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魔法はAIに管理されているはずだった  作者: (趣味で)ラノベ書くおじさん


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第7話 臨海副都心騒乱 2「魔獣、極紫の魔獣師」

 崩れ落ちたはずの魔導獣の肉体が。


 どろりと黒く溶け。


 さらに巨大な『何か』へと再構成されていく。


 その姿はさながら。

 旧約聖書で語られる「ベヒーモス」を連想させる。

 

 しかし。

 完全な姿を成すより早く、急速に霧散していく。


 その莫大な質量の魔力を、何者かが吸収したかのように。


 そして。


 “それ”と入れ替わるように。

 

 空気そのものを押し潰すような新たな魔力が静かに広がる。


 レイナの表情が変わる。


「総員、警戒!」


 魔導警察が一斉に拳銃型端末を構える。


 しかし。

 

 次の瞬間――。


 轟音。


 崩壊したビルの壁面が内側から吹き飛び。

 極紫色ごくし・しょくの魔力が白煙とともに噴き上がった。


 その中心から。


 “それ”を取り込んだであろう一人の人影が。


 ゆっくりと歩み出る。


 深紫こきむらさきに染めた法衣のようなローブを纏う女性だった。


 長い黒髪。

 透き通るような白い肌。

 右腕に刻まれた古代文字。


 その紋様は、脈打つように。

 禍々しさを孕んだ、極紫に輝いている。


 その女は瓦礫の上へ立つと、周囲を一瞥する。


「……思ったより早かったわね」


 その声には焦りも敵意もない。


 ただ、事実を告げるような静けさだけがあった。


 ()()()を、察したサラが肩の上で震える。


「悠真……」

「気を付けて……」


「あの人……普通じゃない」


 レイナが一歩前へ出る。


「魔導技術局監察官、神代レイナです」


「これ以上の破壊行為を停止しなさい」


 女は微かに笑った。


「監察官……」


「《メーティス》に従うだけの人間」


 その一言に、レイナの眉が動く。


「あなたは何者?」


「答える義務はない」


 極紫に輝く魔法陣が静かに足元へ浮かび上がる。


 レイナはすぐさま襟元のバッジへ触れ。


 手に取り、口元に寄せる。


「第四段階解除を申請」


【特別監察官:神代レイナ】

【適正ユーザ】

【申請ヲ許可】


【演算補助ヲ開始】


【《メーティス》ヲ最大同期】


 その左手が下ろされた時。


 もう一段階、明るい黄金色の光が身体を包み込む。


 すでに展開されていた外套を包むように。

 魔力で編まれた白金の外套が新たに形成された。


 肩から幾何学模様の光が流れ、瞳は淡い金色へ変わる。


 周囲の隊員たちが息を呑む。


「第四段階……!」


「監察官の最終戦闘権限……!」


 レイナは静かに、拳銃型端末を握る右手を掲げる。


「戦闘演算開始」


「同期率九十七%」


「魔法演算速度、三〇〇%」


 《メーティス》と最大同期した瞬間、世界が止まったかのように見えた。


 レイナだけが滑るように駆ける。


 音を置き去りにする速度。


 一瞬で女の懐へ入り込む。


輝光剣術式ランボ・ロ・フォス!」


 左手に握り込まれたバッジ型端末から。

 

 黄金の光剣が一直線に走る。


 しかし。


 女は避けようともしなかった。


 極紫色の魔法陣が一枚だけ展開される。


 光剣が触れた瞬間、刃が霧のように消えた。


「……!」


 レイナの瞳が揺れる。


「魔法を……吸収した?」


 女は静かに右手を振る。


 吸収された光が極紫の槍となって返ってきた。


 レイナは高速移動で回避。


 右手の拳銃型端末を構え直し。

 十枚以上の魔法陣を同時展開する。


特級拘束術式クラティシ!」


 黄金の鎖が四方八方から敵へ襲いかかる。


 女はそれでもその場から動かない。


 極紫の霧が身体を包む。

 

 鎖が触れた瞬間。

 すべて灰のように崩れ落ちた。


「術式の分解……」


 レイナが小さく呟く。


 現代魔法を構成する魔力式そのものが崩されている。


 こんな現象、《メーティス》のデータにも存在しない。


「まだ終わらない!」


 レイナは防御結界を展開しながら。

 

 間合いを量るように銃口を向ける――。


 しかし、女は冷酷に右手を掲げ。


 極紫の魔法陣を静かに回転させた。


「時代が違う」


 その一言とともに。


 圧縮された紫の衝撃波。


 轟ッ――!


 黄金の結界が軋む。


 展開されていた全てが砕け散る。


「くっ……!」


 レイナが耐える。


 しかし押し切れない。


 《メーティス》が警告を発する。


【同期維持不能】


「まだ……!」


 レイナは最後の魔法陣を展開した。


 刹那。

 

 十発を超える光弾。


 一斉射撃。


 臨海副都心の空が黄金に染まる。


 だが。


 女は静かに右手を掲げるだけだった。


 巨大な極紫色の魔法陣が空を覆う。


 そのすべてが紫の光へと変換され。


 霧散した。


「そんな……。」


 レイナの顔から初めて余裕が消える。


 次の瞬間。


 紫の衝撃が爆発する。


 レイナは吹き飛ばされ、地面を滑る。


 白金の外套が砕け散り、《メーティス》との同期が強制解除された。


 レイナは膝をつき、荒い呼吸を繰り返す。


 立ち上がろうとしても、身体が言うことを聞かない。


 女はゆっくりと近づこうとした時。


「悠真くん」


 拳を強く握りしめた悠真が、


 当然のように女の前に立ちはだかる。


「悠真く……、逃げ……」


「レイナ、後は任せろ」

 

 警告を鳴らし続ける端末を、一瞥もせず。


「ここから先は俺の領域だ」

 

 その言葉を聞いた瞬間。


 それまでレイナの猛攻を片手で嘲笑っていた女の眉が。

 

 ピクリと反応した。


(なに……この圧倒的な『魔圧』は……)


 悠真は、そんな女の驚愕にすら興味がなさそうに。

 ただ、シャツの袖を肩まで無造作に捲り上げ、小さく肩を回す。


「サラ、やろう」


 その瞬間。


 レイナの半壊している端末が。


 あり得ないエラーログを吐き出した。


【警告】

【未定義の超高熱源を感知】

【魔力波形:計測不能――】

判定不能アンノウン


「……え?」


 呆然とするレイナの視線の先。


 悠真の強く握り込まれた拳が。


 現代の常識システムが拒絶するほどの、冷徹な“黒い炎”をバチバチと爆ぜさせた。


――


 東京湾海底。《メーティス》。


【神代レイナ保有端末との同期を維持】


【警告:未定義の超高熱源を感知】


【オブジェクトコード:古代精霊魔法(推定)】


【――第二波:記録レコードを開始】


――続く。

 次話、「臨海副都心騒乱 3『古代精霊魔法、開放。黒炎の契約者』」

 <少年はついに決意。全てを開放する>

※本作はカクヨム様と同時投稿を行っております。

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