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華麗なる、家令  作者: ねこまんまときみどりのことり


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その37 オレット一家(一家の視点)

 裏の家業の者(金融部門)は、マーリン以外のオレット家に労働をさせている。それこそ、あらゆる厭う仕事を。


厭う仕事とは言うものの、性的な仕事はさせていない。

貴族がそういう仕事に堕ちた時、自暴自棄になったり今まで抑圧されていた性的衝動が解放されてしまう傾向があるからだ。


生きていく為に真面目に心を決めて、考え抜いて決めた平民と違い、貴族はそれらの仕事を甘く見ている。


避妊にしろ、性病管理にしろ、真面目に予防をしないので、一時期客を取れてもすぐに駄目になるのだ。


だからオレット一家には、目下馬小屋と豚小屋の掃除をさせている。


「イヤーッ、臭いわ」

「な、な、馬が蹴ってくるわ」

「こ、腰が、腰がぁ」

「な、こいつ、またうんこしたぞぉ」


「うるさい、お前ら! 黙ってやらんと飯抜きだからな」


「………すいません」

「頑張ります」

「ご飯下さい」

「ぐっすん、分かりました」



来て早々は騒ぐだけ騒いで使い物にならず、ブルラベリ(父)は脅しの鞭を受けて失禁していた。

ジュレネ(母)は大騒ぎして逃げ回り、テルマス(兄)は泣きながらシャベルで馬糞を掻き出し、ソフトネール(妹)は泣き真似を続けた。


取りあえず食事をさせるが、それなりに働いたテルマスには唐揚げが1つ載っていた。粗食に唐揚げは輝いており、狙われる前に口に入れたテルマスは歓喜の顔をした。

散々逃げ回り、食事も出来ない日が続いていたことで、体に染みたのだった。

それを見て彼らが少し本気を出したのは正直な反応だった。


派遣された先の雇い主は正直な人なので、頑張った分は還元するタイプだ。少々気性は荒いけど。勤労による給金は適正に支払い、その中から借金も支払われている状態だ。



何だかんだと馬と豚にも慣れ、生活を熟していくようになったオレット一家だが、貴族の生活には今も未練タラタラである。


「お父様が愛人や賭博をするからよ」

「お前だって、ドレスをたくさん買っただろ?」

「テルマスが娼婦に、良い格好して貢ぐからよ」

「お母様だって、宝石買い過ぎだったよ」


泥仕合である。

先代のオレット当主は、遠方で慎ましやかに農業をして暮らしている。ブルラベリに後は任せると言い、ほぼ全部の財産を彼に渡して行ったので頼ることも出来ない。


ジュレネの生家は子爵だが、借金をしても返さないことで腹を立てていた。縁を切ると言われており、こちらも頼れない状態だ。


領民はブルラベリの父の時は良かったのにと、いつも税金を上げることに不満を持っていた。それなのに借金をして逃げたことで呆れている。今はバージルとマーリンが正しく治めてくれて、安定した生活に満足しているそうだ。

もう返り咲きは諦めた方が良いレベルだ。

ブルラベリの父が知ったら泣いちゃうかもだ。



なんだかんだと、文句を言い合いながら暮らすオレット一家だが、マーリンの幸せそうな話を聞いて憤慨していた。


「なんで愛人の子が贅沢してるのよ。フラナガンス前侯爵が親戚なんて知らなかったわ。知ってればこんなことになってないのに!」


「貴方、どうして頼らなかったのよ!」

「そうだよ、お父様。土下座くらい得意だろ!」


「うるさい、うるさい! それに前侯爵に男爵の俺が、簡単に話しかけられる訳ないだろ! マーリンとの繋がりなんて知らんし、あっても相当薄いはずだぞ。どこで調べたのかも分からんし」


そもそもブルラベリは、グレースのことなど調べてなんかいない。貴族との繋がり皆無の平民だと、勝手に思い込み雑に扱っていた。


そもそも貴族の前に、エルフの王女である。本気で怒らせていたら、ブルラベリは魔法で死んでいただろう。人間は弱いと思って、手加減していたグレースなのだから。



そして裏の家業の中で、彼らを面白がっている者(上司の方)が手を貸したのだ。借金を返してくれるなら良し。すぐ返らなくても面白ければ、また良しと。


この上司は意外とガッツのあるオレット一家を気に入っていた。もう彼らは馬と豚の扱いについてはプロ並みである。


失敗すれば、またここに戻れば良いよと考えている。

「いろいろ駄目なら、諦めもつくでしょ。ソフトネールは特に面白いからさ。くっくっ」


面白がっている男はランナーズ。ソフトネールの腹痛の演技の際、駆け寄った男である。



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