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君と僕との秘密の日々  作者: 如月まりあ
13/59

発覚

そこにタイミングよく、カナメのスマホが鳴った。


慌てて電話に出る。


「あ、シン…何?…え?そこまで来てる?」


瞬間、カナメとアオイの顔色が変わる。


「ちょ…待てよ。今、ちょっと…え?…いや、そんなんじゃねぇって…今日は…」


【ぴんぽーん!】


玄関のベルが鳴った。


そして…


「おぉーい」


と、ドアを叩くシン。


カナメは、電話を切ってから、アオイの腕を取り、奥の部屋に連れていく。


そして押し入れを開けて


「ちょっと狭いけど我慢して」


と、言ってアオイを押し入れに入れる。


【ドン!ドン!】


その間にも、シンはドアを叩いていた。


カナメは、辺りを見渡してから、脱衣場にある服を洗濯機に放り込んだ。そして、玄関にある靴を下駄箱に放り込む。


「おい、カナメぇ」


シンが、ドアを叩きながら叫んでいる。


「今、開けるから」


カナメは、一度深呼吸をしてから、鍵を開けた。


「よ!」


愛想よく笑う親友


「おはよ…」


カナメは、いつも通り接する努力はした。


が…やはり、そわそわしている感じではあるので


「お前…何かあった?」


シンが問いかけた。


「いや、別に…」


カナメは、平静を装うのが精一杯だった。


「ふぅん…」


納得してない様子だが、とりあえず


「中に入っていいか?」


とカナメに聞く。


「いいけど」


そう答えて、シンを家の中へと招き入れる。


シンは、何気に家の中をチェックする。


【何かを隠している】


カナメとシンは、幼稚園からの付き合い。言わば悪友みたいなもの。


長年、親友として付き合ってきた彼のカンは、そう告げていた。


(何を隠してやがる)


チラリ、チラリと家の中を見ていくと、流しには洗いかけのカップや皿がある。


(ん?)


よく見ると、二人分に見える。


だが、カナメに悟られないように見ていたので、確認は出来なかった。


シンは、いつも自分がしているように座布団の上に座った。


(あれ?)


そこでも、何かに気付く。


何となくだが、この部屋の何かが違う。


家具の配置とか、そういうのではない。


何かが違っている。


「シン、コーヒーでいいか?」


カナメが台所に立って聞く。


「おぅ、お構い無く」


いつものように、シンは答える。


【ガチャガチャ】


台所でカナメが、コーヒーメーカーにセットをした後に、流しにあるモノを片付けだした。


シンは、それをジッと見つめる。


シンの視線に気付いたカナメは手を止めて


「な、なんだよ?」


かなり引いている。


「いや、別に…」


そう答えた後に、シンは立ち上がり、隣の部屋へと入っていく。


「!!」


カナメは、気が気じゃなかった。


(ど、どうしたら…見つけないでくれ、シン)


カナメは祈った。


シンは、部屋の中を見渡す。


やはり、家具とかの変化はない。しかし、何かが違っていた。


(うーん、喉のとこまで出てきてる感じなんだけどな…)


腕を組んでからベッドを見る。


(?)


明らかに何かが違う。


「あ…」


小さく呟いた。


布団があまり乱れてない事に気付く。


カナメは、寝相が悪い訳ではないのだが、布団はかなり乱れている。


だが、この布団は少し乱れているだけで、どちらかと言えばキレイな状態だった。


【誰かが、ここにいた?】


そういう仮説を立てた瞬間に、引っ掛かっていたモノが何か気付く。


【匂い】だった。


そう、いつもと違う。


全く違う訳ではないのだが、微かに違っていた。


(これは…)


シンは、確信した。


【ここには、今まで誰かがいた】事を。


(だが、一体…誰なんだ?)


そこで、疑問に思った。


カナメに、恋人が出来たのであれば、それを親友である自分に隠す必要はない。


何でも言い合える仲なのだから。


第一に、カナメには、どうしても諦めきれない想いがあるはずだ。


自分の恋人の親友【宮里アオイ】が…


結婚した、と聞いても断ち切れなかった想いのはず。


だからと言って…他の誰かを愛する可能性は捨てきれない。


宮里アオイへの想いを断ち切れる程の女性が、カナメの前に現れたとしても不思議ではない。


しかし…何故、カナメは隠そうとしているのだろうか?


恋人が、お泊まりしても誰に遠慮する事はないのだ。


(まさか…人妻?)


その瞬間に、シンの脳裏に一人の女性が浮かび上がる。


そう…宮里アオイ


彼女は、現在行方不明になっている。


シンは、彼女の捜索の手伝いをカナメに依頼に来た。


カナメなら、きっと探しに行くだろうと踏んで。


(宮里なら、カナメが放っておけずに家に連れ込んだとしても、納得がいく)


シンの中で、推察は確信に変わっていた。


(あの動揺ぶり、それに出てくるまでに時間がかかり過ぎた事を考えると…まだこの中にいる)


シンの視界に押し入れが入る。


(あそこ…か)


だが、シンはそのままにしてもといた部屋に戻った。


親友であるカナメの口から真実を聞きたかったからだ。


再び、座布団に座ると同時にカナメがカップを持ってやってきた。


動揺を必死に隠そうとしているが、付き合いの長いシンには、それが分かる。


カップを置いた後、カナメが座る。


「で?何?」


カナメが聞く。


シンは、ジッとカナメを見た後に視線を外して


「電話でも言っただろ?宮里アオイが行方不明だって。探すの手伝ってもらおうと思ってさ」


言いながら、カナメの様子を伺う。


やはり、視線が一瞬だけ隣の部屋に移った。


「そっか…でも…今日は…」


カナメは、視線を泳がせながら答える。


シンは、ムッときたが、それを抑えて


「リカがな…相当心配してんだよ。昨日は寝てないみたいなんだ」


それは、家の中にいるであろうアオイにも聞こえるように言う。


「宮里が家を飛び出した後に、旦那が家にやって来たんだよ。【アオイがそこにいないか?】ってな。もちろん、リカはいないって答えた。本当にいないんだから。だが…向こうは信じてなかったらしい。SPらしき人間と家中探しまくった。いないと分かると、去り際に【もし見つけたら知らせるように】とヤツの連絡先を渡して帰りながった。一言も詫びもなしにだ」


そこで、シンは


【バン!】


とテーブルを叩いた。


その音は、押し入れの中にいたアオイにも聞こえた。


(リカ…)


親友を巻き込み苦しめている事に怒りを感じグッと手を握る。


ここで出ていくべきであろう、と思う。


そして、家に…【日高家】に帰るべきなのだと。


だが…足がすくんで、動けなかった。


シンの話は続いていた。


「そして、SPの何人かをリカの家の監視に回してきたんだ。お陰で、リカは身動きが取れねぇ」


悔しそうに顔を歪める。


カナメは、迷っていた。


親友であるシンに、アオイがここにいる事を告げるべきなのか…


だが、そうしたら、シンはアオイを連れて行くだろう。


恋人であるリカを救う為に…


そして、アオイは再び地獄のような日々が始まる。


どうするべきか…悩んでいた。


それは、シンにも伝わっていた。


シンもリカから、アオイが嫁ぎ先で、どういう思いをしているかは聞いている。


リカ自身がアオイと会う事は、滅多にない。


あったとしても、日高家の監視の元でしか会う事はなかった。


それでリカは日高家で働いているメイドを丸め込んで、その話を聞いた。


その話をしながら、リカは泣いていた。親友の為に心を痛めて。


同情の余地はあるのだ。


しかし…このままでは、リカが精神的にマイってしまう。


シンは、賭けた。


そして…


【がら…】


という音と同時に、押し入れからアオイが出てきた。


アオイの姿を確認して


「やっぱり、そこにいたのか」


シンは呟いた。


「シン…ごめん」


カナメが頭を下げて謝る。


シンは、首を横に振り


「いや、いいよ。それより、どうして宮里がここにいるんだ?」


カナメに疑問をぶつける。


カナメは、少し迷っていたが


「昨日、バイト先で…みかけたんだ。大雨の中に傘もささずに歩いている宮里を。だから…」


「もういい、分かった」


シンは、そこで言葉を切らせた。そして、アオイを見て


「で?宮里はどうする?」


アオイに問いかける。


アオイは、グッと拳を握り締めて


「もちろん…家に戻ります。だけど、一人で戻るわ。誰かと一緒にいるのを日高の者に見られたら、その人に迷惑がかかるから」


ハッキリと言った。


(そう、最初からこうしたらよかったのよ。こうしなければならなかったの)


アオイは、決意を固めた。


シンは、それをジッと見つめてから


「あと、数日、ここにいるといい」


意外な言葉だった。


「え?」


カナメもアオイも、驚いていた。


シンは知っていた。


この二人が、互いに想い合っている事を。


それも、ずいぶん昔から。


互いに想いを伝えないまま、アオイは意に染まぬ結婚をしてしまった。


だから、もしかしたら、これは神様がくれたチャンスなのかもしれない。


この二人の想いが通じ合う、最後のチャンスかもしれない。


だったら、親友として想いを伝えさせてあげたい。


そう思ったのだ。


たぶん、リカも同じ気持ちになると思う。


アオイの結婚の時に、リカがどれだけ悔しがっていたのか…シンは知っているから。


シンは立ち上がり


「とりあえず、俺は、宮里を探すフリをして、リカに無事を伝える」


「でも…」


アオイは、首を横に振った。


シンは、アオイの肩を叩いて


「少し…ゆっくりするといい」


と言った。


そして、カナメに寄り、耳元で


「自分の想いを、ぶつけるんだぞ」


そう囁いてから


「じゃあ、また」


と、玄関に向かい出ていく。


残された二人は、ただ呆然と立ち尽くすだけだった。


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