表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法はAIに管理されているはずだった  作者: (趣味で)ラノベ書くおじさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/22

第4話 「契約者」

 轟音とともに立ち上った光柱は、数十秒後。

 

 ゆっくりと空へ溶けるように消えていった。


 眩い光が収まると、森は再び静寂を取り戻す。


 その場に残されたのは、呆然と立ち尽くす生徒たち。

 

 淡く光を放つ石碑だけだった。


「な……何だったんだ、今の……」


 廉太郎が口を開く。


 他の生徒も石碑を見つめてざわめいている。


「課題の演出じゃないよな?」


「来てくれた教師センセイも驚いてるぞ」


 誰にも状況が分からない。


 いや、一人だけ事情を知っている者がいた。


 俺の肩の高さをふわふわと漂う、小さな妖精。


 サラだ。


 ……もっとも、俺以外には見えていないが。


「えへへ」


 サラは満足そうに笑った。


「やっと封印が解けたぁ」


「お前……」


 小声で問いかける。


「今のは何だ?」


「契約の証だよ」


 悪びれた様子もなく答える。


「これで君は正式に古代精霊魔法の契約者になったの!」


「古代精霊魔法……?」


「そう!」


 サラは胸を張る。


「昔は人間と妖精が一緒に魔法を使ってたんだよ」

「でも、今は誰も使えない」


「だからあたし、ずーっと待ってたの」


「俺を?」


「うん!」


 あまりにも軽い返事だった。


「でも、なんで俺なんだ」


 サラは笑顔を少しだけ曇らせる。


「それはね……」


 少し、真面目な声になる。


「君の魂が――」


 その瞬間だった。


 ゾクリと、背筋を冷たいものが走る。


 レイナも同時に顔を上げた。


「なんだ!?」


 次の瞬間。


 轟音。


 森の木々が何本も吹き飛び、一つの影が着地する。


 褐色の肌。

 

 二メートル近い長身。


 軍用服のような黒い外套コート


 右腕には、見たことのない紅い魔導紋章。


「ようやく見つけた」


 低い声。


 日本語だった。


 しかし、外国人ノンネイティブ特有の訛りが。


 続いて、木の上からもう一人が飛び降りた。


 銀髪。

 白い肌。

 青い瞳。


 細身だが鋭い空気をまとっている。


「確認した」


 白人の男が端末を見ながら呟く。


「反応一致」


「対象は天城悠真」


 レイナが一歩前へ出た。


「魔導技術局だ!」


 凛とした声が森へ響く。


「所属と目的を述べなさい!」


 二人は答えない。


 代わりに褐色の男が笑った。


「命令は一つだ」


 男は悠真を真っ直ぐ、指差す。


「その少年を連れて帰る」


 空気が張り詰める。


「断る」


 レイナは即答した。


「対象は日本政府の管理下にある」


「保護対象だ」


「引き渡す権限はない」


 白人の男が肩をすくめる。


「なら」


「力づくだ」


 瞬間。


 男の姿が消えた。


「速っ!」


 廉太郎が叫ぶ。


 次の瞬間にはレイナの目の前。


 拳が振り抜かれる。


 しかし。


「甘い!」


 レイナは右手で、拳銃型端末を構えつつ。


 左手で、黄金の魔法陣を展開。


障壁ティーホス!」


 轟ッ!!


 衝撃波が森を揺らす。


 防いだ。


 だが。


 障壁に亀裂が走る。


「くっ……!」


 レイナが押される。


「出力が高すぎる……!」


 褐色の男は笑った。


「若いな」

「経験不足だ」


 障壁が砕け散る。


 レイナが数メートル吹き飛ぶ。


「レイナ!」


 悠真が駆け寄ろうとする。


 しかし。


 白人の男が前へ立ちはだかる。


 無数の氷槍が空中に浮かぶ。


「動くな」


「お前を、連れて戻れと言われている」


 廉太郎が必死の形相で飛び出す。


「悠真から離れろ、この野郎っ!」


 渾身の魔力を込めた拳。


 だが、褐色の男がそれを片手で無造作に受け止めた。


「問題外だ」


 そのまま軽く腕を振るだけで、廉太郎の巨体が消し飛んで木へ激突する。


「廉太郎っ!」


 完全に力量が違う。


 遠巻きに見ている田山たちは。

 恐怖のあまり、腰を抜かして地面を這いずり回る術しかない。

 

 さっきまで悠真を「バグ」「迷惑」と罵っていたエリートのプライドは。


 どこにもなかった。


 勝てない。誰も。


 二人の男が、無防備な悠真へじわじわと近づいていく。


「終わりだ」


 その時だった。


「まだだよ!」


 サラが悠真の前へ飛び出す。


 小さな両手を広げる。


「契約者さん!」


「あたしに魔力を預けて!」


「え……?」


「信じて!」


 悠真は迷う。


 だが。


 レイナが叫んだ。


「悠真くん!」


「逃げてっ!」


 その声を聞いた瞬間。


 はらは決まった。


「サラ!」


「頼む!」


 世界が白く染まる。


 サラが微笑む。


「契約承認」


「古代精霊魔法を、限定して解放」


 ――刹那


 悠真の足元に、今まで誰も見たことのない巨大な魔法陣が展開した。


 幾重にも重なるは、恐らく古代の文字。


 現代の魔法には存在しない術式。


 《メーティス》にも登録されていない魔法。


 サラが高らかに悠真へ告げる。


「あたしに続いて!」


静寂しじまより語り継がれし、原初の熾火おきび

静寂しじまより語り継がれし、原初の熾火おきび


精霊女王アプサラスの名において……のぼれ!』

精霊女王アプサラスの名において……のぼれ!」


『「星炎タリキ・ロ!!」』


 黒い炎が天へと奔る。


 先月の暴走とは違う。

 

 明確な意思を持った、圧倒的な熱量の“暴力”だった。


「バカな、最大出力の防壁が――」

「演算が追いつかないッ!?」


「が、あぁぁぁぁぁっ」

「化け物……め……」


 一瞬前まで、絶対的な強者だった男たちの悲鳴が。


 森の轟音に掻き消される。


 衝撃波が晴れた時。

 

 そこにいたはずの襲撃者たちは、防御する暇さえ与えられず。

 

 衣服の破片すら残さず完全に消滅していた。


 残されていたのは、ガラス状に焼け焦げた大地だけ。


 遠くでそれを見ていた田山が。


「ひ、ぃ……」


 と、喉を鳴らして気絶するのが見えた。


 悠真はその場に膝をつく。

 全身から力が抜けていく。


「……悠真くん」


 震える声。


 見上げると、レイナが自分の肩を抱くようにして立ち尽くしていた。

 

 国家特級を焼き切った男への恐怖。

 

 それ以上に、自分を圧倒した強敵を一撃で消し去ったその背中に。

 ――言いようのない『守護』の安心感を覚えてしまっていた。


 守るべき対象に、“魂”ごと魅了された。


 学年首席のプライドが音を立てて崩れ。


 彼女の中の常識が塗り替えられていく。


 サラが肩に降り立ち、小さく笑った。


「やっぱり」


「君なら、使える」


――


 消滅した襲撃者が残した、半壊した通信端末が虚しくログを吐き出していた。


【――警告:プランA失敗】


【対象『天城悠真』の戦闘能力は予測値を遥かに凌駕】


【これより『円卓』へ、戦術核級の魔導戦力の投入を申請――】


――


 そして、同時刻。


 東京湾海底。


 《メーティス》は新たな警告を発する。


【古代精霊魔法を確認】


【データベース照合:失敗】


【危険度:最上位】


【コードネーム更新】


例外イレギュラー


【フェーズ2へ移行】


 世界はついに。


 「管理できない魔法」が存在することを知り始めた。


――続く。

 (第4話・完)

 次話、「はじめての夏」

 <レイナ16歳の夏休み。それは、はじめての夏休み>

※本作はカクヨム様と同時投稿を行っております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ