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オカマバ-「アコーリス」の事件簿(1)おかえり、カイラ  作者: 蘭鍾馗


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2/3

02.からの、事件

「じゃあ、挨拶して来るよ、カイラ。」



 ◇



 余興が終わり、村長が壇上に上がる。


「皆さん、お疲れ様です。」

 村長のペタル(日本名 石橋平太郎)が挨拶をする。


「我々有翼人がこの新宿で暮らし始めてから、早いもので3年にほどなります。到着が早かった人はそれより前から、遅かった人でも半年前には到着して、これで全ての村の人達が揃いました。ここでの生活のための準備を手助けしてくれたラドミラ、そしてカイラ、本当にありがとう。また、トイレがクロアチアからの転移先になってしまった「アコーリス」のマスターにも、いろいろとご迷惑をおかけしました。それから、新宿署の生活課の高木さんには、非番のところを無理を言って来て頂きました。ありがとうございます。我々有翼人はそもそも………」


 村長の挨拶はここから先が長いので省略させてもらうが、新宿署の警官が来ている理由については、ちょっと説明が必要だろう。



 ◇



 クロアチア王の悪魔討伐を逃れ、何故かオカマバー「アコーリス」のトイレに転移してきた有翼人達は、出て来るたびにマスターがラドミラとカイラに知らせ、この二人が住む場所や仕事を探して斡旋していた。そうしているうちに、やがて新宿にはクロアチアの有翼人のコミュニティが出来上がっていった。


 もともと腕っ節の強い彼らは、やがて周囲の店等から請われて、二丁目界隈で自警団的な役割を引き受けるようになった。すると、暴対法で衰退するヤクザに代わって台頭して来た「半グレ」と呼ばれる連中と利害が対立するようになってきた。

 これを見ていた警察が、治安維持の協力者として彼らを見るようになり、以来、彼等と協力して半グレを抑え込むようになって来たのだ。


 ちなみに、彼らが背中に黒い翼を持つことは、割と早い段階で住民と警察にはばれてしまった。だが、ラドミラに憑いていた(?)神様の協力で彼らは全員正規の戸籍を取得しているから、警察としては彼らをこれ以上不審者扱いする理由は取り敢えずないのである。

 ただし、この事実を知っているのは新宿署まで。警視庁の上層部は彼らの存在を知らない。まあ、現場を知らない偉い人にこんな話をしても、公務員としての信用を失うだけだと言う、これは新宿署長の判断である。


 そんな訳で、彼ら有翼人の集会やイベントには、新宿署の非番の警察官を一人招待するという慣例が出来たのである。



 ◇



「気をつけて下さいね。」

 

 村長挨拶のあとの立食パーティーで、新宿署の高木巡査部長が近づいて来て、村長に話しかける。


「ここ3ヶ月くらい、二丁目界隈で発砲事件が続いてるんですよ。暴力団事務所とか、町会の会長宅とか、最近台頭して来た半グレの連中と利害が対立する団体や個人が狙われてます。黒松の会も狙われているという情報があります。今日の帰りも、なるべく一人にならないようにして下さい。」

「わかりました。有難うございます。」


「ところで、前から聞いてみたかったんですが、この会の名前は、何故『黒松の会』なんですか?」

「ああ、会の名前ね。まず、黒松の『黒』はクロアチアから。まあ駄洒落ですよ。」

「ええ?そうだったんですか。」

「で、『松』はね、ほら、松の種って、羽根がついてるでしょ?」

「そうか、なるほど。」


 ◇


 会合が終わって、皆、帰宅しはじめる。

 ラドミラとカイラは、会場の後片付けを手伝う。


「じゃあラドミラ、カイラ、悪いが私は先に帰るよ。」

「お疲れ様。」

「またね。」


 それが、村長の姿を見た最後だった。

 不幸にも、高木巡査部長の心配は的中してしまう。



 その夜遅く、事件は起きてしまった。



 

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