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オカマバ-「アコーリス」の事件簿(1)おかえり、カイラ  作者: 蘭鍾馗


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12/15

12.おかえり、カイラ

 カイラちゃんがトイレの扉を閉めてから、10分ほど経った。



 ◇



 その間、オカマバー「アコーリス」の店内は静まり返っていた。


 カイラちゃんはわざと扉の鍵をかけなかった。

 僅かに開いた扉からは、中の様子が窺える。中には誰もいない。


 と言うことは、あいつを連れての転移に成功したのね。あとは、カイラちゃんがここから帰ってくれば作戦終了よ。

 


 ◇



 その時、店の入口のドアが開いて誰かが入って来た。



「ただいま。」



 その誰かは、入ってくるなり小さな声でそう言ったの。

 よく見たら、その「誰か」はカイラちゃんだった。


「おかえり。お疲れ様でした。とりあえず座って座って!」

「うん……。」


 良かった、上手くやったのね。これであいつは新宿からいなくなった!

 でも、なんか様子がおかしい。どうしたのかしら。

 ていうか、なんでトイレから出て来るんじゃなくて、店の入口から入って来たの?

 あと、トイレに入った時となぜか服装が違う。どういうこと?


「………あいつになんかされたの?」


「あっ……いやそうじゃないの。あいつは空からアドリア海に落としてやったから、海面でバラバラになって、とうの昔に魚の餌になったはずよ。簡単だったわ。」

「そう……(怖)。」

「ただね………ちょっと疲れたの。」

「そっかお疲れ様。何か作るわよ、何がいい?」

「甘いのがいいな……。」


 とりあえず、カルーアミルクを作ってあげよう。

 カイラの大好きなきんつばも付けてあげる。



 ◇



 その時、店の入口のドアが開いて、また誰かが入って来た。


 見覚えのあるキャップを目深に被って、ラフな格好で入って来たその客は、ダンタリオンちゃんだった。そう、例の新宿署が貸してくれた防弾インナーが入ったキャップね。


「今晩は。」


「ダンタリオンちゃん、退院したんだ。」

「うん、今日ようやくね。あ、カイラも来てたんだ。」


 ダンタリオンちゃん、カイラに向かってにっこり笑いながら小さく手を振ったんだけど、直後に真顔に戻っちゃった。彼女も様子がおかしいのに気付いたみたい。


「カイラ?」


 ダンタリオンちゃんを見つめるカイラ。その大きく見開いたカイラの目から、見たこともないような大粒の涙が零れ始めた。


「姫様……。」


 カイラちゃんは、ダンタリオンちゃんのことを昔の呼び方でそう呼んだ。そして、ダンタリオンちゃんに駆け寄ると、抱きついて号泣しはじめた。


「姫様ーーー!」


 ダンタリオンちゃん、驚いたけど、すぐに優しい顔に戻って、カイラちゃんを抱きしめた。


「……また姫様呼びに戻ってるわよ。」

「今日だけ姫様って呼ばせてーーーー!」

「どうしたのよ?」


「ずっと歩いてきたの、ずっと。ずっとよ! 寂しかったーーーー!!」


 ダンタリオンちゃん、何かに気づいたみたい。

「そうか………そうだったのね。私達のこと忘れなかったんだ。」


 そして、ひとことこう言ったの。



「おかえり、カイラ。」



 …………………………………………



「ごめんなさい、びっくりしたわよね。」


 きんつばを食べてようやく落ち着いたカイラちゃん、事の次第を皆に説明しはじめた。

「実はね、あれから900年経ってるの。」




 ……いや待って10分でしょ?


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