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【完結】魔法はAIに管理されているはずだった  作者: (趣味で)ラノベ書くおじさん


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第40話 「聖夜の頂上“決戦”。赤い警報」

 横浜・みなとみらい。


 港町を彩るイルミネーション。


 煌めく光は、クリスマスイブという特別な夜を一層華やかに演出していた。


 赤レンガ倉庫から流れる音楽。


 行き交う恋人たちの笑顔。


 夜空へ向かってゆっくりと回り続ける巨大観覧車。


 悠真とレイナは、その乗り場へ続く長い列の最後尾へ並んでいた。


「結構並ぶね」


 レイナが苦笑する。


「クリスマスだからな」


 周囲を見回しながら笑った。


 とはいえ、不思議と退屈ではなかった。


 むしろ、この待ち時間すら心地良い。


 他愛もない話をしているだけなのに、時間だけがあっという間に過ぎていく。


「今年はいろんなことがあったね」


 レイナがぽつりと呟いた。


「うん」


 悠真も自然と頷く。


「入学した頃は、こんな一年になるなんて思わなかった」


「俺も」


 四月。渋谷第一魔導高専への入学。


 あの頃は、普通の高校生活が待っているとばかり思っていた。


 それが、今や──


 太古の精霊魔法を振るい、

 首相官邸の敷居をまたぎ、

 自衛隊と肩を並べて戦場にいる。


「よく分かんない変な魔法が飛び出てきたと思ったら」

「サラと出会ったところから始まったんだよな」


 悠真が呟くと、レイナも優しく笑う。


「私は、悠真くんと出会ったところからかな」


「え?」


「勉強と訓練ばっかりしてたら、監察官になって――」

「こんな私に、高校生活ってこんなに楽しいんだって教えてくれたの」


 少し照れたように続ける。


「体育祭も」


「龍之介先輩との組手も」


「みんなで文化祭の準備をしたことも」


「全部、忘れられない思い出」


 まだ数ヶ月前なのに、もはや懐かしさを覚え笑えた。


「命懸けの思い出も多かったけどな」


「それは否定できないかな」


 二人は顔を見合わせ、同時に吹き出した。


 笑いが止むと、レイナが静かに言う。


「でもね」


「私、一度も後悔したことない」


「悠真くんや、廉太郎くん……」

「サラちゃんにも会えるようになった」


「みんなと出会えて、本当に良かった」


 悠真もゆっくり頷いた。


「俺もだ」


「一人だったら、絶対ここまで来られなかった」


「なんか、こんな話し、夏休みにもしたな」


 くすっと二人でわらう。


 だが、その一言だけで十分だった。


 言葉以上に、お互いが同じ気持ちなのだと伝わってくる。


 気付けば列は大きく進み、係員の声が響く。


「次のお客様、どうぞ」


「あ、俺たちだ」


「うん」


 二人は並んでゴンドラへ乗り込んだ。


 扉が静かに閉まり、ゆっくりと上昇が始まる。


 窓の外では、横浜の街が少しずつ遠ざかっていく。


 宝石箱をひっくり返したような夜景。


 港を照らす灯り。


 海に映る観覧車の光。


「すごい……」


 レイナは窓へ近付き、小さく息を呑んだ。


「写真より綺麗」


「本当だな」


 自然と二人の距離が近くなる。


 肩が触れそうなほど近い。


 沈黙なのに、不思議と気まずさはなかった。


 ゆっくりと高度は上がっていく。


 あと少しで頂上。


 レイナは勇気を振り絞るように悠真を見た。


「悠真くん」


「ん?」


「私ね……」


 言葉が続かない。


 胸がいっぱいになる。


 悠真も、そんなレイナを真っ直ぐ見つめ返す。


「レイナ」


 二人の視線が重なる。


 観覧車は、ゆっくりと頂点へ近付いていく。


 あと数秒。


 その時だった。


 ♪♪♪


 ♪♪♪


 静かなゴンドラへ、まったく同じタイミングで電子音が鳴り響いた。


「え?」


「え?」


 二人は同時にスマートフォンを取り出す。


 画面には、 《母》


 そして、《父》


 それぞれに表示れたその文字。


 二人は固まった。



♦♦

 ―どこからともなく、あの骸骨男ワイトの声が皆さんの脳内に直接響く―

 

 ――あ、どうも。


 忘れてはいけない。


 世界をなんだかんだする、最強のイケメン魔法使いであろうと。

 国家公務員として各国の精鋭と渡り合う超天才美少女であろうと。


 二人はまだ、十六歳の高校一年生である。


 そして、この世には


 どんな魔法でも

 どんな国家権力でも


 どんな精霊女王でも逆らえない存在がいる。


 ――そう



 ――“親”である。

♦♦



「……もしもし、お母さん?」


「はい、父さん。今、ちゃんと帰る途中です」


 甘い空気は一瞬にして消え去り、現実へと引き戻された。


 通話を切った二人は、しばらく顔を見合わせる。


 そして。


「……」


「……」


 どちらともなく吹き出した。


「「あはははっ!」」


 聖夜の横浜。


 観覧車の頂上。


 甘い沈黙ではなく、高校生らしい笑い声がいつまでも響いていた。


――


 日本時間十二月二十四日、午後一九時頃。


 首相官邸。


 街のクリスマスムードもたけなわを迎える頃。


 地下危機管理センターに赤色灯が静かに点滅していた。


 一本の緊急回線。


 その発信元を見た秘書官の表情が変わる。


「米国より、緊急度SSです」


 その一言だけで十分だった


 官邸内に待機していた職員たちが一斉に動き出す。


「関係省庁へ緊急招集」


「各大臣、局長級へ至急連絡」


 十数分後。


 関係閣僚が、一つの会議室へ集結していた。


 議長席には高井紗奈子首相。


 その右には防衛大臣・大泉。


 左には文部科学大臣・松木。


 さらに各責任者たちが顔を揃える。


 全員の前に、一枚の資料が投影された。


 発信元――米国政府。


 件名『アリゾナ州における精霊魔法事案について』


 会議室の空気が一気に張り詰める。


「繋いでください」


 高井の一言で通信映像が映し出される。


 そこには米国政府高官が映っていた。


『我が国特殊部隊"CAG"が中国勢力と交戦』


『敵契約者一名を確認しました』


『交戦中、妖精が契約者の肉体制御を強奪』

『現在、自律行動に移行しています』


 その報告に、室内がざわつく。


「妖精が……単独で行動を?」


 誰かが思わず漏らした声だった。


 米国高官は静かに頷く。


『我々も初めて確認した事例です』


『妖精は“その身体”を媒体として利用し、逃走』


『現在も所在は不明』

『推定進路も予測不能です』


 だが、報告はそれだけでは終わらなかった。


 通信先の高官は資料を一枚切り替える。


 そこに映し出されたのは、一人の男の顔写真だった。


 中国首席――周天平。


『もう一点、共有事項があります』


『本件とほぼ同時刻、中国において大規模な政変が発生しました』


 会議室に再び緊張が走る。


『我々が以前から収集していた情報――』

『不正な各手続き、違法な資産隠匿に関する情報を中国内に開示しました』


『これを受け、中国議会はやむなく周首席の全権を停止』


『事実上の失脚です』


「……そこまで動いたのですか」


 外務大臣が思わず息を呑む。


 高井も静かに画面を見つめた。


 周という指導者の退場は、日本にとって決して悪い話ではない。


 だが、それで終わるほど国際社会は単純ではない。


 高官は険しい表情のまま続ける。


『問題は、その空白です』


『周政権が管理していた全ての記録が現在、統制不能となっています』


『第二勢力がそれらを掌握できるのか』

『あるいは妖精自身が独自に行動を開始するのか』


『現時点では誰にも予測できません』


『従って我々は――』

『本事案による世界規模のリスクは、むしろこれから拡大すると判断しています』


 通信が終了する。


 重苦しい沈黙だけが会議室を支配した。


 最初に口を開いたのは大泉だった。


「最悪だな」


「はい」


 松木も険しい表情で続ける。


「これで敵は国家という枠組みを超えました」


「妖精単独でも行動できる可能性があるということです」


 SMA荒川司令官が資料をめくる。


「現時点で考えられる脅威は三つ」


「第一に、妖精自身による直接侵攻」


「第二に、他国組織の再扇動」


「第三に……未確認の契約者、あるいは他の妖精との連携です」


 どれも楽観視できる内容ではない。


 高井は腕を組み、静かに考え込む。


「他には」


 魔導技術局長が口を開く。


「現状、断定はできません」


「ですが……」


「敵が最優先で狙う対象は変わらないでしょう」


 大型モニターへ、一枚の写真が映る。


 制服姿で笑う一人の少年。


 天城悠真。


「黒炎の契約者」


「なんらかの因縁を持つ存在」


「引き続き彼を排除、あるいは妖精ごと確保が最大目的となるでしょう」


 その言葉に異論を唱える者はいなかった。


 高井は小さく息を吐く。


「結局……」


「また、あの子が狙われる」


 誰も返事をしない。


 それが現実だった。


 しばらく沈黙が続いたあと、大泉が静かに言う。


「ですが、一つ問題があります」


「何?」


「我々には、妖精そのものが見えません」


 その言葉に、高井も目を閉じる。


 そうだった。


 この場にいる誰一人として、妖精を認識できない。


 会話も聞こえない。


 姿も見えない。


 精霊魔法の根幹を理解している者が、この国にはほとんど存在しないのだ。


「つまり」


 松木が結論を口にする。


「今後の作戦立案には、天城君本人の協力が不可欠です」


「できるなら妖精からも直接、情報を得る必要があります」


 高井はゆっくりと立ち上がった。


「夜中に呼び出すわけにはいきませんね」


 彼は普通の高校生としてクリスマスイブを過ごしている。


 その束の間の平穏くらいは守ってやりたい。


「会議は一旦保留」


「明日午前、天城君へ正式に協力を要請します」


 誰も異論を唱えなかった。


 会議室の照明が少し落とされる。


 しかし、その場を去る者はいない。


 誰もが同じ予感を抱いていた。


 アリゾナで起きた出来事は、決して米国だけの問題ではない。


 自由となった妖精は、必ず次の一手を打ってくる。


 そして、その標的は――。


 窓の外では、クリスマスの夜明けが静かに近づいていた。


 夜が明ければ、平穏は終わる。

 それが、新たな戦いの始まりになることを──。


――続く。

 次話、「瓦解する大国。目覚める依代」

※本作はカクヨム様と同時投稿を行っております。


【作者より】


あ、どうも。これにて「7章 クリスマス・米中衝突編」が終幕です!


最強のイケメン魔法使い(予定)と国家公務員超天才美少女による、甘い観覧車のムードを完璧にぶち壊してくれた《父》と《母》の着信。やはり最強の敵は親でしたね……(笑)。


そして舞台は一転して首相官邸へ。


アリゾナで起きた妖精の暴走、周首席の失脚という激震の中、物語はさらにスケールを増して次の章へと突入します。


次話から、いよいよ新章が開幕します!

悠真たちを狙う新たな脅威、そして自由になった妖精の目的とは――?


次回、第41話は【7/14 22~24時頃】に投稿予定です!


【読者の皆様へお願い】

「クリスマス編、面白かった!」「親バレ笑った」「新章の展開が気になる!」と思ってくださった方は、ぜひページ下部の【★★★★★】やブックマークをいただけますと幸いです!


完結に向けて作者のブーストがものすごい勢いで跳ね上がりますので、応援よろしくお願いいたします!

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