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魔法はAIに管理されているはずだった  作者: (趣味で)ラノベ書くおじさん


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12/15

第11話 「その価値。交錯する影」

人通りの多いスクランブル交差点から数本外れた裏路地。


 悠真は、金髪の外国人と向かい合っていた。


 その男(ダニエル)は静かに。


 ネクタイを緩めた。


「一つだけ補足しよう」


 青い瞳が鋭く細められる。


「私は外交官じゃない」


「《オーフィアス》第一戦略班」


現場担当エージェントだ」


 次の瞬間。


 男の足元で。


 蒼白い魔法陣が。


 幾重にも展開される。


 現代魔法特有の幾何学模様。


 しかし。


 日本の術式より複雑だ。


 《メーティス》によって最適化された。


 高速の演算術式。


身体強化フィジカル――」

第五段階ギア・ファイブ


 魔法陣が一斉に輝く。


 ダンッ――!


 地面が陥没するほどの踏み込み。


 一瞬で、悠真の懐へ入り込む。


「速っ……!」


 悠真が反応した時には、拳が目前まで迫っていた。


 ドンッ!


 咄嗟に。


 腕を交差させて受け止める。


 衝撃。

 

 足元のアスファルトに亀裂が。

 同様に背後の壁にも亀裂。


「これが……」

「CIAの魔導兵エージェント


(なるほど、こんなもんか…)


 静かに。大きく。


 息を吐く。


 ()()()は笑みを浮かべたまま。


 間髪入れずに。


 二撃。

 三撃。

 

 拳を打ち込む。


 そのすべてに、蒼い魔力が収束している。


 一撃ごとに空気が爆ぜる。


 拳圧だけで。


 周囲のゴミ箱が吹き飛んだ。


 ()()()、紙一重で躱す。


 だが――。


「避けるだけか?」


 ダニエルが距離を取る。


 右手を掲げると、五枚の魔法陣が空中へ展開された。


蒼い雷光(ブリッツ・スピア)


 蒼白い雷槍が五本。


 一直線に放たれる。


 狭い裏路地では逃げ場がない。


 悠真は静かに右手を上げた。


 黒い炎が指先に灯る。


星焔タラ・ロ


 黒炎は拳ほどの大きさしかない。


 しかし。


 悠真が軽く振るう。


 その黒炎は一本の黒い刃となった。


 横薙ぎ。


 一閃。


 シュンッ――。


 雷槍が触れた瞬間、音もなく消滅する。


「……!」


 ダニエルが驚愕の表情に変わる。


「魔力ごと焼いた?」


 黒炎はなおも揺らめいている。


 雷を受け止めた痕跡すらない。


「これが精霊魔法……」


 ダニエルは小さく呟いた。


「報告は本当だった」


 一瞬の沈黙。


 今度は十数枚もの魔法陣が悠真を包囲する。


「だったら」

「これはどうだ」


 無数の蒼い光弾が四方八方から降り注ぐ。


 逃げ場を完全に塞ぐ。


 “面”での制圧攻撃。


 しかし。


 悠真は、一歩も動かなかった。

 動く必要すらなかった。


 再び。


 静かに息を吸い込む。


黒炎壁ディワル


 黒い炎が半球状に広がる。


 光弾が激突。


 だが。


 音はない。


 煙が晴れる。


 悠真が飄々と立っていた。


 黒炎は静かに揺らめきながら。


 蒼い魔力を燃やし尽くしている。


「防御術式まで……」


 ダニエルの表情がもはや畏怖を含む。


「本当に規格外だ」


 それでも。


 笑みを保つ素振りを貫く。


 次の魔法陣を展開する。


 今までとは。


 比べものにならない巨大な演算式。


 大気が震え始める。


「試験はここまでだ」


「最後に一発だけ」


 魔法陣が圧縮され、


 一振り、蒼い魔力の大鎌が形成される。


 その刃は《メーティス》による超高密度演算で構成された。


 現代魔法の結晶だった。


 ダニエルは地面を蹴る。


 音速に迫る踏み込み。


 一直線に悠真の首元を狙う。


 悠真は静かに目を細めた。


「……ふぅん」


 その一言だけだった。


 右手を振る。


 黒炎が一筋の軌跡を描く。


 ガキィィィンッ!!


 今度は甲高い衝突音。


 次の瞬間。


蒼い大鎌(それ)に一本の亀裂が走る。


「なっ――」


 パリン――。


 ガラスのような音を立て。


 大鎌は砕け散る。


 勢いを殺されたダニエルの胸元へ。


 悠真の拳が。


 静かに添えられる。


 星の輝きを纏う、黒炎の拳。


「ここまで……です」


 悠真は穏やかに告げる。


「これ以上やるなら」

「次は止めません」


 ダニエルは数秒間その拳を見つめると。


 ふっと笑った。


「十分だ《ザッツ・ライ》」


 両手を軽く上げ。


 戦闘態勢を解く。


「なるほど」


「君は、力に飲まれていない」

「だからこそ、価値やっかいだ」


 男は背を向け。


 裏路地の先へ歩き出す。


「天城悠真」


「次は私だけではない」


「もっと厄介な連中が」

「必ず、君の前に現れる」


 そう言い残し、ダニエルは雑踏の中へ姿を消した。

 

 ポケットに突っ込んだその右手が。


 悠真の星焔の余熱で。

 未だに小さく震えていることを見られないようにしながら。


 黒炎を静かに消しながら。


 悠真が、小さく溜め息を吐く。


(サラ――)

(色々、見られてたな……)


『そうだね……』


――


 そんな“騒動”から数日。


 ますます渋谷一高シブイチは。


 体育祭一色に染まっていた。


 校庭では、競技用魔法陣の設営が進む。

 校舎内でも、各部活が準備に追われている。


 その中でも。


 ひときわ慌ただしい部屋があった。


 【M-tube映画制作委員会】


 教室いっぱいの。


 撮影機材や照明機材。

 

 そして、編集端末が並び。


 部員たちが忙しく動き回っている。


「悠真、その背景パネルお願い!」


「はい!」


「廉太郎、そのケーブルを編集卓まで!」


「任せろ!」


 レイナの指示が飛ぶたびに。


 部員たちが一斉に動き出す。


 監察官として培った指揮能力は。


 部活動でも健在だった。


「カメラ班、照明チェック!」


「ドローン班、バッテリー残量確認!」


「大道具班はステージをあと三十センチ左!」


 次々と飛ぶ指示に。


 誰一人として迷わない。


 悠真おれは思わず。


 肩に乗る相棒サラとともに感心した。


『学校でも現場指揮みたいだね』

(そうだな――)


 そのときだった。


「悠真ー!」


 廉太郎が大きな木箱を抱えながら。

 

 駆け寄ってくる。


「この『爆発用』って書いてある箱!」

「開けていいよな!?」


「待っ――!」


 レイナが制止するより早く、廉太郎は勢いよく蓋を開けた。


 ボンッ!


 白い煙が教室いっぱいに噴き出す。


「うわぁぁぁ!」


 部員たちが悲鳴を上げる。


 煙が晴れると。


 廉太郎の髪は真っ白になっていた。


 一瞬の静寂。


 そして――


「ぶっ!」


 悠真が吹き出す。


「はははっ!」


「廉太郎、その頭!」


「なんで俺だけぇ!?」


 教室中が笑いに包まれた。


 レイナも口元を押さえ。


 小さく笑っている。


「『特殊効果用』って注意書きがあったでしょ?」


「読んでなかった……」


「自業自得ね」


 珍しく、楽しそうに笑うレイナを見て。


 部員たちも自然と笑顔になる。


――


 その後も準備は続く。


「悠真、その背景幕を天井に固定して!」


「オッケエ!」


 悠真は軽々と脚立へ登り。


 魔法補助も使わずに巨大な幕を持ち上げる。


「えっ……」


「重くないの?」


 女子部員が目を丸くする。


「これ、三十キロはあるよ?」


「そう?」


 悠真は首をかしげる。


「親父の仕事機材の方が重かったし」


 部室が静まり返る。


「機材……?」


「どんな生活してるの……?」


 廉太郎が苦笑いを浮かべる。


悠真こいつの『普通』は信用するな」


 再び笑いが起こる。


 しかし。


 次の瞬間。


 気づく。


「悠真くーん!」


「その幕、反対よ!」


「え?」


 見上げると、校章が上下逆さまだった。


「しまった!」


「もう!」


 レイナは額に手を当てる。


「なんで、そこだけ……」


「ご、ごめん!」


 慌てて幕を掛け直す。


 部員たちはまた笑い出した。


 今度はレイナも大きく笑う。


「案外、天然なんだね」


(戦ってる時とのギャップ……)


 そんな何気ない時間が、どこか心地よかった。


 ……と、レイナが内心で頬を緩めていたことなど。

 悠真は知る由もない。


――


 夕方。


 準備を終えた三人は部室をあとにする。


 夕焼けに染まる校舎を歩きながら、廉太郎が伸びをした。


「平和っていいなぁ」


「事件も何もないし」


 悠真おれも頷く。


「こういう毎日が、続けばいいんだけど」


 レイナは微笑み。


 空を見上げた。


 そして。


 《メーティス》から受ける“報告”に。


 視線を落とした。


【警告:MSS、対象者に接触試行】

 

――

 東京湾海底。《メーティス(JP)》


【第三次接触を確認】

【接触者を撃退】


【想定内】


【ここまで全て想定内】


【予測:各国の行動が交錯する可能性】

【――七五%】


――続く。

 次話、「体育祭前夜。百鬼夜行前夜」

 <前夜。巴に重なる意志>

※本作はカクヨム様と同時投稿を行っております。

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