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華麗なる、家令  作者: ねこまんまときみどりのことり


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30/41

その30 ソレルの恋人の兄

 「父上、大変です。ジュリアがいなくなりました」


ノックもせずに執務室に入ってくる息子(ルバーブ)に、眉を寄せるソレル。だがその発言に絶句する。


「どう言うことだ、ルバーブ。管理はお前に任せていただろう!」

「ひっ、ごめんなさい」


いつも穏やかな父親の怒りの籠った声に、怯えるルバーブ。最近はエルフのことで秘密を共有し、少し距離が近づいたと思っていたので尚更だ。そのエルフを逃がしたのだから叱責されるのは当然なのに、想像力が不足しているのだろう。


父親の失望と怒りの表情に、甘やかされたルバーブの震えは収まらない。


「だ、だって、あいつは、俺に愛されて満足しているって。逃げないって言ってたから」

「っ………」


言い訳もくだらな過ぎて、ソレルはもう話すことを止めた。


「わかった、もういい。ただこのことは他言無用だよ。いいね」

優しく話す父親に、泣きながら頭を下げて出ていくルバーブは、まるで幼子のようだ。



「ああっ。きっと彼奴(ルバーブ)は女の甘い睦言に惑わされて油断したのだろう。でもまさか、もうエルフに飽きて他の女の所に遊びに出かけるなど、さすがに予想はつかなかった。女が自力で結界解除することは無理だ。仲間がいたはず。父親が侵入したとかか?」


だがあの父親に、そんなスキルがあったのだろうか?

舐めすぎていたかもな。

父親を軟禁している場所に人を送ってみるか?

その父親が首謀者なら、もうそこにはいないだろうから彼に確認して来て貰おう。


「ダンヌーク、いるかい?」

「はい。ここに」


壁に同化している男は、サルベーナの生き残った兄だ。



◇◇◇

彼はテクジュリア子爵の後継者の座を捨て、ソレルに協力することにした一人だ。彼は家族の死を受け入れられず、そしてその原因を受け止めることも出来なかった。


「あいつらを殺して俺も死ぬ!」

「馬鹿な、貴方が死ぬ必要などない。その気持ちがあるなら、俺に協力してくれ!」


ダンヌークは知っていた。

先日までソレルは、寝込んで医師の治療を受けていたことを。動き出したことで、悲しみを乗り越えたの思っていた。けれど彼の瞳から憎しみは消えていない。

ならば……………。


「見せたいものがあります。私の邸へ来てください」


その誘いに応じて、ダンヌークはアルカネット邸へ足を踏み入れた。そこには悲しみに暮れるソレルの両親が彼を迎えた。


「ああっ、ダンヌーク。一人で辛かっただろう?」

「私は大事な娘を失ったわ。みんなで幸せになるはずだったのに。うっ、ひくっ、」

二人はダンヌークの手を取り泣いた。


もうすぐ家族になると、家族ぐるみで付き合いのあった両家だ。特に父親同士は、酔い潰れるまで酒を酌み交わすほど親密だった。そこにソレルとダンヌークが、仕方がないなと介抱して部屋に運び、サルベーナと母親達がしょうがないわねと微笑んでいたのだ。


そんな日が続くと思っていたのに。



ソレルは地下室に保存してあるサルベーナの姿を見せ、必ず復活させるとダンヌークに誓った。

「命を、彼女の命を復活させてみせる。協力して欲しい!」


復活を語るソレルの強い目に、ダンヌークは逆らえなかった。

計画では元凶のマチルダ・アンクレット公爵令嬢をソレルの妻にし、復活に必要なものを彼女に甘い公爵家の特権を使い密輸する。そして子を成した後は、彼女との身体的接触を拒絶し絶望を与える。それでもサルベーナを殺してまで欲しかった妻の座を彼女は手放さないだろう。表面的にはいつも優しい、文句のつけようのない夫を演じるのだから。


憎き者を利用し研究を進めていく、先が見えない復讐の始まり。



◇◇◇

ソレルもダンヌークも、自分が許されないことに手を染めていると分かっている。


それでも、二人が生きていく為には必要な儀式のようなものだった。


研究が進むごとに人的被害が伴うが、それでも止める選択肢はなかった。そうでなければ生きていけなかった。





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