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君と僕との秘密の日々  作者: 如月まりあ
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ヒダカコウスケ3

アオイの妊娠は、出向先でも祝福された。


コウスケは、自分のどす黒い感情を抑えて笑顔で対処した。


妻が浮気して他の男の子供を身籠もった…などと恥以外の何物でも無い。


どす黒い感情を抱えたまま、穂積が昼休みに向かった喫茶店に自分も向かう。


あそこのマスターは父の愛人の弟。


コウスケは入ってくると、表情が険しくなる。


それまでは穏やかだったのに、不思議なモノだ。


コーヒーを注文して飲んだ後、代金を置いてから出て行く。


啓介の事を告げて…


マスターの表情を見て、少しは溜飲は下がった。


そして、コウスケは、社員を招きパーティーを開く事にする。


これには、気に入らない穂積とか言う社員も参加するようだ。


内心、満足しながら、一度準備の為に屋敷に戻る。


雅代は、歓喜の声を上げて


『やっと、あの女を捨てる気になったのね!』


と勝手に言い出していた。


そして、芹澤貴子という女性を紹介される。


雅代が、コウスケの出世の為にと用意した女性だ。


取引のある銀行の頭取の娘らしい。


コウスケには興味が無かった。


コウスケが屋敷にやってきた理由を話すと、雅代は一瞬落胆したが、それでも


『精一杯、おもてなししないと』


と、含み笑いを見せた。


何か企んでいるな?とは思ったが、興味がないので無視をした。


執事やメイド達に命じて、準備を進める。


コウスケが屋敷に帰ろうとすると、雅代が必死に止めようとしたが無視して屋敷を去る。


今日もアオイを調教しないとならない…いや、白状させてやる…そう心に秘めて


そして、パーティー当日、何事もなかったのように家を出る。


パーティーの事は、アオイには告げてない。


外に出す必要は無い。


もし、社員の誰かがアオイを恋慕したら…と思うと怒りが沸いてくる。


そんなのは許されない。


嫉妬という感情だとは理解出来ないまま、屋敷に向かう。


準備をしている執事やメイド達を横目に最終チェックをしていると、次々に来客の知らせが入ってくる。


一応、待機部屋は用意していたので、一旦そこに集める事にする。


全員が揃い、準備が出来たところで、全員を移動させる。


屋敷の調度品等を見せつけながらだ。


自分と彼らがどれだけ身分違いだと見せつける為に。


それは、コウスケの読みでは上手くいっていただろうと思う。


全員が、豪華な調度品に感嘆の声を上げている。


満足した。


会場で、あの気にくわない穂積に村瀬絵莉花を紹介する。


専務は、自分にへこへこしてくる鬱陶しいハエみたいなヤツだが、一応頼まれたからには、その責務を果たさないとならない。


そこでも、体よく穂積は断りの返事をする。


苛立たせる男だ…そう思った。


村瀬絵莉花が2人で話がしたいと言うので、そうさせてやる。


自分は、挨拶をしないとならない連中がまだいるのだ。


そうやって忙しく動いていると、雅代がやってきた。


例の芹澤貴子を連れてだった。


得意げに、さも芹澤貴子をコウスケの妻のように扱い、あまつさえアオイを侮辱するような言動に腹は立ったが、社員の手前穏やかに相手をする。


だが、そこにアオイが現れた。


祖父の言いつけらしい。


しかもエスコートに自分を裏切った亜由美を付けて…だ。


祖父に対して内心舌打ちをしながらも、にこやかに対応する。


そして、アオイが挨拶をする。


一瞬、動揺したように見えたがすぐに元に戻る。


その後、社員達に挨拶をして回る。


正直、社員達がアオイと会話するのは面白くない。


しかし、それを表に出さない訳にはいかない。


だから、アオイに合流してアオイに近づく虫けら共に仲睦まじく見せつける。


そして、あの気に入らない穂積にもアオイを紹介した。


そこで分かったのは、アオイと穂積が、小中学校の同級生であったという事だった。


懐かしそうに話す2人に、コウスケはどす黒い感情渦巻くのが分かる。


だが、それを隠して、村瀬絵莉花の事をアオイの方から話を勧めさせる事にする。


それでも穂積は断った。


腹は立つが、それでも表面上は紳士的に振る舞う。


そして、亜由美の真意を探る為にアイツを外に誘う。


亜由美は、祖父から受けた使命だと言った。


会場に戻ると、雅代と芹澤貴子はいなくなっていた。


何処かに行ってくれたのなら、とコウスケは安堵する。


邪魔はされたくない。


だが、事件は起こった。


雅代の命に従ったメイドが、アオイを階段から突き落とそうとしたのだ。


その時に落ちればよかったものの、アオイは落ちないで済んだ。


コウスケにとって憎たらしい穂積が落ちかけたアオイを受け止めたのだ。


(…あのまま落ちればよかったのに)


そう微かに頭をよぎるが、とりあえず、穂積には礼を言い、アオイを病院に行かせるようにする。


来場している客には、体調不良と伝えた。


穂積にも口外無用と念を押した。


コウスケが事態の収拾に当たっていたら、雅代がまたやらかした。


アオイが通っている日高家御用達の産婦人科に手を回し、流産させようとしたのだ。


腹が立った。


コウスケは、事態が丸く収まるようにしているというのに、雅代は問題を起こす。


腹立たしくて仕方が無い。


(何故、あのババアが消えないんだ)


と思ったりもした。


そして、ふとある疑惑が頭をよぎる。


何故、穂積は、あの場所にいたのか…?


お手洗いを探していたと言っていたが、不自然に感じる。


アオイに接触しようとしたのではないか。


そういえば、会場でも、お互いの存在を意識していた様に見えた。


アオイが穂積と同級生だと言い出したのも不自然に思えてきた。


(もしかすると…)


その考えが頭をよぎる。


確率は低いし、確信もない。


だが、コウスケは、そう感じてしまった。


そう信じてしまった。


コウスケの中にどす黒い感情が渦巻く。


―ユルセナイ―


2人に対する怒りが渦巻く。


その時から、2人に対しての当たりが悪化していった。


穂積には無茶な仕事量を押しつけた。


無理難題を押しつけた。


そうやって、徐々に潰して行こうと考えていた。


その最中だった。



村瀬絵莉花が穂積に近付いた。


何か話しているようだと思う。


その後、彼女がまたフラれたらしいと聞き、穂積に話をする。


穂積は言った。


『愛されてもいない相手と一緒にいても幸せになれないと思います』


そう言った。


その言葉は、コウスケの怒りに火を付ける。


まるで、愛されていない自分に対して言われているような気がした。


腹が立った。


だから、余計に潰す事に執念を燃やした。


(コイツが這いつくばるまで、限界を超えてでも、壊してでも、潰してやる)


その決意だけで。


だが、穂積は中々潰れない。


自分が言いつけた仕事をギリギリでだが、こなしている。


それが、むかつかせた。


家に帰れば、アオイは相変わらず自分の子供だと言い切って譲らない。


それが、ますます腹を立たせた。


更に、あの日から芹澤貴子が毎日のようにやってくるようになった。


差し入れだと言って、和菓子や洋菓子…一般人が手にすることの無い高級品を持って。


コウスケの妻のように振る舞う彼女が、更にコウスケを苛立たせた。


穂積とアオイに当たり散らしながらも、それに堪える2人と毎日やってくる芹澤貴子。


コウスケの精神が疲弊していくのが分かった。


アオイの話をすると、僅かにだが穂積が反応していた事に気づく。


英子がいる前で、雑談のフリをして穂積の話題を振るとアオイが微かに動揺している事に気付く。


それは、お腹の子供の父親が穂積である事をコウスケに確信させた。


いつ出会った?


どこで接点を持った?


疑問が湧き上がる。


やはり、あの家出の時に偶然再会したのだろうか?


様々な憶測がコウスケの中に渦巻く。


そして、堪えている2人を見ていたら、お互いを守ろうと必死にやっていると感じるようになってきた。


アオイは穂積を

穂積はアオイを


アオイは、穂積の生活を壊さないように、必死に隠している。


穂積は、疲弊しながらも僅かにあるアオイの情報を得る為に、コウスケの無茶ぶりに堪えている。


その事に気付いた時、コウスケに衝撃が走る。


今まで、何でも手に入れてきた。


思い通りにしてきた。


自分に手に入らないモノはない。


そう思っていた。


だが、人の心までは、思い通りにはならない。


手に入らない。


金で買えない。


力で奪えない。


それに気付いた時、愕然とした。


自分が今までやってきた事は…


アオイの心を支配する為にやってきた行為は…


逆にアオイの心を、自分から離していた事なのか…


そう思い出した。


そして、気付いたのだ。


自分は、アオイを愛していた事を。


だから、穂積に嫉妬したのだと。


それに気付いた時だった。


再び芹澤貴子がやってきた。


差し入れを置いて去って行く。


彼女も自分と同類だ。


手に入らないモノはない、と思っている。


それを見て、自分が何て醜い…と思ってしまった。


自分の視界に入った穂積を屋上に呼び出す。


アオイの事を聞くと、彼は少し嬉しそうに話した。


それを見て、打ちのめされた気がした。


こんなにも想い合っている…


それを目の前に突きつけられた気がした。


絶望した。


そして、コウスケは…


…疲れてしまった。


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