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華麗なる、家令  作者: ねこまんまときみどりのことり


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その29 ジュリア奪還

 「突然済まないな、アルカネット侯爵。極秘でリンデン国王に頼まれた案件なのだ。軍務大臣である貴殿の力を借りたいそうで、俺はその根回しに来たようなものだ」


侯爵家の応接室の案内され、向かい合った席でコーヒーを飲みながら気負いなく話すバージルは、通常運行な姿勢を崩さない。


畏まることも尊大な様子もなく。

いつものつまらなそうに話すバージルである。


ソレルはアルカイックスマイルを張り付けたまま、コーヒーカップをテーブルに戻して尋ねた。


「私に何をさせたいのですか?」

「それは受けて貰えると、肯定の意と受け取って良いのかな?」


顔をコーヒーに向けたまま問うバージルに、苦笑したまま内容次第だと答えるソレル。



バージルは以前に、エルフ国から王女の亡骸の捜索依頼が来たことをソレルに話した。これはソレルには秘密に進めていた案件だ。


けれどソレルは、とっくの昔に情報を得ていた。

バージルは極秘に動いていたが、マーリンとグレースの結び付きは知られてたしまった。けれどグレースの体が猫のグレースになったことは知られていない。



◇◇◇

エルフ国と交易のある地域の商人に賄賂を渡し、逐一情報は得ていた(ソレル)は、現国王と前国王の不仲と貴族の均衡が現国王に寄っていることを知っていた。


その商人に金を持たせ、現国王側のエルフにも賄賂を渡し情報を買い取っていた。


今回のナッカスからギガンティースへの国王の交代は、彼に取って利益しかなかった。国益を守る要のナッカスを追い出し、それを固めていた護衛や側近、国民も共に消えた。


現国王に逆らう者は殆どがナッカス(前国王)に付いていったのだろう。残る者は現国王に利益をもたらされていた者か、親戚、もしくは何も考えていないか、国を思う年配の忠義者だけだ。


以前から現国王達は、混血エルフを嫌っていた。今混血エルフ達とその者達から生まれた者も去っている現状。配偶者が純血エルフならば、その者も当然共に去っている。

ナッカスが城の守りとして雇っていた獣人達は、いつも自分達を罵倒し給料を払えなくなったギガンティースの下からは離れて行った。異種族を侮ることのないナッカスだから、滞在していたようなものなのだ。


現在エルフ国の幻惑を施した結界だけは元に戻っているが、エルフ達の抵抗を阻む為魔力も戻されていないし、戻すことはないだろう。


そんな感じでエルフ国を手のひらで転がすように掌握しているソレル。



◇◇◇

現在のエルフ国を知るソレルは思う。

(今さら、エルフ国から王女の亡骸の捜索依頼を私に? リンデン国王達はあの国の現状を知らないらしいな。どれほど情報が古いのだろう? 結局亡骸は見つからじまいなのか?)


ソレルは仕方ないとばかりに、頷いて答える。

「私で良ければ、お手伝いしますよ。軍の精鋭部隊の方に内密に働きかけておきましょう」


「ああ、助かる。最初に俺達の方で探したが魔法を使っても駄目でな。コンフリーも困ってたから、受けて貰えて良かったよ。俺からリンデン国王には伝えておくよ。じゃあ、よろしくな」

「ああ。お疲れさま」


あっさりと去っていくバージルに拍子抜けしたソレル。エルフ国の現状に触れられず安堵していた。


「ふふふっ。さすがのバージルも、もう余計な詮索はしなくなったか? それとも本当に知らないのか? あいつが以前エルフ国に出向いたことは、商人に聞いて知っているぞ。その後に訪れたなら、きっと異変に気づいたはず………」


まあ、様子を見るか。

バージルを軽く見たソレルは、執務室に戻り領地の陳情書に目を通していた。


家族に興味はないが、仕事にはストイックだったから。


彼はナッカス達の行方を探ることはしなかった。その事が自分の首を絞めることに繋がるのだ。


ハガノミヤは以前、ナッカスが城を出た後に行く先はあたりを付け、バージルのいる男爵邸に辿り着いた。ソレルがもう少し想像力を広げ用心深ければ、対策くらいは立てられただろう。


でもエルフが自由になる立場を得たことで、浮き足だってしまい油断が出たのだ。





そうでなければ、ジュリアを救出することは出来なかっただろう。


ナッカスの妹でマーリンの異父姉、大樹の精と王女グレースの娘グリードルらも仲間に加わった救出隊は、あの短時間のうちに事を終えていた。


マーリンには知らされないうちに。




◇◇◇

ハガノミヤは救出したジュリアを抱きしめて、何度も何度も謝っていた。


「ああっ、良かった。ジュリア、ごめんな、ごめんな。俺が馬鹿だったから、大事なお前がこんな酷い目に………ごめんなぁ、うっ、ぐずっ、」

「なんでぇ、謝らないでよ。お父様、私は大丈夫よ。泣かないでよ、ああっ、助けに来てくれてありがとう」


ジュリアもハガノミヤに背に手を回した。

そして暫く泣き続けるのだった。



以前のジュリアはあまり会話を重ねることがなく、父親が自分に関心がないと思って生きていた。反対派閥のクロームとの付き合いも絶対に反対され、何れ父親の権力に役立つ男と政略結婚をさせられると諦めていた。


それなのに………。

ジュリアがアルカネット邸に連れて行かれる際や今も、ぼろぼろになって助けてくれた。


自分は愛されていたと感じ、気持ちが高まり収まらずに泣いていた。



実際にハガノミヤ達は、作戦に支障がないように囚われていた場所にいるフードの男やそこを根城にする男達を倒して、侯爵家本邸のバージル息子ターメリックの住む地下牢に入れて来た。城の牢ではソレルが逃がしたり、情報が漏れる可能性があるからだ。


ナッカスやクロームがいても、相手も殺傷魔法の使い手達なのでかなり苦戦した。けれどハガノミヤが前線で結界を張り続け、ポーションを飲みながら盾になり辛くも勝利を勝ち取ったのだ。


彼の命を賭けると言った誓いは、しかと体を張って実践された。


それを見たアリアリーズとネオラチアも、彼のことを少しだけ見直した。


「少しだけ、ほんの少しなら、許してあげるわ」



実際に戦力は拮抗していた。アリアリーズとネオラチアがいなければ危なかっただろう。バージルがいれば強い戦力になったが、作戦上彼が来られる状態になかったから。


万が一にも男達が逃げて情報が漏れ、ジュリアが危険に晒されないように、全てを一度に進める必要があった。


みんなの力でハガノミヤの賭けは成功し、無事に奪還は成功したのだった。


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