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君と僕との秘密の日々  作者: 如月まりあ
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ヒダカコウスケ1

日高コウスケは、生まれた時から母に溺愛されていた。


佑介が生まれる前だったのもあるが、H.C.Cを担う社長として雅代が担ぎ出そうとしていたからだ。


佑介が生まれてからは、跡取りは佑介になるとされたが、雅代がそれを諦める事は無く、叔父である宗男一家に対する嫌がらせだけでは無く、実際に佑介の身を狙う未遂事件を起こした事がある程、コウスケを跡取りに据えようとする執念があった。


それが、雅代の両親や腹違いの弟に対する複雑に絡み合ったマイナス感情からなる、所謂憎悪からなるモノであったが、生まれた時からそれを叩き込まれたコウスケは、母の言葉だけが真実だった。


雅代は、欲しいものはすべて金と父親の権力をちらつかせて手に入れた人間だ。


夫も、そうやって手に入れてきた。


必然的に、コウスケもそうなってしまう。


欲しいものは、金と権力と力でねじ伏せてきた。


世界は自分の思い通りに動くと信じて疑わなかった。


何かトラブルが起こったとしても、母・雅代が処理をする。


だが、小学校に入ると知恵も付くものである。


周囲からのマイナス感情は、自身の人生においてもマイナスであると悟る。


そうなると、表面上は優等生を演じるようになった。


元々、見た目がよかったのもあり、特に女の子にモテた。


周囲を埋める女の子達を、腹の底で見下しながらも、表面上は爽やかな少年だった。


その裏では、気に入らない生徒がいたら、自分だとバレないように巧妙に陥れる事も忘れていない。


表面上とはいえ、優等生になったコウスケを雅代は更に溺愛した。


欲しいものは何でも与え、コウスケの邪魔になる者と分かると徹底的に排除にかかった。


雅代の父であり、コウスケの祖父である宗介が窘めようと、雅代は止まる事はなかった。


従弟である佑介とは、常にライバルとされていた。


雅代がコウスケをトップに据えようと躍起になっているのもあって、コウスケもトップに立つ為に必要なスキルは身につけていた。


人心掌握術、経済の勉強、組織の勉強…時間を惜しまず続けた。


雅代に影響されたかは分からないが、自分こそトップに立つのに相応しいと本気で信じていたのだ。


そうやって大学まで上手くやってきた。


卒業後は、当たり前のように祖父の会社に就職した。


社長は叔父だが、いつかその座から引きずり落とすつもりでいた。


その為に培ってきたスキルは有効に使った。


社内でも信頼度は上がり、コウスケが若干優秀な部分もあった為、次の社長にコウスケを推す勢力まで出来た。


その勢力は、もちろん雅代の息のかかった社員達である。


社長の秘書であった亜由美を恋人として、暴力でねじ伏せ、社長に関する情報収集をした。


だが、亜由美が妊娠する兆しが全くない事から、気になったので、不妊に関する検査をすると…彼は子種の無い体質だった。


それは、ショックだった。


しかし、どう足掻いても子供は出来ないと高をくくり、玄人の女性を性的捌け口にする事も増えた。


亜由美は、自分に従順なハズだった…


しかし、祖父の言いつけで亜由美は佑介と婚約してしまう。


コウスケとは引き離されてしまった。


計算違いの出来事に苛つきながらも、軌道修正の為に知恵を巡らせた。


亜由美の不名誉な噂をばらまき、自分は従弟に恋人を奪われた悲劇の人を演じた。


周囲は、コウスケに同情し、佑介や亜由美達を非難する。


しかし、それも次第に収まっていく。


元々、仕事も出来るし、人格者として知られる佑介だったのだから、悪い話に次第に消えていく。


それもコウスケを苛つかせた。


数年経つと、その話自体が風化していった。


その途中で、コウスケは腹違いの弟と住む事になる。


雅代が世間体と父や愛人への復讐の為に引き取ったのだ。


だが、コウスケにとって、腹違いの弟・啓介はサンドバックの代わりでしかない。


そんな扱いを雅代がしていたからだ。


苛ついたら、啓介の体を殴るようになった。


当然、周囲には知られない場所に。


屋敷の者達も何も言わない。


雅代の権力が隅々まで広まっているのだ。


誰もが沈黙を貫いている。


そんな時だった。


アオイが派遣社員として、H.C.Cに入社したのは。


元気で明るく優秀な彼女は、すぐに職場に溶け込んだ。


だが、コウスケは従順な人間に矯正しやすいな…と思った。


それを想像すると、自分が高揚しているのが分かるくらいだ。


そして、アオイに声をかけた。


アオイは、家の為バイトも掛け持っていた為、自分の誘いに体よく断りを入れる。


思い通りにならなかったのは、計算違いだが、『この女を自分に従順な女に矯正する』と思うと高揚した。


そして、初めてのデートでプロポーズまでやってのけた。


だが、当然断られたし、その事を知った雅代が手を回し、アオイをクビにしてしまった。


その頃には、雅代の愛情を疎ましく思っていたので、内心舌打ちをしながら、アオイの次の就職先を片っ端から潰していった。


それと同時に、当時働いていたバイトもクビにする。


どうしようもなく追い詰められたところで、コウスケはアオイに提案をする。


自分と結婚したら、借金をすべて肩代わりしよう…と。


アオイは、それに乗ってきた。


元々、アオイの家族は、多額の借金の為、家族全員が馬車馬のように働いており、先日、母親が亡くなったばかりだ。


ボロボロの家族の為、アオイがその話に乗る事は当然のごとくの事だった。


だが、いざ結婚となると雅代の反対が入る。


雅代としては、コウスケには、それなりに相応しい相手を見繕っていた所だった。


将来、H.C.Cのトップとして君臨する為に必要な人脈を持つ親の令嬢が。


どこの馬の骨ともしれない、一般家庭のアオイなど、雅代が認められないハズがない。


必死に阻止しようとする雅代を疎ましく、そして憎らしく思いながらもコウスケは、ある賭けに出る。


祖父である宗介にアオイを会わせたのだ。


宗介に気に入られれば、雅代とて何も言えない。


そう確信を持って。


コウスケは、賭けに勝った。


アオイは、宗介に気に入られ、コウスケの結婚を認めたのだ。


いくら雅代でも父の命には逆らえない。


歯ぎしりをしながら、認めるしかなかった。


結婚式は豪華なモノであった。


そして、コウスケは高揚していた。


これから手に入れたオモチャであるアオイを、どう従順に矯正しようか…と。


そんな高揚を抑えて、結婚式に臨み、新婚旅行に出た。


そこから、コウスケは本性を現す事となる。


力でアオイをねじ伏せ、暴言でアオイを縛る。


そうやって、アオイを従順な妻に矯正していった。


本当は、結婚を機に屋敷を出ようとしていたが、雅代の反対にあった。


これだけは譲れない…と。


結局、根に負けて同居が決定した。


同居して、アオイが雅代によって酷い目に遭っていると知ってはいたが放っておいた。


アオイがどうなろうと関係ない。


自分に従順な妻であるならば問題は無い。


それ以外に関心は無かった。


だが、それを啓介が放っておかなかった。


何とアオイと交流を始めたのだ。


気に入らない…コウスケは啓介に手を挙げる。


しばらくすると、アオイの方から啓介に接触する事を拒否した。


それでいい…俺に従順な妻なのだから…とコウスケは満足した。


だが、それも長くは続かない。


アオイが心労で倒れ病院に運ばれたのだ。


その時に、体の痣を病院関係者に見られてしまったのだ。


だが、コウスケと雅代は、それを啓介のせいにして難を逃れた。


更生施設で預かると言う申し出を、自分たちで更生させるからと断った。


そして、アオイが帰ってくると、二度とこんな醜態を晒すなと言い聞かせた。


数年が経っても子供が出来ない事に周囲からは、何かと言われるようになった。


特に雅代は、それを理由にアオイとの離婚を迫ってくる程だ。


アオイは検査してないから分からないが、少なくとも自分には子供は望めない。


それを知っているのは、父が懇意にしている病院の医師だけだ。


それを口にしないのは、自身のプライド故だった。


子供が出来ない体…そう知られれば、自分は後継者候補から外されるだろう。


実際、佑介と亜由美夫婦の間には2人の子宝が恵まれている。


1人は男子という事もあり、佑介の方が後継者候補としては強いのだ。


だからといって、諦める訳にはいかない。


雅代の悲願だからじゃ無い。


自分こそが、トップに相応しい。


社員は全員、自分に傅くべきだと本気で思っているのだ。


誰も彼も、自分の奴隷であるべきなのだと考えている。


そんな恐ろしい男になっていた。


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