ep.023 pm11:43 大阪府河内長原市 聖マリア寮
pm11:43 大阪府河内長原市 聖マリア寮
ベスは、寮の駐輪場に置いてある愛車の真っ赤なビモータ・db1に跨がると、軽くため息を吐き、
《正直、さっきの藍には、びっくりさせられたわ。あの子だけが、直接アクセサリーを身に着けてくれないから、動きがスキャン出来ないのよね・・・。何かしら理由でも有るのかしら?そのうち話しないとね。それはともかく・・・》
ベスは、db1のセル・スイッチを押しエンジンをかけた。
小気味の良い重低音がして、db1が目を覚ます。
《とりあえずは、寒さと風圧対策ね・・・。うん》
ベスは、右人差し指と中指を揃えて真っ直ぐ伸ばし、左手首の黄金のブレスレットの最初にクリスタルを次にルビー、そして、エメラルドを触った。
指に赤い光と緑の光が灯り、ベスは要領良く空中に五芒星を描き、次にそれがすっほり収まる様に真円を描く。
ベスは円の周りに古代ゲール語の魔法呪文を、唱えながら書いていく。
『大魔女ソーニャ・スノウィオウロードの孫にして代理人であるエリザベス・スノウィオウロードが、火の精サラマンダー・風の精シルフに願う、我に炎の温もりと風の盾を!マグマム・ワィバーーーン!』
そう言い放つと、最後にもう一度、呪文を取り囲むように大きい真円を描き、 魔法陣を仕上げると宙に放り投げる。
魔法陣は宙で大きくなると、すっと降りてきてバイクとベスを包み込んだ。
刹那、魔法陣はまばゆいばかりの光を放ち輝くと、あっと言う間に消える。
ベスは妖しい笑みを浮かべ、
《ふふっ、これで6時間は寒くもないし、風圧にも影響受けないわね》
愛車・db1のタンクを軽く撫で、
「スカーレット、行くよ。北へ・・・」
db1のヘッドライトが、ウィンクのように点滅した。
《可愛い子》
ベスはアクセルを回し、河内長原の街へ駆け出して行った。
残された藍は、少し上を向き何もない空間に語りかけ、
「晴明ちゃん、ベスでよろしおしたなぁ~」
平安の大陰陽師・安部晴明が心に話かけてくる。
《ほんに、ほんに。しかし、藍よ。そのぬいぐるみは、ちぃーとも儂に似ておらんのじゃが・・・》
別の若い男の声が、藍の心に響く。
《いやいや、案外似てるぜよ、晴明じーさん。性格の悪い所とかがぜ》
《そうそう、見た目ではなく性格の悪い所って・・・、コラ!以蔵、何を!今日という今日は・・・》
もう一人の声の主は、幕末四大人切りの一人、岡田以蔵だった。
《ひーっ、助平じじいが怒ったぜよ~》
《誰が助平じじいじゃ、待てこの若造がぁ~》
もし霊能力のある者がここにいれば、火の玉の追い掛けあいを見ることが出来たはずである。




