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【完結】魔法はAIに管理されているはずだった  作者: (趣味で)ラノベ書くおじさん


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第35話 「守護の神々、降臨。悠久の想い」

夜の海を覆う巨大結界。


 包囲されたアレクシスとアジーへ向け、日本側が一斉に動き出した。


「全隊、第一波攻撃開始!」


 荒川の号令が響く。


 直後。


 轟音が夜空を切り裂いた。


 ドォォォォォン!!


 沖合に展開していた護衛艦から、魔導誘導砲弾が次々と放たれる。


 青白い光条が演習場へ降り注ぎ、巨大な爆炎を巻き起こした。


 模擬戦用建築物が吹き飛び、何メートルもの爆炎が乱立する。


 さらに上空。


 魔導無人攻撃機が隊列を組み、精密魔法射撃を開始。


 数百発にも及ぶ魔力弾が雨のように降り注いだ。


「続けろ!」


「相手に術式を組み立てる暇を与えるな!」


 SMA隊員たちも一斉に攻撃魔法を展開する。


 雷撃。


 氷槍。


 高圧縮風刃。


 現代魔法の火力が一点へ集中し、演習場全体が光で染め上げられた。


 しかし。


 爆煙の向こうから、静かな声が響く。


「……やはり見事です」


 爆煙を裂き、アレクシスがゆっくり歩き出す。


 周囲には幾重もの蒼い障壁。


 現代魔法と精霊魔法が融合した複雑な術式が、すべての砲撃を受け止めていた。


「ですが」


「この程度では、届きません」


 アジーが小さく羽ばたく。


『幻想障壁、展開』


 空間そのものが揺らぎ、着弾した魔法の軌道が歪められていく。


 SMA隊員の一人が息を呑んだ。


「攻撃が……逸らされている!」


 その時だった。


「なら」


 一筋の白金色の雷が海面を走る。


「俺が突破する」


 龍之介だった。


 その瞬間、《メーティス》が機械音声を響かせる。


【ユーザ名:虹野龍之介】


【戦闘権限ヲ更新】


【承認:権限ヲ更新シマシタ】


雷神装タケミカヅチ弐式ニシキ


【適正ユーザ】


 龍之介の全身を包む雷光が、一段階その輝きを増した。


 黄金がかった雷は極白金へ。


 その一本一本が鋭い刃のように逆立ち、空気を震わせる。


 バチバチバチッ!!


 周囲の海水が瞬時に蒸発し、足元に白い蒸気が広がる。


「これが……!」


 レイナが思わず息を呑む。


 龍之介自身も拳を握り直し、小さく笑った。


「なるほど」


「これがSMAの切り札か」


 一歩。


 踏み込んだだけだった。


 ドンッ!!


 衝撃波だけがその場へ残る。


 姿が消えた。


「速い!」


 アレクシスの瞳が初めて見開かれる。


 次の瞬間。


 龍之介は眼前へ現れていた。


雷神ライジン


 拳が放たれる。


 白金の雷を纏った一撃は、空間ごと圧縮しながら一直線に叩き込まれた。


 ガァァァン!!


 幻想障壁が大きく軋む。


 アレクシスが数歩後退した。


「まだ終わらない!」


 龍之介は空中で身体を捻る。


 両手の魔導短剣が雷光を吸い込み、一対の光刃へと変化した。


雷煌ライコウ!」


 幾筋もの白金の斬撃が十字を描きながら降り注ぐ。


 斬撃は一撃ごとに加速し、幻想障壁へ連続して叩き込まれる。


 バリンッ!!


 ついに一枚目の障壁が砕け散った。


 SMA隊員たちから歓声が上がる。


「通った!」


「龍之介先輩が突破した!」


 その一方。


 御園生がレイナに話し掛ける。


「そろそろ、あの承認が降りる頃だ」


「ありがとうございます」


 二人が交わす言葉とほぼ同時、黄金の魔法陣が幾重にも展開された。


 《メーティス》が新たな認証を開始する。


【ユーザ名:神代レイナ】


【監察官権限ヲ更新】


【承認:権限ヲ更新シマシタ】


【第五段階】


【適正ユーザ】


 黄金の光がさらに深みを増す。


 同時に、レイナと御園生の隣に半透明の女性の姿が現れた。


 サクヤ。


 《日本メーティス》の高次演算人格であり、レイナたちの演算補佐を担う存在。


 三人は互いに視線を交わし、小さく頷く。


「サクヤ」


『はい、レイナ』


「同期開始」


『同期率九八%』


『複合術式、展開可能です』


 三人の声が重なる。


「「天鎖結界フラグマ」」


魔法封式フラギシ


 黄金の鎖が幾千にも枝分かれし、演習場を駆け抜ける。


 アレクシスを中心に巨大な拘束陣が形成され、逃げ場を塞いでいく。


 さらにサクヤの演算術式が展開される。


 黄金の紋様が敵の魔法陣へ直接重なり、現代魔法の構築式が停止していく。


 アジーの表情がわずかに曇った。


「……術式が」


「強制停止されている」


 アレクシスも驚きを隠せない。


演算(メーティス)ネットワークへの強制干渉……』


『ここまで完成させたのですね、日本は』


 レイナは静かに前を見据える。


「あなたたちの精霊魔法は止められなくても」


「現代魔法なら封じられる」


「それが私たち監察官の仕事よ」


 白金の雷が駆ける。


 黄金の鎖が絡みつく。


 SMAの砲撃が絶え間なく降り注ぐ。


 三方向から畳み掛ける日本の猛攻。


 連合王国最強の契約者アレクシスは、初めて完全な守勢へと追い込まれていった。


「――素晴らしい」


 窮地の中、アレクシスが不敵に微笑む。


 その瞳が、底知れない翡翠の光を放った。


「ですが、これならどうですか?」


 アジーの羽が爆発的な魔力を吐き出し、黄金の鎖が悲鳴を上げて軋み始める。

 精霊魔法の「真の出力」が、現代魔法の檻を内側から食い破ろうとしていた。


 ――その“王”の暴威を。

 右腕の黒炎を激しく燃え上がらせた天城悠真が、正面から見据えていた。


――


 白金の雷が海を裂き、黄金の鎖が夜空を覆う。


 龍之介の《雷神装・弐式》と、レイナの第五段階権限。


 日本が誇る現代魔法の最高峰が、アレクシスを確実に追い詰めていた。


 幻想障壁は次々と砕け、現代魔法術式は監察官権限によって強制停止されていく。


 誰もが勝機を確信しかけた、その瞬間だった。


 アレクシスが静かに目を閉じる。


「……ならば」


「もう現代魔法は必要ありません」


 彼はゆっくりと肩の妖精へ視線を向けた。


「アジー」


『ええ』


 黒銀の妖精は静かに微笑む。


『ここからは、私たちの戦いです』


 次の瞬間。


 アレクシスの全身から黒銀色の魔力が噴き上がった。


 現代魔法陣は一枚も存在しない。


 にもかかわらず、周囲の海と空が共鳴を始める。


 ゴォォォォォ……。


 海流が逆巻く。


 夜空の雲が渦を巻き、演習海域全体が巨大な魔力の坩堝へと変貌していく。


 サラが息を呑んだ。


『純粋な……精霊魔法』


『契約者へ、直接力を流してる……』


 アジーが静かに両手を広げる。


『精霊魔法』


蒼穹幻海ブルー・オーシャン


 海が隆起した。


 高さ数十メートルにも及ぶ巨大な水壁が何重にも連なり、日本側を包み込む。


 生物のようにうねる津波が巨大な顎となり、砲撃も雷撃も呑み込んでいく。


「迎撃!」


 龍之介が《雷煌》を放つ。


 白金の斬撃が水壁を切り裂く。


 しかし。


 切り裂かれた海水は一瞬で再生し、逆に龍之介へ襲い掛かった。


「ちっ!」


 高速移動で辛うじて回避する。


 レイナも黄金の拘束鎖を放つ。

 

 しかし、水流は鎖をすり抜け、そのままSMA部隊へ叩きつけられた。


 ドォォォン!!


「ぐあっ!」


「第三班後退!」


「結界が押し切られる!」


 圧倒的な質量。

 圧倒的な魔力量。


 現代魔法では干渉できない純粋な精霊魔法が、日本側を一気に押し返していく。


 アレクシスは静かに前へ歩く。


「これが精霊の力」


「一万二〇〇〇年前より受け継がれた、本来の魔法です」


 その時だった。


「――十分だ」


 黒い炎が海上へ揺らめく。


 悠真だった。


 ゆっくりと日本陣営の最前線へ歩み出る。


 肩にはサラ。


 黒より黒い炎、“星焔”が静かに右腕で揺れ、夜の海を赤黒く照らしていた。


 龍之介が息を吐く。


「ようやく主役のお出ましか」


「悪い」


 悠真は小さく笑った。

 その瞳の奥で、すでに冷徹な黒炎が鋭く宿っている。


「ちょっと出番を待ってた」


 サラが小さく笑う。


『悠真』


『今度は私たちの番』


 悠真は一歩踏み出す。


 ドンッ!!


 海面が陥没した。


 黒炎を纏った身体が一直線にアレクシスへ迫る。


「速い」


 アレクシスの瞳が細まる。


 二人の拳が真正面から激突した。


 ガァァァァン!!


 衝撃波だけで海が左右へ割れる。


 続けざまに蹴り。拳。肘。


 互いに一歩も引かない超高速の格闘戦。


 衝突のたび、衝撃波が海面を爆散させる。

 噴き上がる白い水蒸気が、二人の影をかき消す。


 《メーティス》を介さない、純粋な精霊魔法同士の激突。


『どうしてまた同じことを繰り返すの、アジー!』


 サラの叫びに応じるように、悠真の黒炎が爆発的に跳ね上がる。


『人は変わらない! だから強き秩序が必要なのです!』


『たとえそれが――あの日のアトランティスと同じ道でも!』


 アジーの拒絶とともに、黒銀の光が海を狂わせる。


『もう言葉では終わりません。決着をつけましょう、アプサラス』


 激突のたび、悠真の黒炎が熱量を増していく。


 アレクシスの放つ黒銀の魔力が、内側からボロボロと灼き切られていく。


「……一万年待ったサラを、もう泣かせるな」


 悠真の冷徹な声が響いた瞬間、黒い炎が爆発的に海を呑み込んだ。


――続く。

 次話、「終幕の光。理を灼く星焔」

※本作はカクヨム様と同時投稿を行っております。

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