ep.022 pm11:39 大阪府河内長原市 聖マリア寮
pm11:39 大阪府河内長原市 聖マリア寮
留めのボタンが、ローブがいわくつきな年代物である事を物語っていた。
ベスはライダージャケットの上に、そのローブを羽織る。
最後に、左手に真っ白なライダーブーツを持ち、右の肘にパールホワイトにユニオン・ジャックがあしらわれたヘルメットを引っ掛けた。
ベスが部屋を出ようとした時、ローズが寝言を呟く。
「Take care, Beth. (気をつけてね、ベス)」
ベスは驚き、一度ブーツとヘルメットを足元に置くと、ローズに近付いた。
ブランケットをかけ直してやり、
「Thanx, Rose. (ありがと、ローズ)」
頬に軽くキスをすした。
ベスはもう一度ブーツとヘルメットを持ち直し、ドアを開ける。
猫の如きしなやかさと素早さで、玄関を目指した。
ベスが玄関でブーツに足を通した刹那、背後に気配を感じ振り返る。
同じ“はねくみメンバー”の隼人藍が、実家の老舗料亭旅館“佐津眞”の浴衣を着て立っていた。
左腕には、お手製でわざと不細工にこしらえたウサギのぬいぐるみを抱えている。
首を傾げにぱぁと笑うと、
「お出かけどすか?ベスちゃん?」
ベスは少しだけ動揺し、
「ええ、ちょっと気分転換にひとっ走りして、帰りにコンビニでも寄ってこようかと・・・、藍はこんな時間にどうしたの?」
「ウチどすか?寮に張ってる結界が振動したんで、晴明ちゃんに起こされたんどす?」
「晴明・・・ちゃん?結界?」
藍は、抱きしめてる不細工なウサギのぬいぐるみを見せ、
「へえ、コレが晴明ちゃんどす」
刹那、藍が下を向き、直ぐさま顔を上げる。
そして、ぬいぐるみをプルプルさせ、全く口を閉じる事もなく、本人は腹話術をしているつもりで、少ししわがれた声を出し、
「やぁ、お嬢さん。ワシが晴明じゃ。仲良くしてたも~」
ベスはクスッと笑うと、右手でぬいぐるみの右手を掴み、
「よろしくね、晴明ちゃん」
「うむ、こちらこそ。結界の振動がヌシで良かった。気をつけて行かれよ、異国のヒト」
藍は、相変わらずしわがれた口調で話し、ぬいぐるみをプルプルさせている。
ベスは再びクスッと笑い、
「ありがと。じゃあ、アタシ行くわ。お休みなさい、藍」
ベスが気づくと藍はいつもの京都弁に戻っており、ペコリと頭を下ると、
「へえ、ウチは寝るよし、ベスちゃんは気ーつけえ。ほな、お休みなさい」
ベスは頷くと、寮の扉を開け出ていった。




