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オカマバ-「アコーリス」の事件簿(1)おかえり、カイラ  作者: 蘭鍾馗


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13/15

13.カイラの900年(1)

 はむ。

 カイラ、きんつばを一口。



 カイラの目の前には、きんつばと草餅、それから栗饅頭が山積みになっている。もちろん全部カイラの好物よ。


 今日は、そうねえ、なんて言うんだろ。カイラの帰還祝いと報告会、ついでにネロ討伐成功祝賀会みたいな、そんな感じの集まり。

 カイラが帰還した日に、取り敢えずなにがどうなったのか本人の口から説明はあったんだけど、話が錯綜していて正直何が何だかよく分からなかった。だから、改めて皆の前で話してもらうことにしたの。


 場所はもちろん、オカマバー「アコーリス」よ。

 マスターに相談したら即OKだった。店の常連さんと黒松の会のみんな、あと新宿署の高木さんも来てくれたわ。みんなありがとう。


 鍵カッコがめんどくさいから、ここからはカイラの独白スタイルでどうぞ。



 ◇



 トイレで見つけたの。



 何をって?アンテ様のメモ書き。アコーリスのトイレから900年前のクロアチアの、有翼人の村に転移する方法が書いてあったわ。悪魔討伐が始まった村は危険だから、帰ってほしくはないけど、でもどうしても帰らなきゃならなくなった時のために、アンテ様が、メモを残してくれてたのね。


 あ、そうだアンテ様のこと説明しなきゃね。マスターと黒松の会のみんなは知ってるけど、それ以外の人は知らないわよね。


 アンテ様は900年前のクロアチア軍の軍人だったんだけど、私達有翼人を悪魔だと決めつけて村ごと潰そうとする王の考えに疑問を持って、事前にこっそり村に教えに来てくれたの。それを聞いて村長は、村を捨てて、全員で村はずれにある井戸から転移して逃げることに決めた。この井戸からの転移の方法は、村長だけが知ってたの。


 そしてアンテ様は、村長に井戸から転移する方法を教わって、転移先が安全かどうか確認するために一度転移してきたの。そこで偶然転移してきた私と、あとたまたま店に来ていたリオちゃんに会ったのね。で、アンテ様は転移先が安全だって村長に報告するために、またクロアチアに帰って行ったわ。


 アンテ様については、悲しい話もあるんだけど、今日は割愛するわね。



 ◇



 でね。


 転移には村の井戸の井戸水が必要なんだけど、それは私が偶然転移してきた時にもってきてた桶の井戸水を、マスターが冷凍してとっておいてくれてた。アンテ様がマスターにお願いしたみたい。


 で、最初は私も帰るつもりなんか無かったんだけど、ふと思いついちゃったの。これ使えばネロを900年前のクロアチアに置き去りに出来るって。


 ちなみに本物のネロはあの変なスーツのやつじゃないの。あれは影武者。本物はアコーリスの常連客のなかに紛れてたの。リオちゃんが村長にあげたお手製の悪魔のキーホルダーがきっかけでそれがわかったわ。


 それで計画立てて、あいつを「アコーリス」のトイレに誘った。その前に念のため、会話しながら本人確認はしたわよ。あいつは村長を撃った犯人でないと知らないはずのことを知ってた。


 あ、あいつがトイレで何する気だったかはわかるわよね。私の口からは言わないわよ。


 そして、あいつを道連れにして900年前のクロアチアに転移した。あいつが状況把握出来ずにぼーっとしてる隙に後ろから羽交締めにして、飛んでアドリア海上空まで運んで、そこから落としてやったわ。かなり高かったから即死だったと思う。


 で、終わったから帰らなきゃいけないんだけど、実は井戸からの転移は、ひとり二度までしか出来ないの。行って帰るだけね。私は一度偶然転移してここへ来たから、転移出来るのはあと一回だった。だから、帰りは自分の足で歩いて帰らなきゃいけなかったの。それも900年かけて。


 しんどかったわー。



 ◇



 うん、長い。長いわカイラ。

 クロアチアに転移してネロを片付けたところまでで、取り敢えず一区切りしましょうか。お茶飲んで草餅でも食べて。



 次はいよいよカイラの帰り道の話ね。


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