ep.027 pm11:53 大阪府富田森市 国道170号線
pm11:53 大阪府富田森市 国道170号線
「ん~、いい風。スカーレット、そろそろ空に上がろうか」
ベスは愛車・db1に語り掛ける。
刹那、db1のヘッドライトが強く輝いた。
ベスは、ハンドルから両手を放し、先程と同じ古代ゲール語で呪文を唱えながら魔法陣を描く。
『ストーミィ・ペガサーーース!』
掛け声と共に魔法陣が大きくなり、ベスとバイクを包む。
まばゆいばかりの光を放つと、バイクはフワリと浮かび上がり空中の見えない道を、北を目指してどんどん加速していった。
反対車線を走る一台のレクサスに目撃されている事など、全く気にする事もなく・・・。
“河内稲美会”若頭・山崎はレクサスのステアリングを操りながら、阪神高速から西名阪道へ抜け藤井社インターで降りた。
国道170号線を南下し、富田森記念病院を目指す。
兄弟分の柳沢政人に会う為だ。
丁度、富田森市に入った頃であろうか、山崎は不思議な体験をする。
前方から来たバイクと思われる物体が加速し、一瞬光を放つとそのままフワリと宙に浮き、北を目指して飛んで行ったのだ。
《はぁ、何じゃありゃ?あれがUFOっちゅうヤツか?それとも、俺、頭おかしなったんか?ヤバい、酒飲み過ぎたか・・・》
山崎は少し先にあるファミリーマートに車を停めると、ダッシュで店内に駆け込む。
ミネラルウォーター“八甲田の粋な水”の2リットル・ボトルを二本買い、駐車場に戻ると頭から一気にぶちまけた。
頭をブンブン振り、
《疲れてんのかな?アカン、アカン、そんなん言うてられへん・・・》
山崎は、両の頬を自分で思いっきり平手打ちすると、
「っしゃあー、気合い入った!」
再びレクサスに乗り込み、富田森記念病院を目指した。
空には魔女の妖しい微笑みの如く、赤い上弦の月が冷たく輝く。
ベスは、高度を上げながら、
《目的地は札幌だから、最短ルートは琵琶湖から北陸に抜け、日本海をそのまま突っ切るのが一番ね》
db1のタンクを優しく摩ると、
「スカーレット、もう少し高度を上げ雲の上を飛ぼうか。マッハの速度でお願い」
db1のヘッドライトがウインクすると、エンジンが唸りを挙げ一気に加速する。
刹那、ソニック・ブームの衝撃が巻き起こり、ベスは音速の世界に突入した。




