38・交際警察 藤森順之介
『城野くん!秘書がゲロった!クロだ!今どこかね?今すぐ戻って来なさい!』
「集合時間まで、まだ15分ありますね…」
小川主任がボソリとつぶやいた。
藤森部長が過保護なお父さんみたいになってる。ジンの仲間かもしれない。
「分かりました。早めに戻ります」
『なるはやで!!』
トゲトゲしくならないよう、頑張ったけれど、電話終了後の舌打ちは止められなかった。
気分はサボテンなまま、手早く片付ける。この半年の社畜生活のおかげで早食いが身に付き、昼食はすでに完食していた。
小川主任と二人、言葉少なめに公園を後にした。
あと少しだったのに。あと少しで…。
小川主任の本心を聞いて、そして…そして?どうするの?
初めて、その先があることに気がついた。
公園から会社までは徒歩5分のところを3分くらいで帰った気がする。
「戻りました」
総務部に二人で入ると、秘書室の室長が項垂れて取調べ席に座っていた。白田室長は、最年少で室長に抜擢された小柄で可愛い系のお兄さんだから、そうしてると余計に小さく見える。
目で藤森部長に説明を求めたら、
「ちゃんと帰ってきたな」
「部長…当たり前です」
ニコニコ顔の藤森部長にいろいろな意味でムッとして答える。
「順ちゃん、ヤボだねぇ」
天堂社長が苦笑いしてるけど、それにも八つ当たりしたくなる。
「それで、白田室長はどうなさったのですか」
小川主任が斜め後ろで穏やかに問う。この…冷静メガネ…!そんな近くでしゃべらないで!
天堂社長と藤森部長は、サッと目を逸らした。え…?
「まさか誤認逮捕ですか?」
「いや違う」
藤森部長が即否定する。だけど言葉は続かず、口元を隠し、目は泳いでいる。
「望月君が聞き出してくれた」
天堂社長が代わりに答えた。けど、明後日の方を向いて…なんか顔、赤くない?
「すごかった…」
なにが?
望月副社長を見れば、悪い笑顔だった。ワイルドなイケメン、ってこんな人を言うんだろうな。
「白田君、手荒にして悪かったね。だけど、君のためでもある。分かるよね?」
ポンと白田室長の肩に手を置く副社長。室長は可哀想なくらいビクっとして、必死に頷いていた。
「もぅ、悪い方へ行ってはいけないよ…?」
望月副社長が優しいけれど重い圧を掛けてささやく。頷き続ける室長はもはや、涙目だ。
こ、これがイケオジの色気…。
天堂社長がおもむろにスマホを見せてくる。動画?音量は下げてあるけど、資料室っぽいところで…
隣で覗き込んだ小川主任が「ヒッ」と息を呑んだ。
長身の望月副社長が小動物系の白田室長を…壁ドンからの顎クイで…
「この動画、ください!!」
でないと尊美先輩に言いつけますよ。
白田室長から聞き出した結果、我が社の弁護士はシロと判明。
望月副社長は白田室長を連れて弁護士へ相談に。たぶん、見張りも兼ねてそう。
天堂社長と藤森部長の幼馴染コンビは小川主任を引き連れて情報部へ。イントラネットを司る小川主任のパソコンからいろいろするためだ。何となく着いていく。
なお、テシジョーの主要パスワードは白田室長から入手済み。
情報部へ雪崩れ込んだ天堂社長が叫ぶ。
「諸君!今から見聞きすることは他言無用だ!」
何だか芝居がかっているような…。
中では情報の二人がキビキビとCD−ROMをパッキングしているところだった。
「これは天堂社長。事件ですかな?」
「ああ。今から個人のデータをこじ開けに行く」
「承知しました。我ら小川主任の忠実な手足。如何なる事件にも力になって見せましょう」
…大山田さんの応答はもっと芝居がかってた。小川主任て、年上の部下にも慕われ?ているんだ…。
チラリと小川主任を見ると、砂を噛んだような顔をしていた。あ、裏取引した結果なのかも。どんな内容なんだろう。ものすごく気になる。
「城野くんは総務へ戻りなさい」
藤森部長が私を追い払おうとする。小川主任から遠ざけようとしてるとか…?
「順ちゃん…」
天堂社長が半眼でたしなめた。小川主任はキーボードを叩きながら苦笑いしてるようだった。
ここで見ていたいけど、総務で仕事があるのも確かだ。
「分かりました。コーヒー淹れてきます」
天堂社長がニヤニヤしてる。そんなに名残惜しそうに見えたかな…?
次回、とうとうようやく火がつく小川。情報部の秘密兵器もフル稼働で目指せマツリとの晩ご飯
6/29 7:00更新




