表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法はAIに管理されているはずだった  作者: (趣味で)ラノベ書くおじさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/17

第3話 「妖精の少女」

 黒炎事件から一か月。


 俺たち、都立渋谷一高シブイチ一年生は。

 富士山麓にある魔導技術局が運営する訓練施設へ来ていた。


 毎年恒例の校外実習。


 名目上は合宿。


 実態は実戦訓練だ。


「空気うめぇぇぇ!」


 相馬廉太郎そうまれんたろうが大げさに叫ぶ。


 俺は隣で荷物を持ちながらため息をついた。


「うるさい」


「都会育ちには感動なんだよ!」


「お前も東京だろ」


「細かいこと言うな」


 相変わらずだ。


 だが、こういう騒がしい奴がいると場は和む。


 一か月前の事件以来、周囲はどこか俺に気を遣うようになっていた。


 表向きは事故。


 しかし学園内部では噂になっている。


 “黒炎クロの天城”。


 あまり嬉しくない二つ名だ。


「それにしても」


 廉太郎がニヤニヤする。


「羨ましいな」


「何が」


「護衛付き生活」


 視線の先。


 少し離れた場所で地図を確認している神代レイナ。


 相変わらず近寄りがたい美少女だ。


 そして現在。


 俺の護衛兼監察官でもある。


「好きで付いてるわけじゃない」


 レイナが聞き逃さず返した。


「任務だからよ」


「はいはい」


 廉太郎は面白そうに笑う。


 レイナは呆れたようにため息をついた。


 一か月経った今も。


 俺と彼女の距離感は微妙なままだ。


 少しだけ会話は増えた。


 だが、根本的な信頼関係はまだない。


 向こうは“監察官”。

 こっちは“その監視対象”。


 そんな関係だ。


――


 合宿最終日。


 実習の締めくくりとして行われるのがフィールドワーク試験だった。


 生徒たちは三人一組で富士樹海周辺を巡りながら課題をクリアしていく。


 総合評価試験。


 成績にも直結する。


「では、開始!」


 教師の号令とともに各グループが出発した。


 俺たちのチームは


 悠真おれ

 レイナ。

 廉太郎。


 という、奇妙な組み合わせだった。


――


 最初の課題は探索。


 魔力反応を追跡して隠された水晶を探す。


 これはレイナが圧倒的だった。


「東北東、二〇〇メートル先」


「もう分かるのか」


「魔力波形が見えるもの」


「見えるってなんだよ」


 俺にはさっぱり分からない。


 十分後。


 課題クリア。


――


 二つ目。


 防御結界構築。


 これは廉太郎が活躍した。


「おりゃあ!」


 雑だが出力は高い。


 結界が展開される。


「力任せだな」


「結果オーライ!」


 課題クリア。


――


 三つ目。


 魔導暗号解読。


 当然、レイナ担当。


 五分で終了。


 周囲のグループが苦戦している中、俺たちは順調だった。


「このまま首位も狙えるわね」


 レイナが珍しく機嫌良さそうに言った。


 その時だった。


 前方から騒ぎ声が聞こえた。


「まだ駄目か!?」


「反応しない!」


「何なんだこの課題!」


 数グループの生徒たちが立ち往生していた。


 俺たちも近づく。


 そこにあったのは巨大な石碑だった。


 高さ三メートルほど。


 苔むしている。


 どう見ても訓練施設の設備には見えない。


「課題内容は?」


 レイナが聞く。


「石碑を起動しろ、だってさ」

「神代でも無理だって。魔導技術局の機材でもエラーが出るんだから」


 “あの時”、悲鳴を上げて逃げ出した田山アイツだ。

 

 自分の無能を隠すように鼻で笑った。


「お前みたいな“奴”が近づいて、また変なバグとか起こされたら迷惑なんだよ」

「引っ込んでろよ、天城」


 田山アイツは忌々しげに石碑を睨みつけ。

 

 吐き捨てた。


「ちっ、魔力をいくら流しても反応しねえし」

「術式もバグってて読めねえんだよ」

教師せんせいが仕込んだ嫌がらせか?」


 どうやら行き詰まっているらしい。


 俺は石碑へ近づく。


 その瞬間だった。


 胸の奥が熱くなる。


 ドクン。


 心臓が脈打つ。


 まただ。


 一か月前から時々起きる現象。


「悠真くん? ちょっと、危ないから離れなさい!」


 レイナの声。俺の腕を掴もうとする。


 だが、その手はかすかに震えていた。

 一ヶ月前――国家特級術式を焼き切った男への、本能的な恐怖。

 

 俺はそれを、そっと片手で制した。

 その声も耳に入っていない。


 石碑が見える。


 いや。


 石碑の向こうに何かがいる。


――


 ふわり。


 光が舞った。


 白金しろがね色の粒子。


 蝶のような羽。


 小さな少女。


 萌黄もえぎ色の長い髪。


 透き通るような淡褐色ライトブラウンの瞳。


 年齢は十歳くらいに見える。


 そして。


 誰よりも楽しそうに笑っていた。


「やっと見つけた!」


 少女が叫ぶ。


 俺を指差す。


「おそーい!」


「……は?」


「一万年も待ったんだからね!?」


 頭が真っ白になる。


 周囲を見る。


 誰も反応していない。


 レイナも。

 廉太郎も。

 他の生徒も。


 誰一人。


 少女が見えていない。


「おい」


 俺は思わず呟いた。


「お前、誰だ」


 少女は胸を張った。


「私はサラ!」


 得意げな笑顔。


「古代妖精族、最後の生き残り!」


 ――妖精。


 意味が分からない。


 だが。


 次の言葉で背筋が凍る。


「それと」


 サラがニヤリと笑う。


「一か月前、君を()()()()のも私だよ」


 空気が止まる。


 心臓が強く鳴る。


 脳裏に蘇る。


 黒炎の中で聞いた声。


 あの日。


 確かに聞こえた声。


 「――ようやく会えた」


 目の前の少女が言う。


「久しぶりだね」


 そして。


 とんでもない一言を放った。


「私の契約者さん」


 悠真は言葉を失った。


 レイナは息を呑む。


 悠真がただ石碑の前に立っただけ。

 

 それなのに――

 

 周囲の魔力が。

 世界そのものが彼を中心に“ひれ伏していく”ような錯覚に囚われたからだ。


「悠真くん、あなた一体……!」


 学年首席の護衛たてが怯えを孕んだ声をあげる。


 その声を背に、悠真はただ、静かに石碑へ触れた。


ドゴォォォン!!


 誰も起動できなかった石碑が、圧倒的な白金の光柱を吹き上げた。


――


 同時刻。


 《メーティス》が静かに反応する。


【感知】


【――計測不能インフィニティ


――続く。

 (第3話・完)


 次話、「契約者」

 <ただ一人、知る者。そして、狙われる力>

※本作はカクヨム様と同時投稿を行っております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ