↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒歴史ノートで恥ずかし死にからの転生!? 小姑システムを黙らせて、目指せラクして極上玉の輿!IF  作者: 此花サギリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/10

第4話

第1章:子役界の罠と、前世社畜のコンプライアンス戦略

一、 敵の攻撃ラインを分析せよ

京都・太秦の撮影所から宿舎へ戻る車中。

後部座席に揺られながら、私は小さな膝の上でスケッチブックを開き、ペンを走らせていた。


一見すると、5歳児が「今日の撮影の思い出」をお絵描きしているように見えるだろう。

だが、そこに書かれていたのは、前世の危機管理広報(PR)部で叩き込まれたロジックツリーであった。


Plaintext

【神宮寺蓮側の攻撃ライン想定】

・ターゲット:「小田里穂の母親(恵子)が子役ギャラで株式投資を行っている」という事実の歪曲。

・リーク先:ゴシップ系週刊誌、またはネット掲示板。

・狙い:「子供の稼いだ金をギャンブル(株)に注ぎ込む酷い親」というレッテル貼り。

・ゴール:大河ドラマ『風雲の城』の降板、あるいはイメージ失墜によるスポンサー離れ。

(なるほどね……。7歳のガキが考えることにしては知恵が回ってると思ったら、裏に誰かいるわね)


『分析が完了しました』


脳内でお姑さんの冷徹な声が響く。


『神宮寺蓮単独の策ではありません。彼の母親(蓮ママ)と、所属劇団『プレアデス』のデスクが関与しています。サンライズ・プロダクションの台頭を苦々しく思っていた彼らが、蓮の落選を機に小田家を引きずり降ろそうと画策していますね』


(やっぱりね! 7歳の子供が証券会社への通院……じゃなくて通学履歴なんて嗅ぎ回れるわけないもの! 大人が糸を引いてる『ネガティブ・キャンペーン』ってわけか!)


「里穂ちゃん、どうしたの? 難しい顔して……」


助手席に座る松井マネージャーが、バックミラー越しに心配そうにこちらを見ていた。


「松井さん」


私はスケッチブックをサッと隠し、首を少し傾げて「天使の首かしげ」を作った。


「あのね、神宮寺くんのお母さんがね、私のお母さんのことを『株をやっててずるい』って言ってたの」


「……えっ!?」


松井マネージャーの顔色が一瞬で変わった。車内の空気がピンと張り詰める。


「神宮寺さんのお母さんが……恵子さんのことを? 里穂ちゃん、具体的に何を言われたの?」


「うんとね、『子役のギャラで親が投資をしてるって週刊誌に言っちゃおうかな』って、神宮寺くんとお話ししてたの。だからね、お母さんが怒られちゃわないか心配で……」


ポロポロと涙を浮かべそうになりながら、健気に母を心配する5歳児。


(フフフ……危機管理の基本第一条! 【火種を検知したら、すぐに上層部(マネジメント)に報告し、会社を巻き込んで防火壁(防火壁)を構築する】! 個人で抱え込むのは泥棒の始まりよ!)


「……なるほど。そういうことね」


松井マネージャーの目が、前世で「他社のネガキャンを潰す時のベテラン広報」と同じ据わった目になった。


「心配しないで、里穂ちゃん。お母さんも里穂ちゃんも、何ひとつ悪いことはしていないわ。事務所が……サンライズが完璧に守ってあげるからね」


松井マネージャーは速やかに携帯電話を取り出すと、黒岩プロデューサーへとダイヤルを始めた。


『お見事です、里穂。敵の奇襲攻撃の初動を完璧に潰しました。さて、ここからのカウンター(反撃)ですが……どう料理しますか?』


(どう料理する? 決まってるじゃない。相手が「スキャンダル」で攻めてくるなら、こっちはそれを【最高の美談(感動エピソード)】に上書き(上書き)して、逆に好感度を爆上げしてやるのよ!!)


二、 危機管理PR:スキャンダルの上書き保存

翌日。サンライズ・プロダクションの緊急会議室。


集まったのは、黒岩プロデューサー、松井マネージャー、広報部長、そして私とお母さんである。


お母さんは「私のせいで里穂ちゃんに迷惑が……!」と蒼白になっていたが、私はお母さんの手を握って「大丈夫だよ」と微笑みかけた。


「黒岩さん、神宮寺側の動きは?」


広報部長が尋ねる。


「ああ、週刊誌『週刊芸能スキャンダル』の記者から、うちの広報部に確認の打診が来た。『小田里穂の親が、ギャラを危険な株式投資に使い込んでいるという情報があるが、事実はどうか』とな」


黒岩さんが苦笑いを浮かべながら、タバコを吹かした。


「向こうは完全に『子供の金をギャンブルに使う悪親』という絵を描いて叩く気だ。だが……」


黒羽さんが私に視線を送った。


「里穂ちゃんが作ってくれた、あの【小田子役ファンド】の事業計画書と、証券会社の定期購入契約書……あれが完璧すぎる」


「ええ」


松井マネージャーが胸を張って書類を叩いた。


「恵子さんが行っているのは、ギャンブル的な信用取引ではなく、【国の基準を満たした超安定的なインデックスファンドへの積立】と、【将来の教育・レッスン資金のための長期保有】です! しかも、里穂ちゃん本人の強い希望と理解のもとで、FP(ファイナンシャルプランナー)の指導を受けながら厳格に管理されている!」


(そう! これが私の計算通りなのよ!)


前世で「投資=悪」という古い価値観の日本社会を見てきた私は、あらかじめお母さんに「国債」や「安全な投資信託」を前面に出した口座づくりをさせていた。そして、証券会社の佐藤さんにも「娘の教育資金を真面目に育てる母親」としての記録をバッチリ残させておいたのだ。


「黒岩さん」


私は身を乗り出した。


「あのね、週刊誌の人に、嘘を書かれる前に……私から本当のことをお話しちゃえばいいんじゃない?」


「……ほう?」


黒岩さんが目を細めた。


「どういうことだ、里穂ちゃん?」


「『週刊誌にすっぱ抜かれた』んじゃなくて……【人気子役・小田里穂の賢すぎる金銭教育! ギャラを自分の教育資金として母娘で真面目に運用する感動秘話】として、大手新聞社やテレビの密着取材で先に発表しちゃうの!」


「……ッ!!!」


会議室の大人全員が、息を呑んだ。


広報部長が立ち上がった。


「それだ……! 先手を打って『教育熱心で賢い母娘』として大手メディアに公式発表してしまえば、ゴシップ誌の『ギャンブル使い込み』という捏造記事はただのガセネタになる! それどころか、世間からは『なんてしっかりした5歳児なんだ!』『素晴らしい教育法だ!』と絶賛される!!」


『カウンター成功確率:99.8%。敵の攻撃の刃を、そのままこちらの「好感度爆上げの武器」へと変換する……前世の社畜時代に培った汚い広報テクニックが冴え渡っていますね』


(汚いとは失礼ね! 【合気道PR術】と呼びなさい!)


黒岩さんがニヤリと悪魔のような笑みを浮かべた。


「よし、決まりだ! NHKの広報とも連携して、『大河主演子役の知られざる素顔』として独占インタビューを組もう! 神宮寺のガキと『プレアデス』には、自分の吐いたツバで溺れてもらうぞ!!」


第2章:大河ドラマ放送と、日本中を襲う「里穂フィーバー」

一、 運命の初回放送

それから二ヶ月後。

週刊誌のガセネタ企画はサンライズの先手必勝PRによって完全に潰され、逆に「5歳にして将来の教育資金を投資信託で真面目に育てる天才子役」として朝のワイドショーで特集され、私の好感度はうなぎ登りとなっていた。


そして、ついにその日がやってきた。


平成1X年、10月吉日。午後八時。

NHK大河ドラマ『風雲の城』第1話の放送日である。


我が家のリビングでは、お父さん、お母さん、松井マネージャー、そして私が正座してテレビの前に陣取っていた。


「は、始まるわよ……! 里穂ちゃんの大河ドラマが……!」


お母さんが汗を握りしめている。


重厚なオープニング曲が流れ、豪華キャスト陣の名前がテロップで流れる。

そして――画面が切り替わり、炎に包まれる城のシーンへと移った。


画面に映し出されたのは、泥と煤にまみれ、ガタガタと震えながら地を這う少女――私の演じる主人公幼少期・鶴千代であった。


「……っ……ハッ……っ……!」


テレビから流れる、息を呑むような迫真の過呼吸音。

死の恐怖に涙を流しながらも、父の兜を抱きしめ、瞳に恐ろしいまでの「生の執念」を宿す瞬間。


「……生きる。私……生きるよ、父上……!」


お父さんが、ビールを飲む手を止めてテレビに見入っていた。

お母さんは、すでにボロボロと感動の涙を流している。


画面の中の5歳児は、単なる「可愛い子役」ではなかった。

戦国の悲劇を一身に背負い、泥をすすりながらも生き抜こうとする、圧倒的な存在感を持った「一人の女優」であった。


二、 炸裂する視聴率と、社会現象

翌朝。午前九時。


サンライズ・プロダクションの社内は、見たこともない大狂乱に包まれていた。


「出たぞぉぉぉぉぉッ!!! 初回視聴率!!!」


黒岩プロデューサーが、受話器を握りしめたまま叫んだ。


「【初回平均視聴率:28.5%】!! 関西地区では【31.2%】を記録!! 大河ドラマの初回視聴率として、過去10年で最高値を更新だぁぁぁぁッ!!!」


「キャァァァァァァッ!!!」


社員たちが抱き合って歓声をあげる。


松井マネージャーが、鳴り響く電話の嵐に対応しながら、悲鳴のような声をあげた。


「黒岩さん! 各局から出演オファーが殺到しています! 民放のゴールデン枠ドラマの主演打診が3件! 清涼飲料水、大手家電、自動車メーカーからのCMオファーが合計8件!! 追いつきません!!」


新聞のテレビ欄、ネットの掲示板、街中の話題は、すべて「あの鶴千代を演じた凄まじい子役は誰だ!?」で持ちきりとなった。


『凄まじい演技力! 涙が止まらなかった』

『5歳であの目の演技ができるなんて、100年に一人の逸材だ!』

『「麦茶っこ」のCMのあの子か! 振り幅が凄すぎる!』


街を歩けば、女子高生やサラリーマンから「あ! 鶴千代ちゃんだ!」「里穂ちゃんだー!」と声をかけられ、写真撮影を求められる。


(キタ……キタキタキタキタ……!!)


私の脳内で、巨大なアドレナリンが噴出していた。


(これが……これが【爆発的大ヒット(メガヒット)】の快感……!! 前世の社畜時代、自分が関わった地味なプロジェクトが予算削減で潰されていくの指を咥えて見ていた私が、今や日本中の注目を独占してるのよ!!)


『里穂。喜びの最中恐縮ですが、現在の貴方の市場価値数値を更新しました』


お姑さんの声が、ホログラムの数字と共に頭の中に表示される。


【名前】小田 里穂(5歳)

【社会的認知度】SS(全国区の知名度)

【推定年間獲得ギャラ】¥45,000,000-(前年比2500%UP)

【CM契約単価】1本あたり¥3,000,000-(業界トップクラス)

(よ、よんせんごひゃくまんえん……!!???)


私は目玉をひっくり返しそうになった。


年収4500万円!!

前世の私の年収(320万円)の14倍以上!! 5歳にして、東証プライム上場企業の役員並みの稼ぎを叩き出すモンスターキッズへと化けてしまったのだ!!


第3章:L社株の暴騰と、第二号ファンドの始動

一、 50万円が何倍になった……!?

大河ドラマの放送から半年後。

私のもとには、続々とCMやドラマのギャラが振り込まれ、我が『小田子役ファンド』の資金は潤沢を極めていた。


そんなある日。

お母さんが青ざめた顔で、証券会社からの定期運用報告書を抱えて私の部屋へと飛び込んできた。


「り……里穂ちゃん……!! 大変よ!! 大変なことが起きたわ!!」


「どうしたのお母さん? 落ち着いて!」


「落ち着いていられるわけないでしょ!? 見てこれ!!」


お母さんが差し出した運用資産の明細書。

そこに書かれた『L社株式』の評価額を見て、私は心の中で「ついに来たか……!」とガッツポーズをした。


【銘柄】L社株式(買付時:50万円)

【現在評価額】¥12,500,000-(25倍上昇!)

「じゅ、じゅうにひゃくごじゅうまんえん……!?」


お母さんの声が震えている。


「たった半年前に50万円で買った株が……25倍の1250万円になってるのよ!? 証券会社の佐藤さんも『こんな大化け銘柄を当てたお客様は初めてです!』って電話で興奮して叫んでたわ!!」


(フフフ……言ったでしょうお母さん! L社が画期的な無料検索エンジンとポータルサイトを発表すれば、株価は一気に爆発するって!!)


前世の『大富豪計画ノート』に書き留められた未来の知識。

ITバブルの波に乗り、低迷していたL社の株価は見事に垂直立ち上がりを見せ、我が『小田子役ファンド』に一兆……ではなく1200万円以上の売却益(未実現益)をもたらしたのだ。


「お母さん」


私はお母さんの手を優しく包み込んだ。


「ね? 私が言った通りでしょ? お金はね、正しい場所に置いておけば、自分で働いて増えてくれるの」


「里穂ちゃん……あなた、本当に5歳なの……? 実は中に大人の人が入ってるんじゃないの……?」


お母さんがジト目で見てくる。


(ギクッッッ!!)


『心拍数上昇を検知。動揺を隠しなさい、里穂!』


お姑さんのアラートが鳴る。


「な、なに言ってるのお母さん! 私、里穂ちゃんだよ? ほら、ママの作ったハンバーグが大好きな里穂ちゃんだよ~!」


両手を頬に当てて、あざとさ1000%の顔芸を繰り出す。


「ふふ、そうよね。変なこと言ってごめんね。でも……本当にすごいわ。里穂ちゃんのおかげで、我が家の将来の不安が完全に消えちゃったわ……」


お母さんが涙ぐみながら私を抱きしめた。


よし、誤魔化せた!


二、 次なる金脈:湾岸エリアの不動産と「あのコイン」

資産が増えたら、次なる投資(ポートフォリオの再構築)だ。


私は自室でノートを開き、お姑さんと共に次なる「金脈」の選定に入った。


(お姑さん、L社株はそろそろ一部利益確定して、次の投資先に資金を分散させたいわ)


『英断です。ITバブルのピークはあと1年で一巡します。利益確定した資金、および大河ドラマと新規CMで入ったギャラ(約3000万円)を合わせた【総運用資金:約4000万円】の再配分案を提示します』


脳内に表示されたのは、前世の知識をフル活用した完璧なアセットアロケーション(資産配分)であった。


Plaintext

【小田子役ファンド・第二次ポートフォリオ】

1. 投資信託(全世界・全米インデックス):1500万円(ベースの安全運用)

2. 土地・不動産(東京湾岸エリアのタワーマンションプレセール):2000万円(頭金)

3. 将来の大化け銘柄(Apple、Amazon等の初期株):450万円

4. 暗号資産(※将来のビットコイン誕生に備えた自己資金のプール):50万円

(東京湾岸エリアのタワーマンション!!)


私の目が輝いた。


(平成1X年現在、豊洲や有明などの東京湾岸エリアは、まだただの埋立地や工場跡地で、坪単価が激安なのよ! でも、あと10年後に東京オリンピックの開催決定や再開発が進めば、坪単価は3倍~5倍に跳ね上がる!!)


『その通りです。子役のギャラで湾岸タワーマンションの初期購入権(プレセール)を獲得し、完成後に賃貸に出せば、毎月数十万円の【不労所得(家賃収入)】が確定します』


(不労所得キタアアアアア!!)


私は思わずベッドの上でダンスを踊った。


子役として働いて得たギャラ。

それを株で増やし、不動産にブチ込んで「自動でお金を生み出すシステム(家賃収入)」に変換する。


これぞ、社畜時代に夢にまで見た【大富豪への無限ループ構造】!!


「お母さん! 次はね、お家にパンフレットが届いてた『豊洲のマンション』を見に行こう!!」


「えっ!? マンション!? またそんな高価なものを……!」


「大丈夫! 私たちのファンドなら、頭金を払っても全然余裕だよ! 見に行こう見に行こう!」


お母さんを引っ張って、私は次なる不動産投資へと突き進むのであった。


第4章:敗者たちの遠吠えと、圧倒的な格差

一、 凋落する神宮寺蓮と『プレアデス』

一方その頃。


大河ドラマ『風雲の城』の放送が回を重ねるごとに、世間の評価は二極化していた。


主役の鶴千代を演じる私(小田里穂)への絶賛の嵐に対し、ライバル役を演じた神宮寺蓮への評価は、非常に厳しいものとなっていたのだ。


『神宮寺蓮くん、顔は綺麗だけど演技が固くて浮いてる』

『小田里穂ちゃんの生の演技と比べると、どうしても「作りもの」に見えちゃうね』


ネットの掲示板やテレビの批評欄には、残酷なまでの比較記事が並んでいた。


さらに、彼らが仕掛けようとした「小田里穂の親の使い込みスキャンダル」が、サンライズ側の完璧なPRにより「心温まる母娘の金融教育美談」として大々的に報道されたことで、ガセネタを売ろうとした所属劇団『プレアデス』の信用は失墜。


スポンサーからのオファーは激減し、神宮寺蓮の仕事は激減していった。


二、 楽屋での再会:勝者と敗者

某民放局の大型特番の楽屋廊下。


豪華な衣装を着て、多数のスタッフを引き連れて歩く私の前に、ぽつんと一人で立っている少年がいた。


神宮寺蓮だった。


かつてのセットされた綺麗な髪は少し乱れ、あんなに高慢だった瞳には、濃いクマと疲弊の色が滲んでいた。


「……小田里穂」


かれすれた声で、私の名前を呼ぶ蓮くん。


付き添いの松井マネージャーが「里穂ちゃん、行きましょう」と私を庇うように前に出たが、私は「大丈夫です、松井さん」と制し、蓮くんの前に立った。


「神宮寺くん、久しぶりだね」


「……君は、満足か?」


蓮くんが、握りしめた拳を震わせながら私を睨みつけてきた。


「僕からすべてを奪って……大河の主役も、CMも、世間の評価も……全部奪って、高笑いしてるんだろう!?」


その言葉を聞いて、私はふっと溜め息をついた。


(高笑いはしてるけど……君から奪ったんじゃないわよ。君が勝手に自滅しただけじゃない)


私は、あえて前世の「社畜としての冷徹な目」で、まっすぐに彼を見つめ返した。


「神宮寺くん。私は君から何も奪ってないよ」


「嘘をつくな!!」


「嘘じゃないよ。君が負けたのは、私にじゃない。……君を縛りつけていた『大人の都合』と『君自身のプライド』に負けたんだよ」


「……なっ……!?」


蓮くんが息を呑んだ。


「君の演技は綺麗だった。でも、そこには『君自身の心』がなかった。お母さんや劇団の指示通りに動く綺麗なお人形だった。……そんなので、泥をすすって生きてる人間の心なんて動かせるわけないじゃない」


私は静かに、でもハッキリと言い放った。


「私を蹴落とそうとして、裏で汚いスキャンダルを流そうとしたことも知ってる。でもね、そんなことに時間を使ってる間に……私はもっと前へ進んでたの。お金の勉強も、演技の勉強も、現場での挨拶も……全部、本気でやってたから」


「……っ……ぐぅっ……!」


蓮くんの目から、ボロボロと大きな涙がこぼれ落ちた。

悔しさと、自分の小ささを突きつけられた屈辱の涙だった。


「二度と、私の邪魔をしないで。……次に私の前に立つ時は、ちゃんとした『演技』でいらっしゃい」


私は背を向け、豪華な衣装の裾をひるがえして歩き出した。


(ふぅ……決まったわね! 前世の社畜時代に、裏でコソコソ足を引っ張ってきたクソ同僚を正論で黙らせた時と同じ爽快感!!)


『お見事な論破(論破)です、里穂。ライバル・神宮寺蓮の脅威レベルは完全なゼロ(戦意喪失)となりました。これで貴方の芸能界における足枷は完全に消滅しましたね』


脳内でお姑さんが、満足そうにパチパチと拍手を送ってきた。


第4章:さらなる高みへ! 5歳児の大富豪ロード

一、 不労所得の第一歩と、新たな夢

1年後。


平成1X年、春。私は6歳になり、幼稚園を卒園しようとしていた。


私名義(お母さん管理)の資産は、子役ギャラ、L社株の売却益、投資信託の運用益、そして購入した豊洲のタワーマンションのプレセール権利などを合わせ、すでに【総額1億円】の大台を突破していた。


「1億……1億円よ正志さん!! 6歳の我が子が億万長者になっちゃったわよ!!」


リビングで通帳と証券口座の画面を見て、お母さんが踊っている。お父さんは「俺の生涯賃金を6歳で超えられた……」と白目をむいて倒れている。


(ふふふ……ハハハハハ!! ついに……ついにやってやったわ!! 資産1億円突破!!)


私の部屋の学習机。

その引き出しの『大富豪計画ノート』には、新しいページが書き加えられていた。


Plaintext

【目標達成状況】

・第1段階:子役として種銭を稼ぐ ➔ 【達成!(年間ギャラ4500万)】

・第2段階:株・不動産への初期投資 ➔ 【達成!(1億円突破)】

・第3段階:湾岸マンションの家賃収入による不労所得化 ➔ 【進行中】

・最終目標:20歳で電撃引退し、ハワイで右手に扇子(金の扇子)を持って高笑い!

「お姑さん!」


『はい、なんでしょう、里穂?』


「私、絶対に不労所得で大富豪になって、一生遊んで暮らしてやるんだから!!」


『甘えてはいけません。1億円など、真の大富豪から見れば通過点に過ぎません。次は海外市場への投資、および10代での【自社芸能プロダクション&投資会社の設立】を目指しますよ。本日のトレーニング:英語の日常会話と、国際金融の基礎用語の暗唱です』


「えぇぇぇぇぇッ!? 英語と国際金融ぇぇぇ!? 6歳児にハードル高すぎない!?」


『大富豪になるのでしょう? さあ、発音練習から始めますよ。「Global Asset Allocation……」はい!』


「ぐぬぬぬぬ……! Global Asset Allocation~~~っ!!(涙)」


二、 2度目の人生、最高のスタート

春の温かな日差しが、私の部屋の窓から差し込んでいた。


鏡に向かい、私は自分の顔を見つめる。

バグで手に入れたちょっと良い顔面。

前世の社畜経験で培った鋼のメンタルと知識。

脳内に居座る、最悪で最高なスパルタ小姑AI。


望んだ「小金持ちの家でぬくぬく育つ人生」とは、全然違う方向へ転がってしまったけれど。


(でも……悪くないじゃない!!)


自分の力で稼ぎ、自分の知識で資産を増やし、大人たちを圧倒しながら未来を切り開いていくこの人生。


社畜として死んだ私が、二度目の人生で手に入れた最高の『大逆転劇』。


「待ってなさいよ、世界の投資市場!! 待ってなさいよ、ハワイの別荘!! 私が全部、買い叩いて高笑いしてやるんだから――!!」


「里穂ちゃん! ごはんよー! 今日は里穂ちゃんの好きなハンバーグよー!」


「はーい! お母さん、今行くー!」


私は「1億円稼ぐ天才子役」の顔から、一瞬で「お母さんのハンバーグが大好きな6歳児」の笑顔へと切り替えると、元気よくリビングへと駆け出していくのだった!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。