日高家
屋敷の窓を打つ雨は、勢いを増していた。
スーツ姿で窓辺に立っているのは、アオイの夫である日高コウスケ。
片手をズボンに入れて、もう片方にはスマホが握られていた。
スマホを開き、通話履歴からある番号を押す。
『こちらは…です。現在、この電話は、電源が…』
先程から何度も聞いている案内。
【ブチッ】
電話を切り、舌打ちを打つ。
(どこに行った?)
自分に従順な妻に育てたつもりだった。
だが、家を飛び出して現在は行方が分からない状態だ。
原因は、義理の啓介啓介の事を母親が口を滑らせた事にあるらしい。
先日、殴られた痛みを思いだし眉間にシワを寄せた。
(どいつもこいつも、俺の邪魔ばかりしやがって)
忌々しい気持ちだった。
そこに、ドアが鳴る。
「はい?」
返事をすると、ドアが開きガウン姿の母・雅代が入ってきた。
「なんですか?お母様」
にこやかに言う。
「まだ、起きていたのかと思って。それより、あの女は見つかりましたの?」
【あの女】とは、当然アオイの事だ。
コウスケは、眉を少し動かすが、にこやかに
「ええ、実家に帰っているようでした」
そう答える。
「まぁ、なんて無責任な。嫁いだ先を出ていき、あまつさえ実家に逃げるなんて…」
雅代は、憎たらしそうに言う。
そして、すかさず
「ねぇ、コウスケさん。よい機会ですから、あのような跡取りも産めない役立たずとは、別れましょう?ちょうど、コウスケさんにピッタリなお嬢さんが…」
甘ったるい声ですり寄ってくる。
コウスケは、ものともせずに
「お母様、何度も言いますが、僕の妻はアオイだけです。お母様がどうしてもアオイが気に入らないと言うのであれば、アオイと二人、出て行きましょうか?」
笑顔で言う。
雅代は、少し焦り
「まあ、コウスケさんが出ていく必要は…ありませんのよ。私は、ただ…」
「お母様、僕は今度の出向の準備で忙しいので、お引き取りください」
そう言って、雅代を部屋から追い出す。
雅代が自室に戻ったのを確認した後
「しつこいんだよ、ババァが」
忌々しく呟いた。
そして、スマホを取り出して、アオイの実家に電話をかける。
「あ、お義父さんですか?コウスケです。アオイから連絡は…そうですか…下手に隠し事をしたら、どうなるかはわかっていますね?…賢明です。では、アオイから連絡がありましたら、すぐに僕に連絡してくださいね」
電話を切った後、また別のところにかける。
「私だ。アオイは見つかったか?…まだか…あぁ、アオイの実家に何人か張り付かせておけ。あと、アオイの友人の所にもだ。何か分かったら連絡を」
電話を切り
「どこにいやがる…」
その形相は、恐ろしかった。




