第10話
第1章:慶應女子高生の放課後と、一兆円の決算書
一、 16歳のリアルと、裏の「グローバル・ボードルーム」
平成31年/令和元年(2019年)。
新元号の発表に日本中が湧き立つ中、私は慶應義塾女子高等学校の2年生(16歳)になっていた。
「里穂ちゃん、放課後タピオカ飲みに行かないー?」
「あ、ごめんね! 今日はこのあと親戚の用事(※巨額出資案件のボードミーティング)があって!」
友だちからの誘いを「天使の女子高生スマイル」で丁寧にお断りし、私は制服のまま校門を出た。
待たせておいた送迎用の漆黒のレクサスLSへ乗り込むと、後部座席のプライバシーガラスがスーッと閉まる。
「お疲れ様です、社長」
助手席の専属秘書が手際よくタブレット端末を起動し、私に差し出した。
「本日の決算サマリーです。【合同会社ODAアセットマネジメント】の純資産額、および各ポートフォリオの含み益を合算いたしました結果……ついに目標数値を突破いたしました」
タブレットの画面に表示された太字の数値を一目見て、私は思わず手に持っていたタピオカミルクティーのストローを噛み潰しそうになった。
【合同会社ODAアセットマネジメント 総合資産評価額(2019年夏)】
現金・預金(米ドル/日本円):約5,200億円
米国株式(Apple, Amazon, Alphabet, NVIDIA, OpenAI等):約3,100億円
国内外不動産(渋谷ODAビル、赤坂オフィス2棟、豊洲タワー、ビバリーヒルズビル等):約550億円
暗号資産(20万BTC+各種アルト資産):評価額 約1,800億円(※爆発前夜)
【純資産合計: 1兆650億円 】
「い……1兆……! 1兆円超えたわよお姑さん!!」
『想定の範囲内です、里穂。慢心してはいけません。1兆円など、世界の超巨大国際資本の海においては「一人前の独立ファンド」としての船出に過ぎません』
脳内でお姑さんの声が、相変わらず冷徹に、しかしどこか誇らしげに響く。
(出たわね、お姑さんの「1兆円は通過点」発言!! 前世で手取り20万に喘いでたアラサー社畜に聞かせてあげたいわよ!!)
16歳の女子高生にして、単独オーナーとしての純資産1兆円超え。
前世の記憶、バグで手に入れた最高の顔面、そして脳内のスパルタ小姑AIが噛み合った結果、私はついに「国家予算級の富を動かす16歳」へと到達してしまったのだ。
二、 2019年:NVIDIAと次世代AI半導体への集中投資
しかし、私の社畜脳(=超リスク管理&未来予測脳)は、1兆円の数字に甘んじることを許さなかった。
「社長、次の投資枠600億円の配分ですが……」
「決まっているわ」
私はレクサスのシートに深く腰掛け、窓の外の東京の街並みを見つめた。
「【NVIDIA】の株式を買い増しなさい。出資可能額のすべてを集中投入するのよ」
「エヌビディア……ですか? 主にグラフィックボード(GPU)を製造している半導体メーカーですね。現在はゲーム市場向けが中心ですが……」
秘書が不思議そうに首をかしげる。
(ふふふ……青いわね!!)
私は心の中で不敵に笑った。
(あと数年後に生成AI(ChatGPT等)の爆発的普及が始まり、世界中のビッグテック(GAFAM)が喉から手が出るほどNVIDIAのAI用半導体『H100』を買い漁る時代が来るのよ! 今この時期にNVIDIAの株式を大量保有しておけば、数年後には株価が【数十倍~数百倍】に化けるのよ!!)
「私の指示通りにしなさい。これからは『GPUが世界の石油になる』時代が来るわ。全力を出し切りなさい」
「は、はいっ! 直ちに買い付け指示を出します!」
第2章:2020年~2021年 暗号資産超メガバブルと「20万BTC」の開放
一、 パンデミックと世界的な金融緩和の波
西暦2020年(令和2年)。
世界を世界規模のパンデミックが襲い、各国の中央銀行が歴史的な規模の「量的金融緩和(お金の大量刷り増し)」を開始した。
法定通貨(米ドルや日本円)の価値が目減りし、溢れかえった資金は一斉に「株式市場」と「暗号資産市場」へと雪崩れ込んでいった。
2020年秋から2021年にかけて、暗号資産市場は人類史上過去に例を見ない「狂乱の超メガバブル」へと突入した。
かつて1枚数円~数百円だったビットコインの価格が、1BTC=300万円……500万円……そしてついには【1BTC=約750万円(約6万8千ドル)】の最高値を叩き出したのだ!!
渋谷・ODAビル7階の最高CEO室。
私は17歳(高校3年生)になっていた。
制服を脱ぎ捨て、海外からオーダーメイドした洗練されたスーツに身を包み、マルチモニターに躍る異次元のチャートを見つめていた。
(……きたわ。ついに来た……!! 私が2009年の黎明期から10年以上、完全オフラインの物理金庫に封印し続けてきた……残り『20万BTC』を開放する時が!!)
『里穂。全システムの準備が完了しました。20万BTCの段階的売却シーケンスを稼働させます』
お姑さんの声が、まるで宇宙ロケットの発射カウントダウンのように響く。
【売却条件】1BTC = 平均600万円~700万円レンジ
【売却数量】20万BTC
【想定回収額】約1兆2,000億円~1兆4,000億円(純現金化)
「……売りなさい!! 世界中の主要取引所およびOTC(店頭取引)を通じて、すべて現金化するのよ!!」
二、 2兆5,000億円の「完全なる現金要塞」
2021年冬。
我が【合同会社ODAアセットマネジメント】の銀行口座には、税金を完璧に納めた後でも、暗号資産の売却益と既存の株式・不動産収益が合算され、文字通り【純現金・約2兆5,000億円】という絶句するようなメガ資産が爆誕した。
「に……2兆5,000億円……」
顧問税理士の佐藤先生は、もはや涙も出ない様子で電卓をポトリと落とした。
「小田社長……もはや我が社は、国家の国家予算の一部、あるいは世界有数の政府系ファンド(SWF)と同等の資金力を誇る『地球上の金融要塞』です……」
お母さんとお父さんは、もはや「お金」という感覚を通り越して、「里穂ちゃん、今日のご飯はカレーでいい?」と達観した笑顔を浮かべていた。
「ええ、お母さん! カレー最高! 福神漬け多めでね!」
世界を動かす2兆5,000億円のオーナーでありながら、家では大好きな家庭料理に舌鼓を打つ。
このギャップこそが、私の正気を保つ最大の防壁であった。
第3章:慶応義塾大学進学と「ハワイ・ラニカイ丘の豪邸」竣工
一、 慶應大生社長と、世界の黒幕
西暦2022年(令和4年)春。
私は慶應義塾大学(法学部)へとストレート進学し、18歳の大学生になっていた。
成人の仲間入りを果たした私は、法的に名実ともに【合同会社ODAアセットマネジメント】の代表社員(最高経営責任者)へと就任。
大学のキャンパスでは、サークルの勧誘を優雅にかわしながら図書館で国際法の洋書を読みふけり、週末には羽田からプライベートジェットでシリコンバレーやロンドン、シンガポールへと飛ぶ。
生成AIの最前線企業であるOpenAIやAnthropicへの超初期大型出資。
次世代量子コンピューティング企業へのシード出資。
さらには、東南アジアのインフラ再開発ファンドの筆頭株主――。
もはやメディアに顔を出す必要すらなくなった。
「世界のテクノロジーと金融の裏側に、ODAという謎の超巨大ファンドがいる」ということだけが、ウォール街やシリコンバレーのエリートたちの間で都市伝説のように語り継がれていた。
二、 ハワイ・ラニカイの丘:【ODAパレス】完全完成
そして――2022年、夏。
私は大学の夏休みを利用して、家族(お父さん、お母さん)と共に、ハワイ・オアフ島へと飛んだ。
オアフ島東海岸、全米No.1の美しさを誇るラニカイ・ビーチ。
そのビーチを見下ろす緑豊かな丘の頂上に、5年の歳月と数十億円の建設費を投じて建設された、我が小田家の超巨大要塞別荘――【ODAパレス(オダ・パレス)】が、ついに完全竣工を迎えたのだ。
「う……うわぁぁぁぁぁッ……!!!」
お父さんとお母さんが、敷地に入った瞬間、言葉を失って歓声をあげた。
5,000坪の広大な敷地。
目の前に広がるのは、太平洋のエメラルドグリーンの大海原と、どこまでも続く青い空。
風が心地よく吹き抜け、白い砂浜と波の音が心地よく届く。
広大なインフィニティプールの脇には、ヤシの木が揺れ、プライベートヘリポートには我が家の移動用ヘリが待機している。
「里穂……これ……本当に私たちの家なの……?」
お母さんがボロボロと感動の涙を流した。
「そうよお母さん! 私たちが頑張って勝ち取った、最高の我が家よ!」
第4章:伝説の「高笑い」と、社畜の完全解脱
一、 純金の扇子と、夕陽のテラス
夕暮れ時。
太平洋の水平線に、真っ赤な夕陽がゆっくりと沈んでいく。
空が紫とオレンジの幻想的なグラデーションに染まる中、私は【ODAパレス】の最上階テラスに立っていた。
風が、私のロングヘアとドレスの裾を心地よく揺らす。
私の右手には、特注で作らせた【純金箔でコーティングされた、最高級の扇子】が握られていた。
前世。
毎日深夜二時まで残業し、上司の怒号に怯え、コンビニの温め損ねた弁当を三分子で流し込み、「人生やり直したい……」とノートに妄想を書き殴っていた、あの惨めで愚かな二十八歳の社畜時代。
事故で死に、過去の自分(5歳)に逆行し、バグで手に入れた最高の顔面と、脳内のスパルタ小姑AI【お姑さん】と共に駆け抜けた、怒涛の13年間。
子役として泥をすすり、現場の大人たちを圧倒し、稼いだギャラを株と不動産と暗号資産にブチ込み、世界中の金融市場をハックし続けた日々。
手に入れたのは――
・純資産:約2兆8,000億円
・毎月の純不労所得:約2,500万円(不動産・配当等)
・世界中の超一等地の不動産と、次世代AI企業の筆頭株主の座
・そして、何物にも脅かされない「完全なる自由」!
『里穂。感無量ですね。貴方の初志は、完全に貫徹されました』
脳内で、13年間ともに走り抜けてきたお姑さんの声が、初めて温かい響きを伴って話しかけてきた。
(お姑さん……ありがとう。あなたがいなかったら、私はただの自堕落な元社畜として失敗してたわ)
『フッ……礼には及びません。貴方の「社畜ゆえの泥臭い諦めの悪さ」があったからこそ、この不可能性を可能にしたのですから。……さあ、見せてあげなさい。貴方が13年間夢見続けてきた、あの仕上げを』
(ええ……! 見せてあげるわ!!)
二、 ハワイの丘の上に響き渡る「高笑い」
私は、右手に握った【純金の扇子】を、パッと優雅に胸前で広げた。
夕陽の光を受けて、金色の扇子がキラリと眩しい光を放つ。
私は太平洋の大海原に向かって胸を張り、息を吸い込んだ。
そして――
「ほーーーっほっほっほ!! 働かざる者、食うべからずですわ~~~~~~ッ!!!!」
ハワイ・ラニカイの丘の上に、高らかな、圧倒的な、どこまでも晴れやかな「高笑い」が響き渡った。
風が吹き抜け、青い海が輝き、空には一番星が輝き始める。
「里穂ちゃん! ごはんよー! 今夜はハワイのお肉でバーベキューよー!」
階下から、お母さんの明るい声が聞こえる。
「はーい! お母さん、今行くー!」
私は純金の扇子をパタンと閉じると、最高の笑顔を浮かべ、家族の待つ暖かい光の中へと駆け出していくのだった。
――小田里穂(18歳)。
前世社畜、今世大富豪。
彼女の人生やり直し大富豪計画は、ここに完全なる「大勝利」として完結したのである!




