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私と手錠とM町  作者: 柚子
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2/4

2

2.


田舎はいい。

人が穏やかで、空気がよくて、食べ物が美味しくて。


今は、これは、ジブリの中での話だと思う。



私が、採用された仕事は少し、特殊かもしれない。

空店舗を利用した田舎町のカフェの立て直し。

面接ではそう聴いていた。


過疎化が、進む典型的な田舎町。

人は少ない上に、働く場所もない。


地域活性のためという、よくある理由の事業だ。


面接に行く前に、私は現在のカフェの様子を見に行った。

ガラス戸の小さなカフェは、店内に入ると、中は木材を使った可愛らしい作りだった。

スタッフは5人と多かった。


しかし、平日の3時、客は私しかいない。

オープンキッチンには、四人の女性。


もう一人は男性で、カウンター席でなにか事務をしているようだった。


お店には、空気がある。


一歩入った時から、私はこのカフェの不穏さを感じた。

うまくいっていない店は、空気が悪い。


音楽も流れていない店内には、店員のおば様達の話し声。田舎だなぁと思った。

暇だと、人は、だめになる。


窓際のテーブル席に座り、私は観察した。

席数はざっと、25席。規模としては悪くない。

スタッフも、素人だとしてもやり方さえ工夫すれば、回せるだろう。


一応、コーヒーと柚子入りアップルパイを頼んだ。

注文をとりにきた子は若く、しかし笑顔はなかった。


運ばれてきたアップルパイは、生焼けでパイがふやふやで、リンゴは嫌がらせのように甘く、柚子はリンゴとケンカをしていた。

あー、不味い。これで315円ね。

私はこのとき確信した。ここには料理ができるスタッフはいない。


コーヒーを半分飲んで、お手洗いに立つ。始めてきた店では、なるべくよるようにしている。

ここがきれいかで大抵掃除の程度がわかる。


意地が悪いと思いながら、手洗い場の棚を全て開ける。

乱雑に謎の瓶や袋。まぁ、こんなもんだろ。




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