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君と僕との秘密の日々  作者: 如月まりあ
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決意2

帰り準備を済ませて、社屋を出ると門の前に誰かが待っていた。


カナメの記憶が正しいならば、あの時、アオイに付き添っていた中年女性…たしか、【英子】とかいう名前。


英子は、カナメを見つけると深々と礼をして


「奥様があなたにお話があるそうです」


と、告げた。


英子に連れられたやってきたのは、日高家の本邸だった。


雅代の屋敷に比べると地味に見えるが、高級感溢れる屋敷だった。


「今は、マスコミがうるさいので…ここでしたら、セキュリティも万全ですから」


英子は、にっこりと笑った。


「そうですか?」


…そうだ、英子もあの場所にいたハズだ。


「あの…アオイ…さんは?」


英子は、クスリと笑い


「お子様も奥様も、大丈夫ですわ。今日、病院で確認を取らせていただきましたから。やはり、疲労が出ておりますので、しばらくは休養を取るようにとの事でしたが」


分かっているかのように答える。


「そうですか?」


そこで車が停車する。


英子はドアを開けて


「さ、参りましょうか」


と、言う。


カナメは車から降りて、屋敷の中へと入って行く。


屋敷の中も外に見劣りしないくらい、上級感が漂っていた。


「おぼっちゃま~」


中でメイドの声がする。


「佑介様のご子息の護ぼっちゃまですわ。まだ、お元気盛りの3歳ですのよ」


フフフ…と英子は笑う。


「佑介様には、もう一人5歳になられる茜お嬢様が、いらっしゃいますが、茜様はもうお休みなのでしょう。いつもなら、お二人で家の者を困らせて…あ、失礼いたしました」


英子は口を押さえる。


「では、奥様は2階にの客室にいらっしゃいますので…」


そう言って階段を上がりだす。


カナメは、それに続いた。


2階の奥にある部屋のドアの前に立ち


【コン、コン…】


とドアをノックして


「奥様、穂積様をお連れいたしました。」


と、告げる。


「…入ってください」


消え入りそうなアオイの声。


英子はドアを開けて


「穂積様、どうぞ」


と、軽く礼をする。


「はい」


カナメは、ゆっくりと部屋の中に入る。


広いベットの上で、アオイが悲しげに微笑んでいた。


「では、失礼いたします」


英子は、深々と礼をしてからドアを閉める。


今、この部屋はカナメとアオイの二人だけだった。


「こんな姿でごめんなさい。お医者様から、ベットにいるようにと厳しく言われたものだから」


「いや…別に…」


「こちらにどうぞ…」


と傍らの椅子を指す。


カナメは、それに従って椅子に座った。


「大変…だったね…」


カナメが言うと、アオイは首を振り


「私は、何も…大変だったのは、社員の皆様や亜由美さん達だけ…私は、ただ泣いていただけ」


アオイは、虚空を見つめて言った。


「ごめんなさい、ご迷惑をかけて」


アオイは、泣きながら謝る。


「アオイ…」


カナメが立ち上がろうとすると


「来ないで!!」


アオイは、叫んだ。


「アオイ…」


呆然とするカナメに、アオイはお腹を押さえて


「この子は、日高晧祐の子供です。誰が何と言おうとも、事実が違っていようとも、この子は…」


涙で声が詰まる。


カナメは、立ちあがってから


「アオイ」


と、アオイを抱きしめて


「離して!離して!」


アオイは抵抗する。


「アオイ!もういいんだ…」


カナメの言葉に、アオイは、わぁっと泣きだす。


「出来ない、出来ないよぉ。私だけ、カナメと幸せになるなんて」


アオイは、涙ながらに言う。


「私には出来ない」


アオイはカナメの胸で泣きだした。


カナメには分かる。


アオイが、どんな思いで決断したのか。


とても優しいアオイだから、カナメと幸せになる事が許せないでいる。


「アオイ」


そう言って、アオイにキスをした。


とても長いキスだった。


「カナメぇ」


二人は力強く抱き合った。


「…私の事は、もう忘れて…お願い」


「そんな事、出来る訳ないだろ?」


「ダメ…絶対に忘れて…」


「無理だよ。一緒に幸せになろう?」


「なれない。一緒にいたいけど、きっと幸せになれない」


アオイには、晧祐の事が重い十字架となって、圧し掛かっていた。


「俺も一緒に十字架を背負っていく。だから…」


「あなたの人生、壊して欲しくない。私は、あなたに幸せいてほしい」


「…俺の幸せは…アオイが傍にいてくれる事だけだよ」


アオイは何も言えない。


「俺は、アオイしか愛せない。アオイ以外は、こんなにも愛せない。アオイだってそうだろ?」


アオイは、涙を流しながら


「私だって、カナメ以外の人は愛せない。でも、このまま一緒にいたら、きっと苦しくて、辛くて、愛しているのに幸せになれない」


そう言って体を離す。


「私達、一緒にいても幸せにはなれないの。なら、もう会わない方がいい」


涙が止まらない。


「お願い、うんと言って」


アオイの願いに


「…言えないよ。そんな事言えないよ」


カナメは首を横に振った。


「愛しているわ。今までも、これからも、あなただけを愛してる。だから、あなたには、幸せになってもらいたいの」


アオイは、涙ながらに訴えた。


「俺だって、アオイだけを愛している。だから…」


そして、お腹を触り


「この子は、俺の子供だよ…アオイと俺の大切な…」


「この子は…」


「部長は、子供の出来ない体質だった。そうだろ?」


カナメの言葉に、アオイはグッと拳を握る。


「俺達の子供だ。だから…」


「ダメ!あなたの人生を壊したくない」


アオイは、首を横に振る。


「アオイ…」


「例え、この子の父親があなただとしても、この子は日高晧祐の子供として産まないと…あの人の生きていた意味が無くなってしまう」


カナメはポケットから紙を取り出す。


晧祐が考えていた子供の名前のリストだ。


「この中から名前を決めよう。幸せになろう、俺達3人で幸せになるんだ」


アオイはリストを受け取ってから、紙を開く。


たくさんの名前…


消されたり、書き直したり、何回も、何回も、書かれている名前。


アオイは、涙で何も言えなくなった。


「晧祐…」


涙が紙の上に落ちて滲む。


「俺達、きっと幸せになれる。大丈夫、俺、絶対に2人を守るから」


そう言って、もう一度アオイにキスをした。


だが、アオイは、体を引き離して


「ダメ…出来ない」


そう言ってから、鈴を鳴らす。


【コン、コン…】


とドアが鳴り


「お呼びでしょうか?」


英子の声がする。


「お客様がお帰りです。お送りして…」


「アオイ!…」


英子は、ドアの向こうで


「かしこまりました」


とだけ答えて、屈強の男2人を連れて入って来る。


「お引き取りください」


英子は、そう言ってから、男達に目配せする。


男達は、何も言わずにカナメを両脇に抱えた。


「おい!!」


カナメの叫びも完全に無視だ。


英子は、カナメの荷物を持ち


「では、ごゆっくりとお休みください」


そう言ってから、部屋を出る。


「ごめんなさい…カナメ。ごめんなさい…」


そう言ってからベットから降りる。


窓辺に立ち、しばらくすると男達に抱えられたカナメが車に押し入れられた。


続いて英子が乗る。


発進した車を見ながら


「愛している、ずっと…カナメ、あなただけを…ずっと…」


その場にしゃがみ込んで、泣きながら呟いた。






その日から、アオイの消息は消えた。


日高家に問い合わせても、答えはなかった。


アオイの親友であるリカでさえも、知らされていなかった。


恋人であるシンが、カナメの親友だからであろう。


何も知らされないまま…


月日だけが、無情に過ぎて行った。


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