番外編②女子会とは不可侵領域〈破〉
「大山田先輩、私のこと本気じゃないんです」
情報の後輩女子・野々原からご飯に誘われたマツリは、座るなり相談が始まって頭がフリーズする。
「え…と、付き合ってるの…?」
「ご飯に誘うんですけど、いつも上の空というか、私からばっかりで…」
上の空…。きっとアレコレ考え過ぎてそう。というか、そんなことが起きてたのか情報部!
「脈があるか、分からないということ?」
頷く野々原。
「分からな過ぎて、堅物メガネの小川主任を落とした城野先輩に、何かアドバイスを頂けたら、と…」
「…堅物メガネ?」
「はい、小川主任に営業部女子が付けたあだ名です。主任って、割とイケメン系で愛想もそこそこあるでしょう?でもキレイめ女子がどれだけアプローチしても全然なびかないって有名で」
「そう、なんだ」
まさか入社式から一途に想う人がいたから、とは言えない。あのメガネ、伊達なんだけど…すごいあだ名だ…。
「どういうシチュで告白したんですか?そもそも先輩から?主任から?」
野々原からは好奇心より必死さが伝わってくる。
「大山田先輩のこと、ほんとに好きなんだねぇ…」
「はい…。後輩の才能を認めて昇進を譲って、全然ひがまないでアシストに徹して、でも必要ならイニシアチブ取って…。大山田先輩は、男の中の男なんです!」
「うんうん」
照れて語る野々原は可愛い。ほっこりしてしまうが、そうではない。求められている答えをマツリは探した。
「えーと、向かい合う席じゃなくて、カウンター席っていうの?並ぶ感じの席で話したの」
「カウンター席ですか」
「向かいは窓ね。人なんかいたら、気になるでしょ?お互いの顔を見ない方が本音を話しやすいかな、って思って」
「そのお店、教えてください。お願いします!」
「もちろんよ!」
普段はメガネ姿しか見かけない野々原は、メガネを取ると目元が涼しげで、なかなか可愛い。
ここで終われば、あとは和やかな恋バナ会になる。が、城野は野々原の隣に、そっと視線を送る。
隣に座るのは、情報部のもう一人の女子社員・谷村だ。入社2年目。
「それで谷村さんは…あ、泣かないで、どうしたの?」
「城野先輩、野々原先輩〜〜河野先輩とワンナイトしたの、私なんです〜〜」
「「ええええええ!?」」
叫ぶ二人。個室で良かったこと、この上無い。
「…え?ハロウィンの夜に河野先輩を持ち帰りした玄人美女って、谷村さんなの…?」
「はい…コスプレした私なんです」
野々原がメガネをずり上げる動作をして空回りながら言う。
「確かどエロい魔女のお姉さん、って聞いたけど」
黙って谷村がスマホを見せる。
「え…かわよ…!つかエロ!?」
「谷村、あんたこんなすごいの隠し持ってたの!?」
「で、河野くんとは…?まさか無理矢理されたのじゃないよね!?」
マツリと河野は同期だ。接点があまりなく、仲が良いとは言えないが。
「違います。私から…です。その…私、糸目キャラ専で!!河野先輩って、すっごいクリティカルヒットなんです!!」
「あ、やべ。スイッチ入った」
野々原のつぶやき通り、河野の推しポイントを谷村は語り出す。
マツリは相槌を打ちながら既視感に見舞われる。そうか、告白…してくれた時のマチハルくんだ。そういえば引越し、明後日だった。荷造りできたのかなぁ。
「谷村、分かったから。で、どうしたの」
野々原の声で我に帰る。谷村は再び萎れた。
「河野先輩、探さない、って言ってました。今さら私です、って名乗り上げにくくて…しかも玄人ぶってたし…」
「谷村は、どうなりたいの?」
おっと野々原さん、ズバズバ行く…。とは言えマツリも完全同意である。
「あの糸目は私だけの人です!」
「「…言えよ、それ!本人に!」」
思わず野々原とシンクロしてしまった。二人でニヤリと笑い合う。
「じゃあさ、ここは古典的に、もう一度同じコスで会いに行く、のは?」
「城野先輩、私もそう思います」
「あのバーに通うんですか?魔女コスで?」
野々原と顔を見合わせる。それは確かに効率が悪すぎる。だが…。
「なに言ってるの。我が情報部には、我が部にしかない特別業務があるでしょ」
「そうそう。いつだっけ?週末の夜だけ夜勤でメンテナンス、するんでしょ?」
「でもあれは二人組で…」
「城野先輩、小川主任を総務部で預かって頂けませんか?」
マツリは思わず吹き出す。
「ええ、喜んで預かります」
みんな理性を保てますように、とは言えなかった。が、やはりここは二代目総務の鬼として私たちから…!と、小川泣かせなことを決意するマツリであった。
次回、俺たちの大山田先輩・番外編ラスト!アドバイスを受けた野々原は早速、実行に移す。
朝7:00更新




