↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽王と幼女様に礼拝を  作者: 高坂アニ
1章 王の再誕
4/5

激動の森 其の二

「遅いよ、王様」


「悪いな。だがもう心配はない。」


「勝ちに行くぞ。」


「あいあいキャプテン」


ソルの作戦はだいぶ博打だ。

しかし、同時に私たちの勝利条件をよく理解してる。

この作戦を実行するならソルの補助はほぼ受けられなくなる。

それでも、やるしかないか。


「そろそろ退場してもらおうか!部分チェンジ!」


部分チェンジ、ソルとの交代が負担の高い行動と知った時に思いついたソルとの交代を体の一部だけにすることで、軽い負担で高い火力の物理ダメージを与えられる。


「なっ!」


「ヒット!」


ソルが足を使うとそれだけで動きが段違いだ。

私とは比べ物にならない速さで詰め、横腹を蹴り飛ばした。

相手の体は、その軌道に沿うままに吹っ飛び木を何本も折りながらついに止まった。


「痛そー…やり過ぎじゃ無い?」


「いや、どうやら此処からが本番らしい」


「……この力を使うとほぼ確実に心中になっちまうんだよな」


彼の服がミチミチと音を立てながら弾け飛ぶ。

私の蹴りに爆破なんて器用なものはない。

その身体は体毛に覆われており、首が痛くなるほど大きくもなっていく。

これは…獣化だ。亜人種の獣人、それも虎の一族か。


「名乗らせて貰おう。」


「迷いの堕鬼征伐隊隊長。化け物狩りのリネア・レクタ」


「迷いの森の住人。血族の魔術師セト・オルクス」


「「この命尽きるまで、勝負!」」



「オド・スピア!」


血の槍。大きく模ったそれはただ直線的に投げるだけの不良品にも思える。しかし、その真価は!


「爆ぜろ!」


焼ける血で作られたデバフの槍。

しかし、きっと当たらない。そんな確信がある。


「血族の魔術じゃタネは割れてんだよ!」



やっぱり、大きく離れて回避するか。

魔術書に書かれてる技は全部知られてる。

魔術書を使う限り絶対に勝てない。

なら、どうするか?そんなの決まってる。


「魔術書は使わない」


魔術書を閉じ、佇む。

あの巨体相手に補助なしで勝てるのだろうか。

今から私は血族の魔術に新たな技を作り出す。


「いい目じゃねえか。人なら仲良くなれたかもな!」


「なら仲良くなれるね!」


空を影にするほどの巨大な腕が私めがけて振り下ろされる。

避けなければ死ぬ。が、受けてみたい。

新しい魔術を作り出したのだから、試してみたい。


「オド・へロス!」


血を面に滞留させて流れ続けることで衝撃を逃す防御魔術。

上手くいったけど、凹んでる…。強度がまだまだお粗末みたい。


「クソみたいに素晴らしい才能の持ち主だな…さっきまで魔術書を使ってたとは思えない」


「どうも!そろそろ時間がまずいんじゃない?」


「まだ引きつけれるさ」


遠くから巨群の足音がやんわりと聞こえてくる。

こっちに向かってきてる音じゃない。

絶好のタイミングまで周囲を回らせてるな。

随分仲間使いが荒いな。


「まだ楽しめそうだね」


「ああ!」


防御はできた。次は攻撃だ。

想像しろ。あいつを倒すことができるような魔術を。


「獣化は強大で攻防一体だ。無理そうなら俺に任せろ」


「大丈夫。試したいことまだまだあるし」


「血脈機動・Δ《けつみゃくきどうデルタ》」


「オド・へロス・モード攻」


血脈機動・Δ。

自分の血液を操作して動きを活性化させる。

擬似的にソルと同レベルの動きだってできる!


オド・へロス・モード攻。

さっきの盾を腕に纏った血液装甲。

殴る時は血液は固まり、防御の際は流れ受け流す。

ソルの攻防一体って言葉から思いつきの魔術。

この血液を消費してオド・マグナも放てる。

ソルとは違う。ただ殴るだけじゃない私専用の近接スタイル。


「さぁ、殴り合おうか」


「羨ましいもんだ。魔術に好かれてる」


ほぼ同時に地を蹴り、木から木へ足場から足場へと飛び回る。一瞬でも見失えばそれだけで命取り。

先に隙を見せた方が負ける。


相手の位置を見極めろ。

一瞬、私が木に隠れる一瞬。その瞬間に勝負が決まる。

今だ!


「オドの力場を喰らえ!」


──木に隠れ、視界から外れた。

タイミングも距離も全て完璧だったと思う。

ミスがあったとしたら、ほんの少し私の位置が高かったことで、反応の猶予がちょっぴり伸びたことぐらい。


「この勝負俺の勝ちだ。」


「パリング・スペル!」


私の拳は完全に弾かれ、無防備になった腹に拳がクリーンヒットする。

防御の隙もない、完璧な致命を伴う攻撃だ。


「がっ、ごほっ…げほっ。ぐはっ……」


受け身もできないまま地面に叩きつけられ、身体中激痛で動くこともままならない。

血が口から流れてる。お腹は…裂けてはないが、確実に致命傷だ。意識を保つのでやっとの思い。


ソルの作戦Aは達成できそうにないかな。


「負けちゃった?私」


「パリング・スペルがなきゃ、俺の負けだった。」


「攻撃の高さがもう少し下なら俺の負けだった。」


「あの血の装甲が全身に巡らされていたら俺の負けだった」


「なんにせよ。運の勝ちだ。あとは猛進の巨群に任せるとしよう」


リネアの体が消えていく。

あれが街へ逃げる手段ってことか。

あーあ、奪えなかった。倒せなかった。

負けちゃったかぁ……。


じゃぁ、作戦Bに移行しないと。


「この森ともバイバイだね。」


「準備はできたぞ。」


「じゃぁ、行こっか。リネアの行った街へ」


ソルの作戦はこうだ。

作戦Aは単純、勝ったら街に行くアイテムを奪って逃げる。

作戦Bは、もし負けたらリネアがアイテムを使うのを確認し、魔素の残滓から街の座標を確認。

ソルが転移魔法を展開するというもの。

転移魔法が使えるなら最初からそれで逃げれば良いと思うかもしれないが…。

座標次第では地面や壁に埋まる可能性もあるし、魔獣の群れの中心に出ることになるかもしれない。

それに魔素の残滓で居場所は簡単に特定されてしまう。

だから敵がいなくなった後じゃなきゃいけなかった。

猛進の巨群を回避するために転移魔法を瞬時に発動する必要もあった。

そのせいでソルは戦闘に参加ができず…負けちゃった。


「セト、頑張ったな」


「これからは街で生活かぁ。」


「猛進の巨群相手じゃ、この森は放棄するしかない」


体の周りに魔法陣が展開される。

あいつらと全く同じ場所には飛ばないように位置をずらしてくれてはいるらしい。

それでも気休め程度といったところ。

また会う可能性は大いにあり得る。その時は…誤魔化せることを祈ろうかな。


──木々に覆われた森の姿も全て、転移魔法の光によって視界から遮られる。

これからの生活…どうしようかなぁ。

そんな一抹の不安と久しぶりの街での生活へのワクワクを抱えながら、ゆっくりと目を閉じて転移されるのを待つのであった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。