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華出井 葵(12)と願いの井戸 74

 ご隠居こと、華出井ミヨ。葵のひい祖母にあたる。

 足にけがをしている為に、今日は車椅子だ。

 彼女は、本家にある井戸の事を知らないまま嫁入りし、今も知らないまま。らしい。

 葵の言った事を疑っていないし、実際、霧子はけん制してきた。

 ミヨの夫であり先々代当主の遺言により、知らせようとすると、こちらが危ういと。

 観察することで生き延びようとしてきた京護にとって、見た目も中身も、無害で良い人にしか見えない。

 今も、京護と目があって笑ってくれた。

「キョウちゃん」

 小さく胸元で手を振ってくれるので、近づこうとして最後の一歩を躊躇った。

 足元に隠れたままの影は、意外にも姿を表さない。

 どうしてこちらが危うくなるのか、まだ分かっていないからだろうと、京護は推測している。

 仕掛けろと言われた。

 勝手すぎる影ことかつての父親に、心の内で頬を膨らます。

「キョウちゃん、大丈夫?」

「あ、はいっ? え、ごめん、大丈夫っ……です……」

 1人で慌てる京護に、ミヨが目を丸くする。

 突発的な声かけに弱すぎやしないか。

 自分に呆れて顔を赤らめながら、再び影に悪態をついた。

「ふふ、大丈夫じゃないなら

 そうはならないわよね。良かった」

 そうだろうか。

 京護は、昨日目覚めたばかりと思っていた。

 実際は3日前に意識が戻り、10日前までは、ヒエラルキーの最下層にいた。

 それらが幻なわけがないのに、ミヨの雰囲気は、何か色の暗い部分を削ぎ落す。

 どこに危険があるのだろうか。

 本当に、本家の人なのか。

 ぼんやりミヨを見ていると、ミヨがまた笑んだ。今度は少し、悪戯心を含めて。

「でもね。です、は寂しいわ」

 うん、本家の人だ。

 こちらの口調に、やおらこだわる。

 悪い意味で、5年間観察してきた人たち。

 良い意味で、葵。

 葵に似ている、この部分だけで、本家の者という確信だけ律儀に確信する。

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