第22話「煌めく終幕と、新たな影」
陽が傾き、空が茜に染まる頃――。
共存フェスは、いよいよ終盤を迎えていた。
森の中に突如として現れた“異世界コンビニ”を起点に開かれたこの祭りは、異種族たちが笑い、食べ、語らう場となり、いつのまにか“異質”であるはずのコンビニの光景が、人々の間に自然に溶け込んでいた。
「うぉーい! 焼き串追加だー! こっちは団子が足りねぇ!」
「す、すみませんっ! 今持ってきますですーっ!」
走り回るピナの手には、タッパーと串が山ほど抱えられていた。
どんぐり屋台は子どもたちに大人気で、特に「どんぐりキャラメル」は完売寸前。
「ピナっ、足元気をつけろ!」
「きゃあっ! ……あっぶなかったー……。今のは……忍びのステップなのです!」
軽やかに(偶然)受け身を取り、無事タッパーを守ったピナを、近くにいたリュカは呆れ顔で見やる。
「……はぁ。馬鹿ピナ、お前ほんと……」
「んふふっ。照れちゃってー?」
「……照れてねぇ。あと会話にもなってねーよ」
くーたは屋台の裏で尻尾をゆらしながら、
時折近づく子どもにふわふわな頭を撫でられていた。
目を細めるその姿は、猛獣というより“大きなぬいぐるみ”そのもの。
「よかったね、くーた。こわがられないで……ふふっ」
要はというと、メインブースとなっているコンビニの中で接客対応をしていた。
おかげで、昼を過ぎてからも客足は止まらず、
特に珍しがられる飲料や冷たいスイーツは、常に棚が空になっては補充される状況だった。
「思った以上の大盛況……。バトさん達が設置してくれた簡易通路がなければ、今日の来場者数は捌けてなかったかもな……感謝感謝」
ぽつりとつぶやいた要のそばで、バトは腕を組みながらニカッと笑っていた。
「祭りってのはな、どこでも大事なモンよ。道を作って正解だったな!」
「最初は不安でしたけど、‥本当に道が出来て良かったと思ってます。ありがとうございます。
あと……レンガ棚、すごく使いやすかったです!
ピナが尻尾で叩いてもびくともしないですからね」
「おう、あれはな、“本焼き”にしたから、前より頑丈だぞ。どんどん使え!叩き過ぎはあんまり良くないけどな!」
ガハガハ笑うバトであった。
陽が完全に沈む頃。
祭りの最後を飾るための――**灯火の儀**が始まった。
コンビニ前の広場に集まった人々。
灯籠のような装置に火がともされ、それぞれの種族の子どもたちが火を受け取り、順に並べていく。
「……きれい……」
ピナのつぶやきに、誰もがうなずいた。
そのとき――。
木々の隙間にひとつの影が立っていた。
それは、灯火の明かりを避けるように、微かに――だが確かに、彼らを見つめていた。
くーたの耳がぴくりと動く。
「……くぅ……ぅっ!」
突然、くーたが唸った。
先程と同様異変を感じたように、くーたは唸り声を上げ、コンビニの裏手をじっと睨みつけている。
「……くーた?また、なにか見えたの?」
不思議そうに首をかしげるピナ。
しかし、彼女の目には何も見えない。
リュカも少し眉をひそめたが、すぐに人ごみに視線を戻した。
――ザッ。
その影は、誰にも気づかれることなく、すっと木々の奥へと姿を消す。
だが、ピナは――
ふと、胸の奥に残るような、ちくりとした違和感を感じていた。
(……今、なんか……いた?)
風が吹き、灯火が揺れる。
にぎやかな祭りの余韻の中に、
小さく、けれど確かに“異質な風”が混じった瞬間だった。




