第9話
第1章:中学生社長の華麗なる日常と「大人の罠」
一、 桜蔭中学の制服と、億単位のボードルーム
平成25年(2013年)初秋。
私は東京都文京区にある超名門・桜蔭中学校の濃紺のセーラー服に身を包み、中学1年生としての学校生活を満喫していた。
「里穂ちゃん、次の古典の予習、ノート見せてくれない?」
「いいよ、どうぞ!」
休み時間にはクラスメイトの女子たちとキャッキャと教科書を広げ、放課後は購買のメロンパンを巡って大騒ぎする。
周囲の目には、どこにだにいる「勉強ができて少しだけテレビに出ているお上品な中学生女子」にしか映っていないはずだ。
しかし――放課後、一歩学校の門を出て、渋谷の自社ビル【ODAビル】の最上階(7階)に足を踏み入れるやいなや、私の「スイッチ」はガチャンと切り替わる。
「社長、本日の米国市場のプレオープンデータです。アマゾンが物流インフラへの大型投資を発表しました」
秘書として雇われた優秀な20代の女性スタッフが、黒いタブレットを差し出す。
「ご苦労様。アマゾンの自社物流への先行投資は、将来のAWS事業と並ぶ最大のキャッシュカウ(金の生る木)になるわ。計画通り、当社のポートフォリオにおけるAmazon株のウェイトをさらに5%引き上げなさい」
「かしこまりました!」
(ふふふ……これぞ【中学生と大富豪の二刀流ライフ】よ!)
学校では古文の助動詞を覚え、放課後はグローバル経済のトレンドをハックする。
私の頭の中は常に、次世代の投資先と、税務対策、そして「いかにして無駄な労働をせずに不労所得を増やし続けるか」という究極の怠け者(社畜の反動)的思考回路で満ち満ちていた。
二、 経済界の老害からの挑戦状
だが、12歳(中学1年生)にして総資産100億円を誇り、メディアの表紙を飾り続ける私の存在は、日本の保守的な財界や一部の古臭い経営者たちにとって、どうにも目障りな存在だったらしい。
ある日の夕方。
日本の大手経済誌『財界ニッポン』の主催する若手経営者向けクローズド・カンファレンスに、私は特別ゲスト(最年少招待者)として招かれていた。
赤坂の高級ホテルの大宴会場。
周りは全員、40代から60代の「スーツを着た一癖も二癖もあるおじ様(経営者)たち」ばかり。
「おい、聞いたか? 今日の特別ゲストの『ODAアセット』の社長って……まだ中学生のガキらしいぞ」
「親の七光りか、あるいはマスコミが作ったハリボテの神童だろ。大人のビジネスの何が分かるってんだか」
聞こえよがしに囁く老害……おっと、先輩経営者たちの冷ややかな視線。
私はアイスウーロン茶を上品にグラスから一口飲み、フッと鼻で笑った。
(ふん……新参者をマウントで叩こうとするこの昭和の社風、ブラック企業のクソ上司共と全く同じ構造ね。こういう連中は、数字とロジックの暴力で完膚なきまでに叩きのめすのが一番の特効薬よ!)
『里穂。大人の感情的な嫉妬に付き合う必要はありません。ですが、我が社のブランド価値を高める良い機会です。彼らのビジネスモデルの致命的な欠陥を指摘し、格の違いを見せつけなさい』
脳内でお姑さんが、最高にサディスティックなゴーサインを出してきた。
三、 札束とロジックで老害を完全沈黙させる夜
パネルディスカッションの壇上。
マイクを握った大御所アパレル企業会長(60代・ハゲ頭)が、私を値踏みするような卑劣な笑みを浮かべて言った。
「小田社長。君の会社は株式や不動産、あるいはハリウッドの権利収入で儲けているようだがね……そんな『実体のないマネーゲーム』ばかりやっていて、日本のモノづくりの何が分かるのかね? 企業とは、汗を流して工場で汗水たらして製品を作ってナンボの代物だよ」
会場のあちこちから「そうだそうだ」「若い子は机上の空論だからねぇ」と、薄ら笑いの同調圧力が広がる。
私はすっと立ち上がり、マイクを引き寄せた。
「会長、素晴らしいご意見ですね」
私の澄んだ、しかしホテルの隅々まで響き渡るクリアな少女の声に、会場がふっと静まり返った。
「会長の会社は、日本全国に自社工場を持ち、何千人もの従業員を抱え、毎日『汗水たらして』アパレル製品を作っておられる。……ですが、直近の決算短信を拝見しましたが、海外のファストファッションの台頭と在庫の山で、営業利益率はわずか【1.2%】。本業の利益よりも、過去に買った不動産の売却益でようやく赤字を補填している状態ではありませんか?」
「……っ!!?」
アパレル会長の顔が、一瞬で真っ青から真っ赤に変化した。企業の秘密である決算の急所を、12歳の少女に公開処刑されたのだから無理もない。
「私がやっているのはマネーゲームではありません。『資本の最適配置』です。時代遅れの過剰設備と人海戦術にしがみつき、利益率1%の泥舟を漕ぎ続けることこそ、経営者としての怠慢ではありませんか? 私が投資している企業は、すべて高いROE(自己資本利益率)と圧倒的なソフトウェアの優位性を持っています。――会長、汗を流す場所を間違えていませんか?」
「き……貴様……ガキのくせに生意気な……!!」
アパレル会長がテーブルを叩いて立ち上がったが、会場の他の経営者たちは冷や汗を流しながら、私の圧倒的なデータ分析力と正論にただただ圧倒され、誰も彼を庇わなかった。
『完璧なカウンターです、里穂。オールドエコノミーの亡霊を一刀両断しましたね。これで我が社の評価は、日本の投資家層の間でさらに神格化されました』
(ふん、当然よ! 私を誰だと思ってるの。前世でブラック企業の理不尽な経営方針に耐え続けた、最強の社畜上がりの投資家よ!)
会場の隅で、私のスピーチを聞いていた外資系ファンドの日本代表の男性が、目を輝かせながら深く拍手を送ってきたのだった。
第2章:2017年ビットコイン狂乱のメガバブルと「5兆円計画」
一、 時代は2017年:1BTC=2万ドルの衝撃
時は流れ、平成29年(2017年)。
私は中学校3年生(15歳)になっていた。
世間は空前の「暗号資産(仮想通貨)ブーム」に狂喜乱舞していた。
テレビをつければ毎日のようにビットコインのニュースが流れ、街のあちこちで「億り人」と呼ばれる成金たちが高級車を乗り回す姿が話題になっていた。
2009年の黎明期に、1枚数円~数十円で買い集め、自社サーバーでマイニングし続けてきた我が【合同会社ODAアセットマネジメント】の保有する【50万BTC】。
そのビットコインの価格が、ついに歴史的な高値――【1BTC=約2万ドル(約200万円~240万円)】を突破したのだ!!
渋谷・ODAビル7階の社長室。
私は巨大なマルチモニターのチャート画面を見つめながら、手に持ったアイスティーのストローを噛み締めていた。
(ついに来た……! 2017年の年末メガバブル……!!)
『里穂。計算上の保有資産価値を算定します』
お姑さんの声が、かつてないほど厳かに、そして興奮気味に響いた。
『50万BTC × 2万ドル = 【100億ドル(約1兆2,000億円)】』
「いち……! いちちょう……にせんおくえん…………!!」
私は思わず、椅子から転げ落ちそうになった。
1兆2000億円。
もはや個人の資産レベルを超越している。日本国内の長者番付のトップ争いに余裕で食い込み、世界の富豪ランキングの扉を叩くほどの、宇宙的規模の莫大な富が、我が社のコールドウォレットに眠っているのだ。
「お母さん……! お父さん……!! 大変なことになったわよ……!!」
夕食の買い出しから帰ってきたお母さんに、私は震える手でウォレットの評価額画面を見せた。
お母さんは、リビングの床に買い物袋を盛大にブチまけた。
「いち……じゅう……ひゃく……千……万……億……兆……??」
お母さんは白目をむき、そのままフリーズして微動だにしなくなった。
二、 史上最大の「部分利益確定(利食い)」作戦
しかし、ここで浮かれるほど、私の社畜脳(=極度のリスク管理脳)は甘くなかった。
(お姑さん! 2017年末のこの狂熱……! 歴史のデータ通りなら、この後すさまじいバブル崩壊(暗号資産の冬の時代)がやってくるわね!)
『その通りです。市場が「ビットコインは永遠に上がり続ける」と狂喜している時こそ、プロの投資家が撤退するタイミングです。保有する50万BTCのうち、【30万BTC】を現在の最高値圏で段階的に利益確定(売却)し、完全に「現金化(米ドルおよび日本円化)」しなさい』
(30万BTCを現金化……!? 残りの20万BTCはどうするの?)
『残りの20万BTCは、次の1,000万円突破(2020年代のメガバブル)まで、再び完全オフラインの物理金庫に永久凍結(HODL)します』
「よし……! 一気に出しなさい、大口売りの注文を!」
2017年12月。
我がODAアセットマネジメントは、世界中の暗号資産取引所を利用し、30万BTCの巨大な売り注文を分散して執行した。
その結果――
我が社の銀行口座には、税金を綺麗に納めた後でも、実に【約6,000億円の純現金】が文字通り「爆誕」することになったのだった!!
「6,000億円……!」
税理士の佐藤先生は、もはや恐怖ですすり泣いていた。
「小田役員……もう我が社は、日本の一ベンチャー企業ではありません。三井住友や三菱UFJをも凌駕する勢いの、世界最強の『超巨大プライベート・エクイティ・ファンド』です……!」
第3章:高校進学と「世界買収計画」の始まり
一、 慶應義塾女子高等学校への合格と「最強の隠れ蓑」
平成30年(2018年)春。
私は中学を卒業し、都内の超名門・慶應義塾女子高等学校へと進学した(もちろん余裕のトップ合格である)。
制服のブレザーを着た15歳の私。
「里穂ちゃん、高校でもよろしくね!」
「うん、よろしく!」
クラスメイトたちとキャンパスを歩きながら、私は心の中でほくそ笑んでいた。
(慶應の女子高……! 自由な校風と、日本中のエリート財界人・政治家の子供たちが集まる最高のネットワーク……! ここを私の『最強の隠れ蓑』として、世界を舞台にした次の巨大プロジェクトを仕掛けるのよ!)
『里穂。高校生としての学業を疎かにしてはなりませんよ。世界史と経済学の単位はトップを維持しなさい』
(分かってるわよお姑さん! 私はいつでも優等生よ!)
二、 ハワイの丘の上の「黄金豪邸」建設プロジェクト
手元に爆誕した「6,000億円の現金」と「毎月600万円以上の不労所得」。
これだけの富があれば、前世からの悲願である「あれ」を現実にする時が来ている。
「お母さん、お父さん。私、ハワイに行きます」
ある日の夕食後、リビングで私は両親に宣言した。
「は、ハワイ? また映画の撮影?」
「ううん。違うよ。私たちが将来住むための……ううん、【世界最高峰のプライベート・リゾート豪邸】をハワイのオアフ島・カイルアの丘の上に建てるの。土地の買収と建築デザインの契約はすでに完了してるわ」
「は……? ハワイに豪邸……?」
お父さんは、ビールの缶を落としてしまった。
数ヶ月後。
ハワイ・オアフ島の東海岸、青く輝く全米No.1ビーチ「ラニカイ・ビーチ」を見下ろす緑豊かな丘の上。
そこに完成したのが、我が小田家の別荘――通称【ODAパレス(オダ・パレス)】であった。
【ODAパレスの仕様】
・敷地面積:約5,000坪(丘の上の要塞級プライベート敷地)
・建物:白亜のモダンコンクリート&ガラス張りの3階建て豪邸
・設備:インフィニティプール、専用ヘリポート、地下ワインセラー、そして全天候型セキュリティ要塞
・特記事項:右手のテラスには、純金箔でコーティングされた「特製・金の扇子」が飾られている。
完成したODAパレスのテラスに立ち、潮風に制服のスカートをなびかせながら、私は海を眺めていた。
(ふふふ……最高……! 最高すぎるわ……!)
前世、ハワイ旅行のパンフレットを指をくわえて眺め、いつかパック旅行で行けたらいいなと夢見ていた限界社畜の私。
それが、15歳にしてハワイの丘の上に5,000坪の要塞豪邸を所有し、莫大なドル資産を自由自在に転がす世界的大富豪へと成り上がったのだ。
『里穂。あまり黄昏れていないでください。明日には東京に戻り、シリコンバレーの新興AI企業へのシリーズB出資の最終契約が待っていますよ』
脳内でお姑さんが、容赦なく現実のスケジュールを叩きつけてくる。
「分かってますよ、お姑さん! 私のグローバル征服劇は、まだまだこれからなんだから!」
第4章:15歳、世界経済の黒幕へ
一、 シリコンバレーからの黒船オファー
高校1年の夏休み。
私は単身でアメリカ・カリフォルニア州シリコンバレーに飛んでいた。
パロアルトにある最先端AI研究ベンチャー企業のガラス張りの会議室。
そこに座っていたのは、のちに世界を震撼させることになる「生成AI」の初期開発チームの天才科学者たちであった。
「オダ様……! 貴方が、我が社のシリーズBラウンドで【5,000万ドル(約55億円)】の単独リード・インベスター(主幹事投資家)を引き受けてくださるプライベート・エクイティのオーナーですか!?」
CEOの若い天才プログラマーが、信じられないものを見る目で私(15歳の制服姿の少女)を見つめていた。
私は足を組み、上品に微笑んだ。
「ええ。貴社が開発している大規模言語モデル(LLM)のポテンシャルを高く評価しています。ただし条件があります。我が社【ODAアセットマネジメント】が、貴社の全株式の15%を保有し、取締役会へのオブザーバー参加権を得ること。――いかがですか?」
天才科学者たちは顔を見合わせた。
資金難に喘いでいた彼らにとって、55億円の巨大資本と、金融市場の圧倒的な先見性を持つ謎の投資家の参入は、まさに救いの神であった。
「……契約しましょう! オダ様、貴方は天才だ!」
(ふふふ……狙い通りよ!)
(今(2018年)、生成AIの萌芽期にシード・シリーズBで大株主になっておけば、10年後には数千倍のバリューを生み出す【世界最大のAIインフラの黒幕】になれるんだから……!)
二、 世界最強の「金融要塞」の完成
東京に戻った私を待っていたのは、さらに巨大化した経済帝国であった。
渋谷のODAビル最上階。
私のデスクの上のモニターには、全世界に張り巡らされた投資ポートフォリオの数値がリアルタイムで明滅していた。
Plaintext
【合同会社ODAアセットマネジメント・総合評価(2018年夏時点)】
1. 現金・預金(ドル/円):約6,000億円
2. 不動産(渋谷自社ビル、赤坂、豊洲、ハワイ・オアフ島豪邸等):約300億円
3. 暗号資産(残りの20万BTC+アルトコイン):評価額数十億~数百億円(将来数兆円確定)
4. グローバル株式(Apple, Amazon, Google, AIベンチャー等):約1,500億円
【純資産総額:約8,000億円】
「8,000億円……」
もはや言葉が出ない。
日本国内の個人・同族会社として、完全にトップクラスの巨額富豪の仲間入りを果たしていた。
放課後、私は制服のまま社長室の窓辺に立ち、渋谷のスクランブル交差点を行き交う人々をぼんやりと見下ろしていた。
人々は誰も気づいていない。
自分たちが毎日使っているスマホのOS、ネットショッピングのインフラ、そして金融の裏側で、この渋谷のビルにいる15歳の少女が、世界経済の巨大な歯車を優雅にコントロールしているという事実を。
三、 2度目の人生、高笑いの日は「もうすぐそこ」
「お嬢様、お疲れ様です。お母様から、今夜の夕食はハンバーグだと連絡が入っております」
秘書の女性が、淹れたてのハーブティーを机に置いた。
「ありがとう! じゃあ、今日の仕事はこれでおしまい!」
私はパッと笑顔になり、ソファに置いてあった特製の「金の扇子」をそっと手に取り、フッと優雅に広げた。
前世、ブラック企業の理不尽に耐え、終電の満員電車で吐きそうになりながら「人生やり直したい」とノートに妄想を書き殴っていた私。
その妄想は、時空のバグと、スパルタ小姑AIの鬼指導、そして何より私自身の「社畜で培った泥臭い執念と徹底的なリサーチ力」によって、完全に現実のものとなった。
『里穂。あまり気を抜いていると、また次のプロジェクトが舞い込んできますよ』
脳内で、AIがクスッと呆れたように笑う。
「いいのよ、お姑さん! 来るならいくらでも来なさい! 私には、世界を買い叩くだけの潤沢な資金と、最強の脳みそがあるんだから!」
ハワイの青い海、渋谷の自社ビル、そして未来の数兆円の暗号資産。
「ほーっほっほ! 働かざる者食うべからずですわ~!!」
誰もいない社長室で、私は右手に金の扇子を掲げ、思いっきり最高潮の高笑いを響かせるのだった――!




