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華麗なる、家令  作者: ねこまんまときみどりのことり


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その23 ルバーブの愛人になったジュリア

 「それでは若いエルフを、今回は1人貰い受けましょう」

 

黒いフードの男が再びエルフ国に現れ、国王ギガンティースへ慇懃無礼にそう言った。


世界樹の負債を支払ったことで、エルフ国には弱味がある。代償を聞かずに承諾したのはギガンティースだ。


そして黒いフードの男は続ける。

「約束を守って頂けるのならば、この国の幻惑を施した結界だけは元に戻しましょう。どうですか? 何れは魔力も戻します。ご協力頂けるならね」


「それは誠か? それではこちらも1人渡そうぞ」


そう言うとギガンティースは、アクネージ伯爵とその娘ジュリアを黒いフードの男に引き合わせた。


「今回の責任はアクネージ伯爵の怠慢から起きたこと。責任を持って役割を果たせ」

ギガンティースは、冷たく言い放つ。


「そんな、どうか娘だけは。私、私が行きますから? どうか!」

アクネージ伯爵は懇願するが、黒いフードの男は首を横に振る。


「残念ながら、今は男性が不要なのです。でもそうですね、人質的な意味でなら貴方の同行を許しましょう」

その言葉に絶望の表情を浮かべるアクネージ伯爵。


娘を助けるどころか、自分が足枷になりそうなその言葉に。


「お父様、助けてー! 嫌ぁ!」

黒いフードの仲間がジュリアを取り囲んでいた。

「待ってくれ。私も行くから!」


アクネージ伯爵はジュリアを抱きしめて囁いた。

「大丈夫だ。必ずお前だけは守るから。大丈夫だ」


「お父様、あぁ」

泣きじゃくる娘を胸に、黒いフードの男達の後を付いていく。今逆らっても逃げ切れない。隙を突くのだと心に誓う。そして僅かでも庇うこともない国王達に再び絶望の目を向ける。どうしてこんな者に従って来たのだろうか、こんなことになるなら悪事など働かなかったのに。ナッカス国王ならきっと、こんなことになっていなかった。


きっと助けてくれた。


その時アクネージ伯爵は、ギガンティース達に強い反意を抱いた。彼の妻は既に亡くなり、遅くに出来た娘は彼の生き甲斐だった。



そんな彼が連行されるのを、ギガンティースと軍務大臣アールベイカ、息子のアモンビラスと他の貴族達は、特に感慨もなく見ていた。自分達が生き残る為には、多少の犠牲は必要だと思うがごとく。


ナッカスは国を出る時、敵対勢力以外の者に保護魔法をかけていた。大変なことが起これば神殿で強く願ってくれとも伝えた。だからアクネージ伯爵達には、その保護魔法は及ばなかったのだ。

逆にナッカスに反意のない国民達には、黒いフードの男の魔法は弾き飛ばされて効いていない。



その頃ナッカスは、エルフ国の異変にまだ気づかないでいた。



◇◇◇

「わあ、お父様。この女はエルフじゃないですか? なんて美しい(かんばせ)なんだ」

「そうだよ、我が息子よ。お前が望むなら適当な貴族家の養女にして、妻に迎えても良いぞ」

「本当ですか、父上? でも私はマーリンも好きなんです。どうしたら良いですか?」

「2人と結ばれれば良いさ。マーリンは王女の血をひくから、この娘を愛人にすると良い」

「それは良い案です。ありがとうございます!」


うっそうと目を細め、美しいジュリアに欲情を向けるルバーブは、その夜彼女の体を蹂躙した。苦痛に歪む彼女だが、逃げ出すことなくその運命を受け入れる。

(こんなことで負けたりしないわ。お父様は私が守るのよ)

彼女の涙に、ルバーブが気づくことはない。女性はみんな、美しい自分に抱かれることを望んでいると思っているから。



ジュリアの父親、ハガノミヤ・アクネージ伯爵は黒いフードの男に囚われ、ジュリアが命令に従わないと殺すと脅されていた。

「言うことに従います。だから父を殺さないで!」

「ああ、済まない。俺が不甲斐ないために。ああ、ジュリアァ」

体を拘束されたまま、滂沱の涙を流すハガノミヤ伯爵。

「大丈夫ですから、お父様。必ず生きて会えますから、元気でいて下さいね」

そう言って2人は別れを告げたのだ。

父が娘を愛すように、娘もまた父を愛していた。


そして彼女は黒いフードの男の雇い主、ソレル・アルカネット侯爵邸に連れて来られた。


彼女はソレルの目的の為に、ルバーブの愛人になった。ソレルの目的はエルフの能力。血液や魔法回路を調べると共に、生まれて来る子供の魔法に期待していた。愛するサルベーナの復活の為に。


「さあ一刻も早く、私のサルベーナを甦らせておくれ」


愛する者を甦生出来る可能性を前にして、他者の気持ちを無視する行動は加速する。今の彼を止められる者は誰も居ない。


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