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楓と若葉と  作者: 高槻
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「・・・もしもし」


 楓の隣に座ると手を伸ばしてきたから、その手をぎゅっと握りしめた。


「・・・うん、・・・・・・ん」


 暫しの沈黙。それを破ったのは、楓の涙だった。

 ぼろぼろと零れる涙を、楓は拭うこともなく、ただ小さな声で(うなず)いていた。

 その様子から、この親子が和解したことが分かる。

 ・・・良かった。


「・・・ありが、とう。ごめんね・・・っ」


 横から抱きしめて頭を撫でると、次第に楓の嗚咽が小さくなっていく。


「・・・うん。・・・みつこ、」


「ん?なに?」


「お父さんが話したいって」


 楓は私にケータイを渡すと、顔洗ってくる、と部屋から出て行った。


「もしもし、三津子です」


『三津子ちゃん、今日は有難う』


「お礼なんて言わないでください。大した事なんてしていないんですから」


『いや、そんな事は無いんだ。三津子ちゃんが居なかったら、きっと私達親子はバラバラになっていただろう』


 そこで、一息吐く空気の流れが伝わった。


『これからも、楓の事でたくさん迷惑を掛けると思う。勝手なお願いだと思うが、是非楓に手を貸して欲しいんだ』


「それは勿論、構いません。最初からその積りですし」


『ただな、三津子ちゃんのお金だけは、楓の為に使わないでくれ』


「えっ」


『三津子ちゃんのお金は三津子ちゃんのお金だ。いずれ使うべき時に使えるように。いいね?約束してくれ』


「・・・は、い」


『それじゃあ』


「はい、失礼します」


 電話を切る。

 話の内容を反芻してみる。

 ・・・使うべき時。


「お父さん、なんだってー?」


 タオルで顔を拭きながら、楓が洗面所から出てきた。


「うーん?楓を宜しくってさー」


 ふざけて言えば、楓は真面目な顔をして、私の前に正座した。


「三津子、・・・まだ私と一緒に暮らしてくれますか」


 真剣な空気に、私も姿勢を正した。


「初めての妊娠だし、出産も不安だし、子育てだって、すっごい不安なの。

 

 だから、我儘だってわかってるけど・・・楓に傍に居て欲しい。」


 真剣な目でそう言われて。

 そんなこと。私だって。


「楓が嫌がるまで、一緒に居てやるんだから。覚悟しなさいよ?」


 二人で微笑んで。


 

 使うべきは、やっぱり、楓の為です。



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