第21話 《共存フェスの灯、ひとときの交差点》
昼の陽射しが少し傾きはじめた頃。
コンビニの前に広がる広場は、すでにたくさんの人々で賑わっていた。
村の戦士たちが披露する演武、亜人たちの楽器演奏、子どもたちのかけっこ大会。
その合間に並ぶ屋台では、リュカが焼いた串焼きや、ピナがどんぐり菓子(※食べられるやつ)を大はしゃぎで売っている。
「いらっしゃいなのですー! 今なら“3つで1ペク”! これって、やば安い! おいしい! つまり最強!」
「……それ、1ペクって言ったら原価割れだろ。あと“やば安い”って何だよ」
「だいじょうぶなのですー。たくさん売ればオッケー!」
「それを“赤字”って言うんだよ。ほんとにお前副店長なのか?」
屋台裏でリュカが頭を抱え、要が苦笑いしている。
だが、それもまた、祭りの一部だ。
「おいっ、ピナ! 試食品勝手に配るなって言ったでしょ!」
「あっ、いまのは……くーた用! くーた、食べるー?」
子どもたちに囲まれていたくーたは、ピナに捕まり試食品を、口に何か入れられそうになって顔を背けると、
「ふるっ」と身体を揺らして広場の端に移動してしまった。
「ありゃ……行っちゃったのです」
「くーた、あいつ……今日ずっと落ち着かねぇな」
リュカが、目を細めてその後ろ姿を見る。
ただ、すぐに村の人たちが声をかけてきて、彼は軽く応じながら再び串焼きの対応へ。
***
一方、要はステージ裏にいた。
即席の小さな木製ステージでは、村の子どもたちによる演劇が始まるところだった。
「店長さーん! あの、緞帳ってどっちから上げるんですか?」
「え、俺が上げるんですか!?」
「バトさん木材搬入中ですし!」
「わかった、任せて!」
半ば巻き込まれる形で、共存フェスの裏方までやる羽目になっていた。
でも、なぜか――
(……嫌じゃないな。むしろ楽しいかも)
村の人、異種族、旅人。
いろんな人が笑っていて、協力し合っていて。
コンビニの前のこの場所が、確かに“誰かの居場所”になり始めていると感じていた。
「よし……次は、くーたのどんぐり運搬レースだな……?」
「どんな競技!?」
***
そのころ、広場の外れ。
いつもより静かな草むらに、ふわりと風が吹いた。
くーたが、その場に座って耳をピクリと動かす。
そして――“じっ”と森の奥を見つめた。
「うぅ……ぅ」
唸るような、小さなうなり声。
毛を逆立て、低く低く身を構える。
「くーた?」
追いかけてきたピナが様子を見に来て、不思議そうに首をかしげる。
「どうしたのですー? だれかいる?」
くーたは、ピナの方を一瞬見ると、すぐまた草むらへ視線を戻した。
……だが、そこには“何も”いなかった。
「もー、びっくりするのですー。おやつあげるから、行こ?」
ピナがくーたの頭をぽふぽふ撫でると、くーたはしぶしぶピナの方に向きを変え、彼女の後ろに続いた。
その場に残ったのは、風に揺れる草の音だけ――。
***
そして夕方。
ステージでは最後の演目が始まろうとしていた。
誰もが笑顔で、拍手で、温かな空気が満ちるその会場に――
ほんのわずかに、ひとつの影が近づこうとしていた。
まだ、誰にも気づかれることなく。




