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魔法はAIに管理されているはずだった  作者: (趣味で)ラノベ書くおじさん


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第19話 「始まりの空、誓いの夜空」

 放課後。


 渋谷第一魔導高専・第二演習棟。


 人気のない道場に、乾いた足音だけが響いていた。


「もう一回」


 小さな声が飛ぶ。

 悠真は肩で息をしながら立ち上がった。


「……分かった」


『返事だけはいいのね』


 妖精サラは腕を組み。

 

 宙に浮かびながらじっと悠真を見つめている。

 

 いつもの愛らしく穏やかな笑顔はない。

 

 あるのは、契約者を鍛える指導者の厳しい表情だけだった。


『今のは六十五点』


「六十五……」


『無駄な魔力が多い。炎を“放とう”としている』

『違うの、精霊魔法はあたしと一緒に“流す”もの』


「言葉では分かるんだけどな……」


『分かってないから失敗するの』


 容赦がない。悠真は苦笑いした。


 サラと出会ってから数か月。


 日常ではどこか天然で、

 小動物のように愛らしい妖精だと思っていた。


 しかし、訓練になると別人だった。


『もう一回』


「はい」


『返事だけは百点』


「褒められてる気がしない」


『褒めてないもん』


 悠真は思わず笑ってしまう。


「鬼教官だな」


『鬼?』


「すごく厳しい先生って意味」


『そう』


 サラはどこか嬉しそうに頷いた。


『じゃあ、あたし鬼教官でいい』

『悠真には強くなってもらわないと困るから』


 その言葉だけは、冗談ではなかった。

 サラの表情が少しだけ曇る。


『あたしは……悠真を失いたくない』


 悠真は一瞬だけ動きを止めた。

 普段は滅多に弱音を見せないサラが、小さく俯いている。


「大丈夫だって」


 サラは小さく頷く。


『……うん。だからもっと強くなって』

『あたしが安心できるくらい』


「了解、鬼教官殿」


『よろしい。あと五十本』


「えっ?」


『まだ終わりじゃない』


「ちょっと待って!」


『待たない』


「鬼だぁぁ!」


『だから鬼教官だって言ったでしょ』


 演習場に二人の笑い声が響いた。


――


 そして六日後。


 決戦前夜。


 富士山麓。渋谷一高・第一野外演習場。


 夕暮れに染まる森を、悠真は一人歩いていた。

 

 いつの間にか冷たくなりはじめた秋風が木々を揺らす。

 聞こえるのは鳥のさえずりと、葉擦れの音だけ。


「懐かしいな……」


 ここは数か月前。


 すべてが始まった始まりの場所。

 あの日、この場所でサラと出会い、俺の黒炎は目覚めた。


 レイナや廉太郎と、必死に外国勢力と戦ったのも。

 この鬱蒼とした森の中だ。


 あの時は生き残るために必死に力を振り回すだけだった。


 けれど、今の俺の胸の奥には。

 ハッキリとした熱い芯がある。


 サラも静かに森を見つめていた。


『あたしもね、ずっと最後の妖精として一人で生き残るだけだった』

『でも、今は違うもん』


 悠真は笑った。


「ああ、一人じゃない」

「レイナも、廉太郎も、みんながいる」


「だから明日も負けられないな」


 視線の先。

 広大な野外演習場には。

 

 巨大な魔法結界がすでに展開されていた。


 観覧席。実況席。救護班。

 そして、魔導警察と救急隊。


 リアルタイムの全国配信へ向け。

 

 まるで全国大会のような準備が進んでいる。


 対戦相手は三年生首席、虹野龍之介。

 現代魔法最高峰の使い手の一人。

 

 そして、なにより“天敵”という他ない相性の悪さ。


「楽しみ?」


 サラが尋ねる。悠真は少し考えてから笑った。


「半分。半分は怖い」


『それでいいよ』

『怖くない勝負なんて、本気じゃないもの』


『……でも、油断したら本当に一瞬で持ってかれるよ』


 サラが、かつてないほど真剣な眼差しを向けてくる。


『だって、あの先輩の雷、ただの攻撃魔法じゃないもん』

『攻撃と同時に、自分の神経と筋肉に雷を流してるの』


『限界を超えて、超高速で動くための「身体強化」に使ってるんだよ』


「生体電流での強制加速か――」


 悠真の背筋に、冷たい戦慄が走る。


『そう』


『だから、あの人の剣は、魔力だけじゃなくて』

『人間の骨や筋肉の動きそのもので次の先を読んでくる』

『炎に触れるより速く、悠真自身の『肉体からだ』の隙を捉えてくるよ』


「――上等だ。だからこそ、本気でやれる」


――


 時は同じく、中東某国。地下数十メートル。

 巨大な魔導要塞、国際テロ組織アズライル本部施設。


 重苦しい空気が会議室を支配していた。


契約者ユウマ・アマギの第一作戦は順調」

「極力生け捕りの方針で――」


「甘すぎる」


 報告を遮る低い声が、全員を黙らせた。


 会議室の最奥から、一人の老人がゆっくりと立ち上がる。

 白髪交じりの新たな指導者――“イスラフィル”。


「時代は変わる。弱者に我らの悲願は託せん」


 現議長が、慌てて声を荒らげた。


「だが、殺せば妖精がどうなるか分か――」


――ドシュッ。


 議長の言葉が終わるより早く、禍々しい漆黒の魔力剣が貫いていた。

 床へ飛び散る鮮血。しかし、誰も止めようとはしない。


 イスラフィルは冷え切った議長席へ静かに腰を下ろすと。


 画面に映る悠真の黒炎を、蔑むように見つめた。


「《メーティス》の演算ごときを過去にした程度で」

「神の力を気取っている小僧か。滑稽だな」


 イスラフィル続けて冷酷に言い放つ。


「作戦を変更する」

「契約者・天城悠真――殺害を許可」


 冷酷な視線にわずかに熱がこもる。


「恐らく存在するであろう、最後の妖精を奪取する」


 その一言で、会議室の空気が凍り付く。

 世界の均衡は、再び大きく揺れ始めようとしていた。


――


 そして翌朝。


 富士山麓で、日本最強の学生同士による一戦の幕が上がる。


――続く。

 次話、「雷速の剣、顕現する悪意」

 <学生最強・天敵の『雷速の剣』が、悠真の黒炎を切り裂く――!?>

※本作はカクヨム様と同時投稿を行っております。

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