第5話
第1章:小学校入学と「世忍び」の小学生ライフ
一、 ランドセルと、クラスメイトの視線
「里穂ちゃん、見て見て! 赤いランドセル、すっごく似合ってるわよ!」
平成1Y年、四月。うららかな春の陽気の中、お母さんがビデオカメラを構えて黄色い声をあげていた。
私の背中には、職人がひとつひとつ手作りした特注の牛革製赤ランドセル。
どこからどう見ても、桜並木の下を走るピカピカの小学1年生――小田里穂(6歳)の姿である。
だが、私の頭の中では、登校初日から高度なリスクマネジメント演習が繰り広げられていた。
(お母さん、カメラのレンズを回す角度を考えて! 校門前の看板に写り込んでいる他の保護者の顔はプライバシー保護の観点からボカシを入れなきゃ……って、ここは我が家のYouTubeチャンネルじゃないんだから!)
『里穂。姿勢を正しなさい。小学校という空間は、貴方の社会性を測る新たな実験場です。過度な目立ちたがりは同級生や保護者層からの羨望と嫉妬を生み、不要なアンチを形成します』
脳内のお姑さんが、いつもの冷徹なトーンでアドバイスを送ってくる。
(分かってるわよお姑さん! 小学校での私のテーマは【能ある鷹は爪を隠す】……世を忍ぶ仮の小学生ライフよ! 学校ではただの「ちょっと足が速くて歌が上手い普通の女の子」として振る舞うんだから!)
「里穂ちゃーん! 一緒にいこー!」
後ろから走ってきたのは、幼馴染のタケちゃん(6歳)。
幼稚園時代は鼻水を垂らしていた彼も、新品の紺色のランドセルを背負い、ピシッとした制服を着ている。
「あ、タケちゃん! おはよう!」
「里穂ちゃん、すごいね! 昨日テレビで『風雲の城』の総集編見たぞ! 里穂ちゃんが『生きる!』って泣いてるやつ!」
(声が大きい! タケちゃん声が大きいから!!)
周りの新入生や保護者たちが一斉にこちらを振り返る。
「えっ……あの子、もしかして大河ドラマの鶴千代ちゃん……!?」
「本物だ! えぇっ、同じ小学校なの!?」
ざわざわと広がる波紋。
私は即座に、前世の危機管理広報の顔を引っ込め、「100%ピュアな6歳児スマイル」を発動した。
「えへへ、タケちゃんありがとう! でもね、学校では私、ただの『おだりほ』だからね! 一緒にアサガオのお世話頑張ろうね!」
「うん!」
無邪気な笑顔で周囲の視線を和らげつつ、私はそっと胸の中で冷や汗を拭った。
(ふぅ……危ない危ない。小学校生活、初日からファンサ(ファンサービス)を求められる事態は避けないとね……!)
二、 1年1組の担任と「大人すぎる6歳児」
1年1組の教室。
30人の児童が、木製の小さな机に腰かけていた。
黒板の前に立ったのは、今年で教職3年目という若い女性教諭・木村先生であった。
「みんなー! 今日から1年1組の担任になる、木村先生です! よろしくね!」
「「「はーい!!!」」」
元気に手を挙げる子供たち。
「それじゃあ、一人ずつ順番に『将来の夢』を発表してもらいまーす! じゃあ、一番前の里穂ちゃんから!」
(きた……! 登校初日の定番イベント【将来の夢発表】……!)
クラス全員の視線が、私に集まる。
タケちゃんが「里穂ちゃん、女優さんって言うのかな!?」とワクワクした目で見つめてくる。
普通の子役なら、ここで「将来は大女優になってアカデミー賞を取りたいです!」と可愛らしく答えるだろう。
だが、私は一歩前へ出ると、両手を前で揃え、可憐にお辞儀をした。
「小田里穂です。私の将来の夢は……【世界中のお友達と仲良くなって、みんなが笑顔になれるようなお仕事(※外貨獲得と投資)をすること】です!」
一瞬、木村先生がフリーズした。
「えっ……あ、えーと……世界中のお友達と仲良くなる……国際的なお仕事かな? すごいわね、里穂ちゃん!」
(よし! 「女優」という文言を回避しつつ、本質である「グローバル投資&国際ビジネス」の意図を完璧に伏線として仕込んだわ!)
『言葉のチョイスがギリギリですが、まあ合格点でしょう。先生や同級生に与える印象としては「夢の大きい良い子」で収まりました』
脳内でお姑さんがフッと鼻で笑う。
こうして、私の「世を忍ぶ小学生生活」と「億越え子役のビジネス生活」の二重生活が、幕を開けたのだった。
第2章:合同会社『ODAアセット』設立と、初の海外投資
一、 節税という名の絶対壁
小学校からの帰り道、私はお母さんと共に、大手税理士事務所のVIP応接室にいた。
目の前に座るのは、敏腕で知られるベテラン公認会計士・税理士の佐藤先生(証券会社の佐藤さんの紹介)。
「……小田様。改めて、お嬢様の昨年度の確定申告書類を拝見させていただきましたが……」
佐藤税理士が、老眼鏡を指で押し上げながら深々と溜め息をついた。
「凄まじい数字ですね。昨年度の年収(ギャラ収入+株の売却益)が【1億2000万円】を超えています。6歳児の申告額としては、私の30年のキャリアでも過去最高です」
お母さんが小さく悲鳴をあげた。
「そ、そんなに……! でも先生、税金ってどれくらい払うことになるんですか……?」
佐藤税理士は、提示された電卓の数字をお母さんに見せた。
【個人所得税+住民税(最高税率適用)】
想定納税額:約5500万円
「ご、ごせんごひゃくまんえん!!????」
お母さんが泡を吹いて倒れそうになった。
「稼いだお金の半分近くが……税金で持っていかれちゃうんですか!?」
(そう! これなのよ!! 日本の累進課税制度の恐ろしさは!!)
前世で知識としては知っていたが、実際に1億超の個人所得が発生すると、最高税率(所得税45%+住民税10%)が容赦なく襲いかかってくる。
せっかく稼いだ1億2000万円が、一瞬で半分以下に削られてしまうのだ。
「佐藤先生」
私が静かに手を挙げた。
「個人事業主としての申告ではなく……【法人(会社)】を設立して、そちらにギャラや投資収益をプールさせる形に移行したいのですが」
「……っ!?」
佐藤税理士が、驚愕の表情で私を見つめた。
「ほ……法人化!? 6歳の里穂ちゃんが……法人の設立を申告されるのですか!?」
「はい。お母さんを代表社員(社長)とした【合同会社】を設立します。私の芸能活動のマネジメント、および資産運用事業を目的とする法人です。法人税率であれば実効税率は約30%程度に抑えられますし、お母さんやお父さんへの役員報酬、衣装代、移動交通費、自宅の一部をオフィスとする家賃案分など、合法的な損金算入(経費化)が可能になりますよね?」
静寂。
応接室に、佐藤税理士の落としたペンがコロコロと転がる音だけが響いた。
「な……な……なんという節税ロジック……! 完璧すぎる……! 6歳児が法人税の実効税率と損金算入の概念を理解しているなんて……!」
『ふふん。私の叩き込んだ財務・税務知識の賜物です。驚くに値しません』
脳内でお姑さんが勝ち誇る。
こうして、資本金500万円(私のギャラから出資)、代表社員:小田恵子(お母さん)、出資者兼専属タレント:小田里穂によるプライベート・カンパニー――【合同会社ODAアセットマネジメント】が正式に設立されたのであった!
二、 アメリカ株(Apple、Amazon)の爆買い
法人化により税金対策の防壁を固めた私は、すぐさま次の手に出た。
200X年代半ば。
世界はまだスマートフォン(iPhone)の存在を知らない。Amazonはただの「本の通販サイト」として認知されていた時代である。
「佐藤さん(証券会社の方)」
私はODAアセットの法人口座を開設した証券会社の面談室で、ノートを開いた。
「こちらの法人資金から、【米国株:アップル(Apple)】と【アマゾン(Amazon.com)】、さらに【Google(Alphabet)】の新規公開株(IPO)に、それぞれ2000万円ずつ、計6000万円を投資してください」
証券会社の佐藤さんが、目玉を飛び出させた。
「ええぇぇぇぇッ!? アメリカのIT銘柄に6000万円ですか!? 里穂ちゃん、いや小田役員! アップルは現在パソコン市場で苦戦していますし、アマゾンもまだ赤字から脱却したばかりの無配当企業ですよ!? なぜそんなリスクの高いアメリカ株に……!?」
(ふふふ……青いわね佐藤さん!!)
私は心の中で不敵に笑った。
(あと数年後にアップルが『iPhone』という人類の生活を変えるデバイスを発表し、アマゾンが世界のECとクラウド(AWS)を支配し、グーグルが世界の検索と広告を独占することを知らないのね!! 今この3社の株を買っておけば、15年後には【100倍~300倍】に化けるのよ!!)
「佐藤さん」
私は「大人びた微笑み」を浮かべて言った。
「これからは、国境を越えたITとプラットフォームの時代です。日本国内の資産だけじゃなく、ドル建てで世界最強の成長企業を保有する……それがODAアセットの基本方針です。お母さん、サインをお願いします」
「あ、はい! 里穂ちゃんの言う通りにします!」
すっかり娘の金融センスに全幅の信頼を置いているお母さんが、サラサラと法人用印鑑を押した。
「は、はい……承知いたしました……! 米国株6000万円分、買い付け手配いたします……!」
こうして、我がODAアセットは、将来世界時価総額トップに君臨する巨大IT企業の超初期大株主としてのポジションを確立したのだった。
第3章:連続ドラマ『ちいさな医者ストリート』初主演と、新たな壁
一、 ゴールデン帯連ドラでの「初主演」
資産運用が絶好調な一方で、私の本業(=種銭獲得装置)である芸能活動も、さらなる爆発を見せていた。
サンライズ・プロダクションの社長室。
「里穂ちゃん! ついに来たぞ!!」
黒岩プロデューサーが、特大の企画書をテーブルに叩きつけた。
「民放キー局・日本テレビの火曜9時枠! 連続ドラマ『ちいさな医者ストリート』の【単独主演】決定だぁぁぁぁッ!!」
「キャァァァァァッ!! 主演!? 連ドラの主演!?!?」
お母さんが抱き合って喜ぶ。
(火曜9時の主演……!!)
企画書をめくる。
タイトルは『ちいさな医者ストリート』。
舞台は下町の小さな診療所。天才的な観察眼と前世(?)の記憶を持つ6歳の少女・凛が、難病や町の人々の心の病を解き明かしていく、感動の医療ミステリードラマだ。
「主演だぞ、里穂ちゃん! 6歳でのゴールデン帯連ドラ単独主演は、民放ドラマ史上の最年少記録更新だ!」
黒岩さんが興奮で顔を赤くしている。
「そして、今回の出演料だが……1話あたり【250万円】! 全10話で【2500万円】だ!!」
(1話250万円!!)
私の脳内で、またしても金の紙吹雪が乱舞した。
(連ドラ1本で2500万円!! これが連ドラ主演(座長)のギャラ単価……! 大河ドラマのブレイクを経て、私の市場価値はついにトップタレントと同等レベルまで跳ね上がったのね!!)
『素晴らしい獲得単価です。この2500万円もODAアセットの法人収入として計上し、さらなる米国株の買い増し資金に充てましょう』
脳内でお姑さんも大満足の様子だ。
「やります、黒岩さん! 私、このドラマで最高視聴率を狙います!」
二、 現場の「ベテラン大人俳優」たちの冷ややかな目
しかし――。
6歳での連ドラ主演という偉業は、当然ながら現場の「大人たち」の嫉妬や警戒心を生むことになった。
クランクイン当日。緑山スタジオの大きなリハーサル室。
「皆様、ご紹介いたします! 本作の主役・凛役を演じられます、小田里穂さんです!」
スタッフの紹介に合わせ、私が「よろしくお願いいたします!」と深々とお辞儀をする。
パチパチパチ……。
拍手は聞こえるものの、どこか冷ややかだった。
特に、私の父親役を演じるベテラン実力派俳優の陣内修三(50代)と、診療所の看護師長役を演じるベテラン女優の浅野京子(40代)の目が鋭かった。
(うわぁ……あからさまに『子供に主役を張られて面白くない』って顔してる……!)
前世の社畜時代、若くしてプロジェクトリーダーに抜擢された際、叩き上げのベテラン社員たちから向けられた「お手並み拝見」という冷ややかな視線と全く同じだ。
煙草をふかしながら、陣内さんが皮肉っぽく呟いた。
「ふん……子供が主役の医療ドラマねぇ。視聴率稼ぎの話題作りも大変だな」
浅野さんもフッと冷笑を浮かべる。
「本当にね。NG連発で撮影が押しちゃったら困るわよ。私たちはプロなんだから」
周囲の若いスタッフたちがハラハラしながら二人を見ている。
(なるほどね……。大河ドラマで実績を作ったとはいえ、民放の現場では『話題性だけの客寄せパンダ』だと思われてるわけか)
『里穂。危機管理対応です。彼らは貴方の演技力を試しています。ここで一発目のリハーサルから【完璧な長台詞と圧倒的な存在感】を見せつけ、現場の主導権を奪取しなさい』
(了解よお姑さん! 『子供だと思って舐めてると怪我するわよ』ってことを、演技で分からせてあげるわ!!)
第4章:長台詞の一発OKと、現場の「座長」へ
一、 医療用語の激流を泳ぎ切れ
「それじゃあ、第1話ラストシーンのリハーサルいきます!」
監督の声がかかる。
第1話のハイライト。
下町の頑固オヤジ(陣内さん)が倒れ、病院に運ばれるも原因不明。誰もが諦めかけた時、6歳の凛(私)が彼の病名と原因を見抜き、専門的な医療用語を畳みかけながらベテラン医師たちを圧倒するシーンだ。
セリフの量は、A4用紙で3ページ分。
しかも「特発性拡張型心筋筋炎」「冠動脈微小循環障害」「左室駆出率」といった、大人の俳優でも噛みそうな難解な医療用語がギッシリ詰まっている。
「里穂ちゃん、セリフ大丈夫かな……? 長いから、途中で区切ってテストしてもいいよ?」
監督が心配そうに声をかけてくる。
「いえ! 大丈夫です、一気にやらせてください!」
私は笑顔で答えた。
陣内さんがフンと鼻で笑う。
(言ったな、子供。途中で噛んで泣き出しても知らんぞ)
カメラが回る。
「『ちいさな医者ストリート』第1話ラスト、よーい……スタート!」
カチンコが鳴った。
その瞬間――私の目が変わった。
「お父さん!! 諦めちゃダメ!!」
凛としての凛とした声が、リハーサル室に響き渡った。
私は陣内さんのベッドに駆け寄り、彼の胸元を視察、触診する動きを見せる。
「左室駆出率は30%以下……! でも、これは単なる心不全じゃないわ! 冠動脈造影像に有意狭窄がないにもかかわらず、心筋逸脱酵素が上昇している……! 原因は、1週間前に引いた風邪による【特発性心筋炎の急性増悪】よ!!」
怒涛の医療用語。
滑舌は完璧。早口でありながら、一字一句がクリアに通る発声。
そして何より、6歳の少女とは思えない「命を救う熱量」が、言葉の端々から溢れ出していた。
「ステロイドパルス療法を直ちに開始して!! 早期に心筋保護を行えば、心機能は絶対に回復する!! お父さんを……私のお父さんを死なせないで!!!」
バンッ!!
机を叩き、ベテラン医師(浅野さん)をまっすぐに見つめる私の瞳。
涙がポロポロと溢れるが、その瞳には一切のブレも、セリフを思い出そうとする「迷い」もなかった。
「……っ……!!」
浅野女優が、思わず圧倒されてセリフを詰まらせた。
「あ……あ……」
ベッドに横たわる陣内俳優も、目を見開いて私を凝視している。
「――カットォォォォォォッ!!!!」
監督が椅子から立ち上がり、叫んだ。
「完璧!! 完璧すぎる!! 医療用語の長台詞、ノーカット一発OK!! 素晴らしい!!」
パチパチパチパチパチ!!!
スタジオ内に、爆発的な拍手が巻き起こった。
スタッフたちが「すげぇ……!」「医療用語を一つも噛まなかったぞ!」「6歳だろ……!? 本物の天才だ……!」と騒然となる。
二、 陣内修三の脱帽と、現場の一体感
「……失礼いたしました」
カットがかかった瞬間、私はスッと涙を拭い、陣内さんと浅野さんに向かって深々とお辞儀をした。
「陣内さん、浅野さん。私のセリフのタイミング、お芝居しづらくなかったでしょうか?」
完璧な配慮。完璧な謙虚さ。
陣内さんは、しばらく呆然と私を見つめていたが……やがて、苦笑いを浮かべて頭をかいた。
「……参ったな」
陣内さんがベッドから起き上がり、私の頭にぽんと手を置いた。
「おいおい、なんだよその演技は……。俺の方が完全に呑まれちまったじゃねえか。……悪かったな、里穂ちゃん。お前のこと、ただの話題作りの子供だと思ってたよ」
浅野さんも、恥ずかしそうに頬を赤くしていた。
「私もよ……。ごめんなさいね、里穂ちゃん。貴方はただの子供じゃない……本物の『座長』だわ」
(勝った……!!)
私の胸の中で、ガッツポーズが炸裂した。
前世の社畜時代に学んだこと。
「現場の人間を黙らせる唯一の方法は、圧倒的な『仕事の成果』を見せつけることだ」!
この日を境に、現場の空気は180度変わった。
陣内さんも浅野さんも、私を「一人の対等な主演タレント」としてリスペクトし、現場は最高のチームワークで撮影が進むようになったのだ。
第5章:黒船襲来! ハリウッド映画の日本ロケ
一、 謎の外国人オファー
連ドラ『ちいさな医者ストリート』の撮影が順調に進んでいたある日。
サンライズ・プロダクションに、一通の「英文のオファー状」が届いた。
「り……里穂ちゃん!! 大変なことになったぞ!!」
黒岩プロデューサーが、英語の書類を手に震えていた。
「な、なんですか黒岩さん?」
「ハリウッドだ……! ハリウッドの大物映画監督、スティーブン・ハリソン監督の最新作映画『TOKYO BLADE』の日本ロケオーディションの招待状が届いたんだ!!」
(は……ハリウッド映画ぁぁぁぁぁぁッ!?)
お母さんが白目をむいて倒れそうになった。
前世の記憶が駆け巡る。
(スティーブン・ハリソン!! あの、世界興行収入数千億円を叩き出す、ハリウッドの世界的巨匠映画監督!? その監督が日本を舞台にしたアクション超大作映画を撮るの!?)
『データ照合完了。前世の歴史において、この映画『TOKYO BLADE』は全世界で大ヒットを記録し、出演した日本の俳優たちは一気にグローバルタレントとしての認知を獲得しました。特に、主人公の命を救う謎の少女役は、世界中の映画賞で話題となりました』
お姑さんの声が響く。
「黒岩さん! その『謎の少女役』のオーディションですか!?」
「そうだ! だが……条件が厳しい。【ネイティブレベルの英語力】と【世界基準のアクション・表情演技】が要求される。日本中の有名子役やハーフタレント、帰国子女キッズたちがこぞって受ける超狭き門だ!」
黒岩さんが少し不安そうに私を見る。
「里穂ちゃん……流石に英語はまだ難しいよな? 5歳、あ、今6歳か。英会話スクールとか通ってないし……」
(ふふふ……黒岩さん。私を誰だと思ってるの?)
私は不敵な笑みを浮かべた。
この半年間、脳内のスパルタ小姑AI【お姑さん】によって、毎朝毎晩「国際金融用語とネイティブ英語の猛特訓」を受けさせられていたのだ!!
二、 英語スピーチの覚醒
「Hello, Mr. Kuroiwa.(こんにちは、黒岩さん)」
私が流暢なネイティブ発音で英語を話し始めた瞬間、黒岩さんの眼鏡がズリ落ちた。
「I am completely ready for this Hollywood audition. Please leave it to me.(私はこのハリウッドのオーディションの準備が完全にできています。私に任せてください)」
「ええぇぇぇぇぇぇッ!?!? なんで里穂ちゃん英語喋れるの!?!? しかも発音凄く綺麗!!??」
黒岩さんが叫んだ。
お母さんも「ええっ!? 里穂ちゃん、いつの間に英語なんて覚えたの!?」と驚いている。
「えへへ! お家でCD聴いてお勉強してたの!」
(※嘘です。脳内のAIに毎日スパルタでシバかれてました)
『フッ……私のリスニング&スピーキング・トレーニングの成果です。ハリウッドの審査員を驚かせる準備は万全ですね』
(おし!! 狙うは【ハリウッド映画出演&ギャラ(ドル建て)獲得】!!)
ドル建てでギャラを獲得できれば、そのままアメリカの投資口座にブチ込んで、AppleやAmazonの株をさらに買い増せる!!
日本だけに留まらない、私の【グローバル大富豪ロード】が、いよいよ世界へと羽ばたく時が来たのだ!
三、 ハリウッドオーディション前夜の誓い
自室に戻り、私は『大富豪計画ノート』を開いた。
そこには、新しく立ち上げた【合同会社ODAアセットマネジメント】の資産グラフと、次の目標が力強く書き込まれていた。
Plaintext
【資産状況(ODAアセット)】
・総資産:約1億5000万円(株式・不動産・現金)
・米国株(Apple, Amazon, Google):6000万円分保有
・豊洲タワーマンション権利保有
【次の目標】
・ハリウッド映画『TOKYO BLADE』オーディション合格!
・ギャラ(ドル建て)の獲得と、グローバルな知名度の獲得!
・20歳での電撃引退&不労所得でハワイ高笑い生活へ!
「お姑さん」
『なんでしょう、里穂?』
「私ね、前世はただの社畜で、自分の狭い世界しか知らなかった。でも、今はこの小さな体で、日本中、そして世界中の大人たちと渡り合えてる。……すっごくワクワクするよ!」
『フッ……調子に乗ってはいけません。ハリウッドのオーディションには、全米から集まった本物の天才子役たちも参加します。気を引き締めなさい』
「分かってるわよ! 叩き潰してやるんだから!」
鏡の中の私――小田里穂(6歳)は、不敵で最高の笑顔を浮かべた。
前世の社畜記憶。
バグで手に入れた最高の顔面。
脳内のスパルタ小姑AI。
そして、積み上がった1億5000万円の総資産。
すべてを武器にして、私は世界最高のエンターテインメントの聖地・ハリウッドへ挑む!
「行くわよ、お姑さん! 世界からドルを稼ぎまくってやるんだから――!!」
『言葉遣いです。「参りましょう」ですよ、里穂!』
6歳の私の、二度目の人生。
舞台は日本から世界へ! 大富豪子役のグローバル征服記は、さらに加速していくのだった――!




