#23 セルリア・ハート
一か月とちょっとぶりに更新ですね…。すみません。
~演習場~
=セルリア・ハート=
セルリアは目の前に立つ圧倒的な力を纏う男の子から目が離せなかった。その男子に力の源を聞きたくなった。なぜ、そんなにも他の者とは違うのだろうか。なぜ、この男はここまで余裕を見せていられるのだろうかと。
彼女は戦闘力、学力の面で他の者に劣ることのないように育てられてきた。本来なら間違いなく学園の首席であっただろう。しかしながら、今目の前に立つ男はそのどれを取っても、今のセルリアには勝てる要素がなかった。現にセルリアは二位であり、目の前の男が一位である。
いや、一つだけあるにはある。基本的な属性を極めたものが手に入れる資格を持つことのできる派生属性。彼女が唯一派生属性まで極めることのできた水魔法。水属性の派生は氷属性である。似たもののようでありながら、不思議と性質の違うそれは威力汎用性のどれをとっても進化系といえる魔法であった。
事実、派生魔法である氷属性魔法を使用したセルリアに勝てた競争相手はこれまで居なかった。
それだけに、知ってか知らずかセルリアに対して臆する様子を見せないこの男が気になって仕方ないのであった。
=レオ・マーブル=
レオは、セルリアの放つ異様な雰囲気を疑問に思っていた。まるで、蛇が獲物を捕らえるときの様子見のようなその雰囲気が、レオには不思議で仕方なかった。
そもそも、学校でいきなり声をかけ、戦おうなどという女子に碌な奴がいるとは思えないというのが、レオの意見だった。
(せめて相手の力量位は見るだろうに…。)
自分でも、強い方だと思っているからこそ思ったことであった。
☆
お互いがこんなことを考えながら、相手を見据えている。
「「始め。」」
合図があった。
セルリアが警戒しながらも口を開く。
「あなたは、剣を使うのかしら?」
レオは相手の動きを見ながら答える。
「剣がメインではありますが、魔法もある程度は使えます。」
セルリアは、相手の動きを見て一言。
「その体格で剣を振ることができて、なおかつ魔法も使う事ができると…。いったい何者かしら?」
人間かどうかを疑うかのようなその言葉に、苦笑いを浮かべながらレオは答える。
「何者と言われましても困りますが、ただの人間ですよ。そろそろ始めますか?剣でも、魔法でもどちらでもお好きな方で。」
セルリアはその上からの物言いに顔をしかめつつ、それでいて、明らかに自分よりも上の実力を感じ納得し
「私はどちらも使います。戦闘力は見た目では判断つかないようですから、胸を借りるつもりでいかせていただきますわ!」
セルリアが先に動いた。腰から下げた剣を抜き、レオとの距離を詰める。
レオに対して、刺突や薙ぎ払い、足払いなどの技が繰り広げられるが、そのどれもがさらりと躱される。
セルリアは、すでに戦意を喪失しそうなほどの実力差を感じていた。自分の剣技が、剣によって捌かれることすらなく、ただ、その生身の体の状態で避けられているのだ。もっとも、レオはすでに【身体術】Ⅲから進化した【身体術】Ⅴを発動しているため、当然ともいえる。しかし、魔法を発動したことさえ感じさせないレオの高度な魔力操作は、セルリアにも当然魔法の発動を感知させていない。セルリアは、あたかもこの身体能力がレオの素の能力のように思えているのだ。
セルリアは、レオから距離を取る。接近戦では勝てないと悟ったセルリア。せめて魔法戦ではと考え、水魔法を発動する。レオの身のこなしの軽さをどうにか阻害したいと考えたセルリアは、設置型の魔法を発動する。
「【水泡弾】」
彼女がそう呟くと、その演習場の周りには水泡のようなものが浮かび始める。この魔法の効果は、触れると弾ける水の泡を発生せるだけだ。しかしながら、その弾けたときの威力は軽く体が弾き飛ばされるほどのものだ。つまり、これでレオはこの水泡を避けつつ攻撃する必要が出てきたわけだ。
「【水閃】」
これは圧縮された水が細く発射され、相手を貫くほどの威力に達する魔法だ。もっとも、動きを制限されようとも、レオには当たらない。
自分の使える魔法の中でも、特に上位のものを使わなくては勝てないと踏んだセルリア。ついに氷属性魔法を発動させる。
「【氷槍】」
氷属性の魔法を使われた後も、レオは表情を何一つ変えない。しかし、彼は腕を右に伸ばし、指パッチンを一つ。彼の右手には剣が握られていた。そして、飛来する氷槍を剣舞のごとく打ち砕いていく。彼には傷一つ与えることはできていなかった。
セルリアは再び魔法を発動させようとする。きっと、魔力残量的にもこれが最後なのではないだろうか。そう感じながらも、最後の魔力を練り上げる。
「【氷山之一角】」
その一言、その詠唱と魔法陣の顕現の後、強烈な振動が演習場を襲う。その演習場の地面を割ったかのように巨大な氷山が現れる。レオの真下から貫くように。
レオは冷静に飛び上がり、再び指をパチンと鳴らす。その手に握った剣は炎を纏っていた。その剣を両手で握り、レオもまた呟くように一言。
「【対物閃斬】」
レオは氷を魔法ではなく物質と認識することによって、その氷山を切断する。炎を纏わすことによって、氷は溶けやすくなる。しかし、溶かすことによって発生する水は炎に対する特効を持つため、炎は弱まる。しかし、その瞬間的に必要な熱量には十分すぎるほどであったため、その氷山はいともたやすく切られているように見える。
結果として、レオは相変わらず無傷であった。
セルリアは、自分の切れる手札がもうなくなってしまったため、あっさりと降参したのだった。
「「そこまで。レオの勝利!」」
こうして、勝敗は決まったのだった。
まぁ、この後少し会話挟んで、学園のいろいろなイベントの方にいきます。
次回は1か月以内に…頑張ります…。




