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華麗なる、家令  作者: ねこまんまときみどりのことり


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その15 バージル、エルフの国へ到着

 「あそこがエルフ国の城だな。国を囲む森には幻惑の術がかかっていたが、その術者の魔力を上回る俺には効かんぞ。早々に用事を片付けるとしようか」



かなりの術者による幻惑の術がかかっており、中にある城まで人は滅多に入れない。のだが、バージルには関係なかった。


いつも通りである。


「申し訳ないが国王に呼ばれて来ました。家出した王女の件で来たことを伝えて欲しいのです。私の名はバージル・フラナガンス前侯爵。今はマーリン・オレットの家令をしている者です」



飛行術で門まで飛んだバージルは誠心誠意、門番のエルフに用件を伝えた。人間を嫌うエルフは多いと聞くので、可能な限り低姿勢である。服装もダブルの黒スーツ、白シャツ、ネクタイと上品な佇まいだ。


「おおっ、マーリン様の使者ですな。話は聞いているよ。中に入ってくだされ」

単独で決めて平気なのかと心配になるが、門番は笑う。


「こんな所まで単身で来るなら、用事があるに決まってるさ。それに貴方からは守り石の気配がする。すぐに関係者だと分かったよ」


「そうですか。ではよろしくお願いします」


バージルは頭を下げ、先を行く細身で壮年の男に続いて歩き出す。きっと自分より、何倍も年上なのだろうと思いながら。


エルフの城は大きな大樹を細工した場所だった。外側から見ると、ただの立派な大樹だが、中には人間の国のようにたくさんの部屋やホールもあった。空間魔法を駆使した部屋のようで、実際には木に傷は付いていないそうだ。この木は世界樹。生命を司ると言われ、葉は治癒や悲しみを癒す効果があると言う。


エルフは、自然を傷つけず暮らす術を持つようだ。


特に検問もされずに、国王のいる執務室まで案内された。もしかしたらバージルほどの魔力なら、戦うだけ無駄だと思ったのかもしれない。



「ようこそ、我が国へ。私は国王をしているナッカスです。貴方には妹がお世話になっているそうですね。深く感謝します」


恭しく礼をする国王に、バージルもそれにならい礼をして挨拶をした。


「私のような人間に国王様が頭を下げるなど、勿体ないことです。私はバージル・フラナガンス前侯爵です。爵位は既に息子に譲り、今はマーリン様の家令をしています。私に畏まる必要はありません」



そう言えば、ナッカスは笑う。

「久しぶりに人間と話したが、貴方はエルフを特別視しないのだね。それに貴族だと威張ることもない。実に珍しい印象を受けるよ」


バージルは不思議そうにナッカスを見て、呟いた。

「人間に偏見がないのですね。もっと威圧されると思っていましたよ」


「人によりますよ。貴方は妹の恩人だ。言葉遣いも崩してくれて構わない。と言うか、崩してくれ。その、貴方のその風貌で畏まられると、変な感じなんだ。私の祖父に、先代国王に似ているから。出来れば普通に話してくれないかな?」


「エルフの先代って。ははっ。私はずいぶんと老けた容貌なのだな。エルフの容貌はみんな若いから、いくつなのか見当もつかないよ。人間の女性には羨望だろうな。

………貴方が良いなら、言葉は崩させて貰おう」


「ああ、頼むよ」 



それから2人は、ワインを酌み交わした。ツマミはバージルが空間収納から出した、サラミチーズやジャーマンポテトだ。マーリンが以前に作ってくれた、チーズが濃厚で甘さ控えめのチーズケーキも皿に乗ったまま取り出した。勿論フォークも。



「マーリンは苦労した分、何でも出来る子だ。勉強も頑張っているよ。みんなからも好かれているしね」

「そうか。じゃあ、こちらに来ても退屈だろうね。大人になるまでこの国で保護しようと思ったけど、止めた方が良さそうだ」

「………たぶん、あの子もそれは望まないだろう。ただ会うだけなら抵抗もないはずだ。あの子は天涯孤独だと思って生きて来たから。兄弟姉妹が1000人いると聞いて嬉しそうだったよ」

「それは私も嬉しいな」

「俺も嬉しいよ。貴方は良い人のようだから」


「ぷははっ。面と向かって、良い人だと言われたのは初めてだ」

「ああ。国王様にそんなこと言えないよな」

「まあね。よく陰で善良過ぎると、弄られているよ。私は無駄に派閥など作りたくないんだけど、長く生きると煩いのがいてね。そう言うのに限って高い地位を欲しがるのだ。でもね、ここにも選民意識があって、油断しているとそいつらが、下位の種族を配下にしようと画策しててさ。全く止めて欲しいよ。そもそもエルフの数がどれほど少ないか気にならないのかな。ちょっと強いのが居たって、数で負けるって! ほんと、くだら、ない…………」


寝ちゃったよ。客の前で。

何か酒のペースが早いし、顔も赤かったけど、警戒心無さすぎだろ?


困ったバージルが扉に目をやると、門番の人が居たので声をかけた。門番だと思った人は、ただバージルを待っていただけのナッカスの側近だそう。


「私はクロームと申します。ナッカス様がすいません。きっと貴方を見て、先代を思い出したのでしょう。ナッカス様も、国王になりたい訳ではありませんでしたので」


クロームは軽く嘆息し謝ってきた。


「いや、気にしてませんよ」

「バージル様。本日はどうぞお泊まりください。明日再びお話する機会を下さいませんか?」

「はい。お世話になります」


バージルは恐らく押し問答になると思い、すぐに受け入れた。食事はツマミで十分に満たされたから、寝室だけ貸して貰おう。そう思って待っていると、クロームから部屋の準備が出来たようですと、声をかけられ部屋に案内された。


「では、また明日」

「はい。おやすみなさいませ」


クロームは頭を下げて、踵を返して行く。



「当たり前だが、どこの王様も大変だな。帰ったら少しだけリンデンを敬ってやるか」

なんて言って、すっかり馴染んでいたバージルは、早々に眠りに就いた。



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