でいきなり頬を叩いた。
乾いた音が部屋に響く。
「痛っ・・・」
ユウは叩かれた左頬を押さえ、
「おっ、お客さん、ウチの店はS・・・」
全てを言い終わる前に、皐月の返す手で、今度は反対の頬を叩かれた。
叫び声を上げる前に、更にもう一度、左頬も。
鼻血が滴る。
痛みの強さが、遊びなどではない事をユウは知る。
皐月は冷たく笑うと、ユウの髪を左手で掴んだ。
焦りがユウの顔に浮かぶ。
力任せに髪を引っ張りあげ、
「優しく言ってる間に答た方がいいわよ。あなた、本当は誰?」
ユウは皐月を睨み、
「アタシにこんな事して、いいと思ってるの?アタシの男、ヤクザよ!絶対、仕返ししてやる!」
《ほら出た、お決まりの脅し文句・・・。つまらない女ね》
皐月はため息を吐き、ユウの掴んでいる髪の毛を離す。
バッグの中から組織が用意した警察身分証を取り出し、ユウの前に放り投げた。
ユウは怖ず怖ずとそれを見て固まる。
皐月は残忍に笑い、
「ね、ヤクザなんて敵じゃないの。それから訴えても無駄ね。麻薬中毒者のたわ言なんて、誰がまともに聞くかしら?」
更に皐月は、バッグからナイフを取り出し、ユウに見せ付ける。
ユウの顔から血の気が引き、
「さ、刺すの?こ、この人殺し!」
皐月は肩を竦め、
「まさか、そんな事して何のメリットが私に?全然、楽しくないじゃない」
皐月はテーブルの上にあったカルティエのライターを燈すと、ナイフを炙り始めた。
瞬く間に刀芯がオレンジ色、そして狂気を含んだ赤色に染まっていく。
赤く熱せられたナイフをユウの顔に近付け、
「顔は女の命よね?一生消えない傷物にしてあげるわ。こんな風に」
皐月はユウの持たれているソファーに、しかも顔の真横にナイフを当てた。
嫌な臭いを発しながら、相当な値段がするはずのソファーが焦げていく。
ユウは、自身の顔が熱で爛れるのをイメージしたのか、
「い、いやーっ。そ、それは嫌っ」
皐月は悪戯に笑い、ユウの鼻先にナイフを突き付けると、
「ならば、全て話なさい。悪い様にはしないから」
ユウは頷き、ぽつりぽつりと語り出した。
「じ、実は・・・」




